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自分たちが誇れるものを伝える大事さを教えてくれるSIGMAの企業PR動画

いしたにまさきブロガー/ライター/アドバイザー
シグマ会津工場

もうね、オウンドメディアブームです。いや、ブームなのか、まんじゅうこわいなのかわかりませんが、私のところに舞い込んでくるいろんなご相談もよくよく読み解いていくと、ああこれオウンドメディアの話だねということも少なくありません。

ただですね。Webメディアじゃないんですから、PV取れば成功なんていうものじゃありません。切ない話ですが、結局自社の売り上げに貢献しないオウンドメディアなんていらないわけです。切なくない方向で表現すると、売り上げに貢献していれば、PVなんて必要な分だけあればいいのです。

で、そんなことを考えるときに、いつも見るのが、SIGMAの一連の企業PR動画です。

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2012年からていねいに作られている動画をSIGMAという企業は、ほぼ2年に1本のペースで公開してきています。最新版は、2015年の4月末に公開されています。

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いずれの動画も5分に近い長さです、最新版は約7分半です。でも企業PR動画として、すごく特徴的なのが、ドキュメンタリータッチで作られているこれらの動画には、普通はあるいわゆる「煽り」がほぼ全くないんです。

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最新版は、レンズの修理の話をしているので、さすがに工場の方がしゃべりますが、それは事実を淡々と述べているだけです。その前の2本は、いずれもSIGMAの会津工場の紹介動画なのですが、セリフやナレーションどころかキャプションすらまったく入っていないのです。

その企業PR動画が以下の3本です。

【SIGMA AIZU Chapter III → 再生回数:約2万】

【Sigma Aizu, Chapter II → 再生回数:約12万】

【SIGMA Aizu, Japan → 再生回数:約29万】

再生回数を並記したのは、その数と積み上げに注目して欲しいからです。このカメラとかレンズが好きでもない限り見てもなんのことだかちっともわからない動画が、着実に再生され続けているんです。

また、大事なポイントは最初のPR動画公開されたのが、2012年であるということです。2011年は東日本大震災の年です。福島県の会津に工場を持つSIGMAも当然打撃を受けました。またSIGMAの企業規模を考えれば、あきらかに大きな金額の震災義援金も出しています

その震災から1年、それが2012年という年なんです。その年からSIGMAはこれらの企業PR動画を公開し続けています。自分たちの最大の宝である生産の拠点である会津工場からやり直そうという気持ちがなければ、こんな動画は世に出てこないはずです。

そして、ここがいちばん大事なところなんですが、東日本大震災の被害があったにもかかわらず、SIGMAはちゃんと業績を伸ばしています。

シグマは非上場企業ですが、上場企業と比較しても遜色のない業績を出しています。

出典:成長する堅実経営 | シグマについて | SIGMA 株式会社シグマ 2016 RECRUIT

オウンドメディア・企業PRは、ソーシャルメディアの中にお客さんがいる以上、当然やるべきことです。でも、そこで必要なのは、まずは自分たちの会社が世の中の人に誇れるものはこれであるということを真摯に伝えることです。それをSIGMAが数年かけて積み上げてきた3つの動画は教えてくれるのです。

ブロガー/ライター/アドバイザー

Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人。2002年メディア芸術祭特別賞、2007年第5回Webクリエーションアウォード・Web人ユニット賞受賞。「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(技術評論社)」「あたらしい書斎(インプレス)」など著書多数。2011年9月より内閣広報室・IT広報アドバイザーに就任。ひらくPCバッグ・かわるビジネスリュックなど、ネット発のカバンプロデュースも好調。 #カゲサポ

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