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アジアリーグアイスホッケーが日本でも開幕~氷上の鉄人が語るアジアのライバルたち~

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
アジアリーグアイスホッケー(Rights of Jiro Kato)

先月27日に開幕した「アジアリーグ アイスホッケー」は、ピョンチャン オリンピックの出場権を懸けた最終予選に挑んだ日本代表メンバーも帰国して、いよいよ明日の八戸での試合を皮切りに、日本でもレギュラーシーズンがスタートします。

熱心なファンの人たちにとっては、「待ちに待った開幕だ!」という気分かもしれませんが、2003年の創設当初からアジアリーグをリードしてきた日本勢は、海外チームとの試合で苦戦を強いられることが、年々目立つように・・・。

昨季は日本の4チームが揃ってプレーオフへ進んだものの、いずれもファイナルへ勝ち上がれず、初めて「海外チーム vs 海外チーム」の顔合わせによる頂上決戦が繰り広げられ、韓国のアニャンハルラが、ロシアのサハリンを下して王座に輝きました。

「アジアのライバルたちを倒すには、どうすれば良いのか?」

その答えを見つけるべく、アジアリーグがスタートしてから、昨季終了後に引退するまで、 13年間全試合出場を果たした「氷上の鉄人」こと 大澤秀之 氏に、アジアのライバルチームを分析してもらいましょう。

氷上の鉄人・大澤秀之氏
氷上の鉄人・大澤秀之氏

大澤秀之

1979年1月5日苫小牧市生まれ。日本製紙クレインズのキャプテンを務め、全日本選手権でMVPに輝く。また日本代表のDFとして世界選手権に5回出場。日本リーグ時代の93試合とアジアリーグ全試合を合わせトップリーグ577試合連続出場を果たし「氷上の鉄人」と呼ばれた。

昨季終了後に引退し、今季からは社業の傍ら、アジアリーグジャパンオフィスの一員として、アイスホッケーを支える。

▼韓国最強チーム・アニャンハルラ

1994年12月に創設して以来、国内リーグに参戦していたが、2003年に始まったアジアリーグへ、日本の4チームとともに、ただ一つ韓国から加盟した「オリジナル5」のメンバー。2010年にプレーオフを勝ち抜き、日本勢以外で初めてチャンピオンとなったのに続いて、翌年も連覇。

昨季はレギュラーシーズンを1位で戦い終え、プレーオフも制して3度目の優勝を飾った。

<大澤氏がハルラを語る>

「以前から攻撃力が図抜けていたところに、ピョンチャンオリンピックへ向けた強化策で、GKの#86マット・ダルトン(=昨季のプレーオフMVP)やDFの#29エリック・リーガンらが韓国籍を取得しました。さらに#61イ・ドンクをはじめ韓国生まれのDFもレベルアップして、隙がないチームです。

なかでも見逃せない選手は、FWの#25ブロック・ラドゥンスキ(韓国籍取得)です。シュートセンスがいいですし、相手選手と1対1になってもサイズ(身長196cm 体重95kg)を武器にして攻撃を仕掛けてくるので、息が抜けなかったです。

ブロック・ラドゥンスキ(Rights of Jiro Kato)
ブロック・ラドゥンスキ(Rights of Jiro Kato)

▼ハルラの好敵手・High1(ハイワン)

冬季オリンピック招致への気運を高める目的で、2004年にカジノやリゾートホテルなどを運営しているカンウォンランドがチームを設立。初年度は国内リーグだけの参戦だったが、翌年からは外国人選手も獲得しアジアリーグに加盟。2季目には早くもプレーオフへ勝ち進んだ。

2007年からオーナー企業のブランド戦略に伴い、チーム名を High1 に変更している。

<大澤氏が High1 を語る>

攻撃力に長けていますけれど、ハルラに比べると波があるように感じました。FWでは#23マイケル・スウィフトの得点力(在籍5季で得点王3回・韓国籍取得)と、泥臭いプレーに徹していた#16クォン・テアンが印象強いです。

印象強いと言えば、 DFの#5ブライアン・ヤング(韓国籍取得)が一番ですね。攻めてくる相手選手にチェックをするタイミングが的確で、同じDFとして感心させられました。

ブライアン・ヤング(Rights of Jiro Kato)
ブライアン・ヤング(Rights of Jiro Kato)

▼ホッケー強国ロシアから参戦・サハリン

2013年にロシア極東のユジノサハリンスクを拠点として、シーライオンズのチーム名で創設。翌年からアジアリーグ参戦が認められ サハリン に名前を改めた。初年度からプレーオフへ進出し、一昨季は3位。昨季は準優勝と、ホッケー強国の力を披露。

今季は旧ソ連代表の名GKだった ウラジスラフ ・トレチャク 氏の孫でGKの#91 マキシム・トレチャクが在籍。

<大澤氏が サハリン を語る>

どの選手もスキルが高い上、サイズの大きな選手が多いです。FWでは#77 ルスラン・ベルニコフ(キャプテン。元KHL選手)は、スピードこそないですけれど存在感がありますし、#59 アレクセイ・トカチュク(父親が前監督)は得点センスが際立っていました。

チーム全体を見ると、日本や韓国のチームは、相手ゾーンにパックを打ち込んでから、チェックを仕掛けてチャンスを作りますけれど、サハリンの基本はパスをつないで攻める。相手ゾーンに入れない時は、パスを戻してから再び攻めこむという、旧ソビエト時代から続くロシアスタイルがベースですね。

サハリンとの試合では、対人プレーで負けないように個々の準備も必要ですけれど、ゾーンごとに状況に応じてトラップを仕掛けたり、相手の攻撃の流れを断ち切るチームとしての準備も必要だと思います。

この3チームをはじめとするアジアのライバルたちに、今季は日本勢がどう戦っていくのでしょうか?

プレースタイルもチームカラーも異なる日本、韓国、中国、ロシアの4ヶ国9チームが、来春まで氷上の戦いを繰り広げる「アジアリーグアイスホッケー」のスケジュールやチームの情報は、オフィシャルサイトでご確認ください。

また、こちらで紹介しきれなかった大澤氏の他チームの分析や、日本勢4チームの見どころは、国内の試合会場で販売される「アジアリーグアイスホッケー・オフィシャルプログラム」に掲載されています。

ご観戦の際には、ぜひご覧ください。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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