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アイスホッケーのワールドカップに参加する8チームの中に、一つだけ国歌を聞くことができないチームがある

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
NHLの試合前には必ず国歌が歌われる (Rights of Jiro Kato)

NHLが主催するアイスホッケーのワールドカップが間もなく開幕します。

12年ぶりに行われる3度目のワールドカップへの経緯は、既に紹介しましたが、、、

各チームはキャンプも行い、今夜(現地時間)から、プレマッチ(オープン戦)がスタート。

17日の開幕まで、あと10日を切って、世界中のアイスホッケーファンの期待が高まってきたところで、NHLはある発表を行いました。

▼NHLの、NHLによる、NHLのための「ワールドカップ」

1996年の第1回大会、2004年の第2回大会は「8ヶ国」による戦いでしたが、NHLは12年ぶりのワールドカップを開催するにあたって、参加チームを、下記のように変更しました。

【グループA】

カナダアメリカチェコ

チーム・ヨーロッパ(=欧州出身のオールスターチーム)

【グループB】

ロシアスウェーデンフィンランド

チーム・ノースアメリカ(=北米出身の23歳以下のオールスターチーム)

第1回、第2回大会に参加していた スロバキア と ドイツ を参加させず、チーム・ヨーロッパチーム・ノースアメリカという二つのオールスターチームを結成。

もっとも「オールスターチーム」と呼べば聞こえはいいですけれど、主催するNHLの本音は、「NHLでプレーする選手たち(だけ)にスポットライトを当てて、その後のレギュラーシーズンへの注目度と、グッズの売り上げにつなげたい!」というのは明らかなところ。

このような狙いを証明するかのように、現時点でエントリーされている8チームの選手「184人」(各チーム23人)の中で、NHLのチームに所属していないのは、「12人」だけ。(既に開幕しているヨーロッパのプロリーグがあることも、影響しているでしょうけれど)

しかも、この12人の中には、これまでNHLでプレーを続けきたものの、まだ契約がまとまらず「所属なし」になっている選手も含まれているため、リンカーンの言葉ではないですが、、、

NHLの、NHLによる、NHLのための「ワールドカップ」

と呼んでも、過言ではありません。

▼一つだけ国歌を聞くことができないチーム

ところが、NHLを悩ませていた問題がありました。それは「国歌」です。

NHLでは、試合前に必ず両チームのホームタウンの国歌が歌われますが、先ほどご覧いただいたように、オールスターチームが二つあるため、「国歌はどうするの?」という疑問の声が上がっていました。

聞かぬふりをしていたのか(!?)、このようなメディアの疑問に対し、NHLは明確な答えを出しませんでしたが、ようやく昨日になって正式な発表をしたと、[アメリカのテレビ局が伝えました。]

NHLの決定は、

チーム・ノースアメリカ → 「アメリカ、カナダ両国の国歌を歌う」

チーム・ヨーロッパ → 「国歌は歌わない」

先のリオデジャネイロ オリンピックで結成された難民選手団には、国歌に代わる歌としてオリンピック賛歌が使われましたが、NHLも「チームヨーロッパのオフィシャルソング」を作って、もうひと稼ぎする考えは、さすがになかったのでしょうか?

(NHLは代用曲を設けても上辺だけのものになってしまうためと、理由を説明しています)

チーム・ヨーロッパの選手たちだけが、国歌を聞くことができないなんて、「それはないだろう」と思いませんか !?

ただ、そうは言っても、、、

ドイツスロバキアデンマークフランススイススロベニアオーストリアノルウェーイタリア

の9ヶ国出身の選手が集まっているので、全ての国歌を流したら、ウォームアップをした選手たちの体が冷えてしまいますけれど(苦笑)

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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