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高松市 全国初の「施設仕分け」実施

伊藤伸構想日本総括ディレクター/デジタル庁参与

高松市は、全国で初めてとなる「施設仕分け」(公開施設評価)を本日(11月24日)実施、構想日本が全面的に協力した。対象となったのは、保健センター、温浴施設、体育館、総合福祉会館の4つのカテゴリーに属する32施設。コーディネーターと論点出しを行うナビゲーター2名は構想日本が選定。その他に、無作為抽出で選ばれた高松市民が議論に加わり評価を行ったことはこの作業の大きな特徴だ。

この「施設仕分け」は、構想日本が実施している「事業仕分け」(2002年からの11年間で全国約100自治体で延べ約200回、本年も20ヶ所以上で実施)のノウハウを活用し、公共施設の最適化を行う取り組みだ。

高松市は2005,2006年に計6町を吸収合併したことにより、保健センターが7施設、体育館を保有する施設が16施設など、類似の機能を持つ公共施設が多数存在。この先数年間で、老朽化等により更新期を迎える施設が増える状況下において、公共施設全体のゼロベースでの見直しが急務となっている。

これは決して高松市の特殊事情ではなく、公共施設の最適化は日本全国で共通する課題と言える。

築30年以上の施設が全国の公共施設の約半数にのぼり、老朽化が進んでいることに加え、少子高齢化も進展。世代の分布が変われば必要な施設も変化していく。さらに、高松市のように市町村合併による類似施設の出現。そこに、この厳しい財政状況だ。新しい施設を作る余裕はなく、既存の施設の維持管理を行っていくことすら難しい。だからこそ、高松市のような取組みはどの自治体であっても避けて通れないと言える。

しかし、それを進めていく時にぶつかる壁が「総論賛成、各論反対」だ。公共施設の見直しに反対する人は少ないが、個別の施設の統廃合などの話になると、施設を頻繁に利用している人たちを中心として反対の声が出る。

そこで、「施設仕分け」だ。

「仕分け」と聞くと、バッサバッサと不要なものを切り捨てていくような印象を持つ人が多いと思うが、実際は違う。自らが負担している税金の使い道について、住民が「自分事」として考え、使い方を正すプロセスに参加する。これが「仕分け」の本当の意義であり、今回の「施設仕分け」も、この考えのもとで行われている。施設の最適化の方向性を示す段階から、無作為抽出で選ばれた多くの住民が参加し合意形成を図る、という仕組みだ。

参加した高松市民は、朝9時から夕方5時までほとんど休みなしの議論を行い、施設の今後の方向性について評価を行った(評価結果は文末に掲載)。これらの評価結果と、評価とともに書かれているコメントは、高松市が今後、公共施設の見直しを進めていく上で重要かつ貴重な材料となる。

施設を頻繁に利用する特定の人の声だけではなく、無作為で選ばれた一般の納税者としての声は、自治体が公共施設の最適化を進めていく上で必要不可欠なプロセスであり、かつ大きな後押しになるのではないか。今日の作業に、傍聴者が160人を超え、インターネット視聴者は約500人であったこと、他の自治体の関係者が非常に多かったことからも、高松の取組みが全国的なモデルケースになるであろう。

前例踏襲が当然と言われる行政において、前例のない試みにあえて挑戦した高松市に心から敬意を表するとともに、この最先端の取組みが多くの自治体に広がっていくことを期待したい。

【高松市公開施設評価(施設仕分け)評価結果】

<保健センター>

(1)施設の総量・配置

・見直しが必要 17人

(総量増加 1人)

(総量減少 13人)

(配置の見直し(統廃合を含む) 13人)

(その他 1人)

・現状維持 3人

(2)施設の有効活用

・見直しが必要 18人

(他用途への転用(一部転用を含む) 7人)

(民間の活用 7人)

(利活用の拡大 13人)

(その他 1人)

・現状維持 2人

(3)施設の管理

・見直しが必要 7人

(指定管理者制度・民間委託の導入 2人)

