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長野オリンピック日本代表クリス・ユール <第1章>41歳にして現役復帰

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
長野オリンピック日本代表クリス・ユール(Rights of Jiro Kato)

リオデジャネイロ オリンピックは、今夜(現地時間)開会式が行われます。

ロシアのドーピング問題など、思わぬ騒動も見られましたが、オリンピックへの熱い想いを抱き続けたアスリートにとっては、待ちに待った大舞台の幕明けです。

ところで、大舞台への熱い想いを抱くアスリートたちの姿を目にするのは、リオ大会に限ったことではありません。これまで幾多のアスリートたちが、オリンピックへの熱い想いを抱き続けてきました。その中から、この人を紹介しましょう。

1998年「長野オリンピック」男子アイスホッケー日本代表FWのクリス・ユールです。

コクドのジャージに袖を通して日本リーグデビュー(Rights of Jiro Kato)
コクドのジャージに袖を通して日本リーグデビュー(Rights of Jiro Kato)

クリストファー・グラント・ユール

1975年3月29日 カナダ・エドモントン生まれ。

卓越した得点力を発揮して、ジュニアリーグでMVPに輝いた実績を引っ提げ、1994年に来日。

日本代表チームの強化を目的にやってきた日系外国人12名の中で最年少(19歳)ながら、いきなり日本リーグの開幕戦で4得点を決めるなどして優勝に貢献し、日本代表候補入り。「ニホンゴ ムズカシイ」と、こぼしつつも、1997年12月に日本国籍を取得。長野オリンピックや世界選手権でも、日本代表のポイントゲッターとして活躍した。

コクド(名称変更後はSEIBUプリンスラビッツ)と日本製紙クレインズの2チームに在籍し、日本リーグの2年連続MVPをはじめ、アジアリーグの歴代最多得点記録(当時)を更新するなど、19季にわたってプレーしたあと、2013年春に引退。

しかし今春、メルボルン アイス(オーストラリアリーグ)の一員として現役復帰を果たした。

アイスホッケー強国のカナダで生まれ、長野オリンピックをはじめ、日本のファンを沸かせた男が、赤道を越えて南半球でパックを追う。

2年間のブランクを経て、「40にして惑わず」もとい、「41歳にして現役復帰」を果たしたユールに、直接インタビューをして胸の内を聞いてみました。

Q)38歳の誕生日を目前にプレーオフで敗れたのを最後に、現役を引退しましたが、その後は、どのように過ごしてきたのですか?

「小さい頃からアイスホッケーが大好きで、ボクにとってアイスホッケーは一番大事なものだったから、引退したあと何をすればいいのか? なかなか答えを見つけられなかったんだ。

だから、妻の故郷のメルボルンに、母親が住み続けていたので、ひとまずオーストラリアへ移り住んで、妻の実家に居候しながら、新しい家と仕事探しを始めたんだよ」

Q)メルボルンに移り住んでから、再びアイスホッケーを始めたんですね?

「いや、メルボルンに住むようになってからは、ずっとアイスホッケーから離れていたんだ。でも2年ほど経った頃、日曜日の朝に、みんなで集まってスケートをしているグループがあったから、一度だけ参加させてもらったんだよ。それがキッカケになって、毎週参加するようになったんだ」

Q)2年ぶりにリンクへ戻ってみて、いかがでしたか?

「久しぶりにスケートを楽しみたいなと思って、ただそれだけのために始めたのに、だんだんアイスホッケーが恋しくなってきたんだよ・・・。

氷の上で競い合ってきたこと。勝つためにチームプレーを実践してきたこと。そして、仲間とともにチャンピオンになったこと。

久しぶりにスケートをしていくうちに、アイスホッケーへの想いが、また湧き上がってきたんだ」

Q)その想いが現役復帰につながったのですね?

「メルボルン アイスのコーチや選手が、ボクがスケートをしている姿を見て、我々のチームトライアウトを受けてみたらどうか? って、声を掛けてくれたんだよ。それがキッカケになって、日本でプレーした19年間の記憶が蘇ってきたんだ。

41歳になって、またアイスホッケー選手になったんだよ!

トライアウトをクリアしたユールは、2年間のブランクを経て現役復帰。

新たなステージに選んだオーストリアのアイスホッケーは、元オリンピック日本代表の目に、どのように映ったのか?

続きは <第2章>で、お楽しみください。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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