(受益者負担の適正化 4人)

(住民・地域による自主管理 1人)

(その他 1人)

・現状維持 13人

(4)施設の実施事業

・見直しが必要 17人

(廃止 1人)

(事業内容の見直し(縮小など) 11人)

(実施施設の見直し 10人)

(対象の見直し 7人)

(その他 2人)

・現状維持 3人

<温浴施設>

(1)施設の総量・配置

・見直しが必要 18人

(総量増加 0人)

(総量減少 13人)

(配置の見直し(統廃合を含む) 6人)

(その他 2人)

・現状維持 2人

(2)施設の有効活用

・見直しが必要 15人

(他用途への転用(一部転用を含む) 2人)

(民間の活用 8人)

(利活用の拡大 4人)

(その他 1人)

・現状維持 5人

(3)施設の管理

・見直しが必要 18人

(指定管理者制度・民間委託の導入 7人)

(受益者負担の適正化 13人)

(住民・地域による自主管理 4人)

(その他 1人)

・現状維持 2人

(4)施設の実施事業

・見直しが必要 18人

(廃止 8人)

(事業内容の見直し(縮小など) 9人)

(実施施設の見直し 6人)

(対象の見直し 2人)

(その他 2人)

・現状維持 2人

<スポーツ施設・体育館>

(1)施設の総量・配置

・見直しが必要 14人

(総量増加 1人)

(総量減少 8人)

(配置の見直し(統廃合を含む) 10人)

(その他 1人)

・現状維持 6人

(2)施設の有効活用

・見直しが必要 16人

(他用途への転用(一部転用を含む) 4人)

(民間の活用 6人)

(利活用の拡大 5人)

(その他 1人)

・現状維持 4人

(3)施設の管理

・見直しが必要 14人

(指定管理者制度・民間委託の導入 3人)

(受益者負担の適正化 6人)

(住民・地域による自主管理 6人)

(その他 2人)

・現状維持 6人

(4)施設の実施事業

・見直しが必要 15人

(廃止 1人)

(事業内容の見直し(縮小など) 7人)

(実施施設の見直し 8人)

(対象の見直し 4人)

(その他 1人)

・現状維持 5人

<総合福祉会館>

(1)施設の総量・配置

・見直しが必要 19人

(総量増加 1人)

(総量減少 10人)

(配置の見直し(統廃合を含む) 9人)

(その他 2人)

・現状維持 1人

(2)施設の有効活用

・見直しが必要 16人

(他用途への転用(一部転用を含む) 4人)

(民間の活用 4人)

(利活用の拡大 1人)

(その他 8人)

・現状維持 4人

(3)施設の管理

・見直しが必要 14人

(指定管理者制度・民間委託の導入 6人)

(受益者負担の適正化 4人)

(住民・地域による自主管理 4人)

(その他 2人)

・現状維持 6人

(4)施設の実施事業

・見直しが必要 14人

(廃止 7人)

(事業内容の見直し(縮小など) 4人)

(実施施設の見直し 5人)

(対象の見直し 0人)

(その他 2人)

・現状維持 6人

※「見直しが必要」以下の各項目は複数選択可能。

構想日本総括ディレクター/デジタル庁参与

1978年北海道生まれ。同志社大学法学部卒。国会議員秘書を経て、05年4月より構想日本政策スタッフ。08年7月より政策担当ディレクター。09年10月、内閣府行政刷新会議事務局参事官(任期付の常勤国家公務員)。行政刷新会議事務局のとりまとめや行政改革全般、事業仕分けのコーディネーター等を担当。13年2月、内閣府を退職し構想日本に帰任(総括ディレクター)。2020年10月から内閣府政策参与。2021年9月までは河野太郎大臣のサポート役として、ワクチン接種、規制改革、行政改革を担当。2022年10月からデジタル庁参与となり、再び河野太郎大臣のサポート役に就任。法政大学大学院非常勤講師兼務。

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