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両チーム同点の時、サッカーはPK戦。アイスホッケーはゲームウイニングショット。NHLはシュートアウト

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
アイスホッケーの試合が同点の時はシューターとGKによる1対1の勝負で決着をつける(写真:ロイター/アフロ)

2018年のサッカー ワールドカップ出場権を懸けたアジア最終予選に臨んでいる日本代表は、明後日(現地時間)オーストラリアでのアウェー戦に挑みます。

ところで、今回の予選では採用されていませんが、記憶に新しいところでは、リオデジャネイロ オリンピックの男子決勝戦など、サッカーのビッグゲームでは「PK戦」で決着をつけることがあります。

一方、アイスホッケーの試合では、ほとんどの国のリーグで、オーバータイム(延長戦)まで戦い終えても同点だった時は、サッカーのPK戦と同じく「シューター vs GK」による1対1の勝負で決着をつけますが、これを、、、

「ゲームウイニングショット」

または、、、

「シュートアウト」

と呼びます。

▼ゲームウイニングショットとシュートアウト

呼び名こそ違いますが、どちらもオーバータイムを戦い終えて両チームが同点だった際、チームが指名したシューターが、アイスリンクの中央に置かれたパックを、スティックを使って運び、相手チームのゴールへシュート。

見事にシュートが決まれば、「スコア!(得点)」

対してGKがシュートを「セーブ」した時や、放ったシュートがゴールポストに当たったり、外れてしまった時は、「ミス」となります。(リバウンドを叩くことは許されていません)

ゲームウイニングショットも、シュートアウトも、はじめに3人ずつ選手を指名。

一番手のシューターから両チームが交互に挑み、合わせて6人がシュートを打ち終えても勝敗が決まらない時は、ラウンド4、ラウンド5・・・と、勝敗を決するまで続けていきます。(オリジナルのルールを採用しているリーグもあります)

▼国際ルールの試合では「ゲームウイニングショット」

「オリンピック」や毎年行われている「世界選手権」(ジュニア、女子などの各カテゴリーを含む)に、「KHL」や日本のトップチームが加盟している「アジアリーグ」といった国際アイスホッケー連盟が制定する「国際ルール」を採用している試合では、「ゲームウイニングショット」で決着をつけます。

ゲームウイニングショットのルールで、特筆すべきことは、、、

「ラウンド4以降は(GKを除いて)誰をシューターに起用しても構わない」

という点です。

このルールによって、世界中のファンに、一躍その名を知られる存在となったのが、ソチオリンピックにアメリカ代表の一員として出場した FWのT.J.オシー(セントルイス ブルース=当時)

T.J.オシー(Rights of Jiro Kato)
T.J.オシー(Rights of Jiro Kato)

地元のロシアとの試合がオーバータイムを終えても決着がつかず、ゲームウイニングショットへ及ぶと、真っ先に名前を呼ばれたオシーは、起用に応えて見事にスコア。

その後、ラウンド3を終えても勝敗がつかず、再びシューターに指名されたオシー(紺の#74)は、ラウンド4、ラウンド5、ラウンド6、ラウンド7、ラウンド8と、ダン・バイルズマ ヘッドコーチ(HC/ピッツバーグ ペンギンズ=当時)に、これでもかッ !! とばかりに起用され続けました。

★お時間のある方は、ぜひ動画(9分51秒)で全ラウンドの模様をお楽しみください。

起用したバイルズマHCもさることながら、超アウェイの中、起用に応え続けたオシーは、まさに「お見事!」ですね。

▼NHLの試合では「シュートアウト」

今度はNHLに目を転じると、レギュラーシーズンの試合でオーバータイムを終えても同点の時は、「シュートアウト」で決着をつけます。

NHLで採用されたシュートアウトで、特筆すべきことは、、、

「全てのプレーヤーがシュートアウトに挑んだあとでないと、

二度目のシューターとして起用することができない」

という点です。

NHLの公式戦でベンチ入り可能な登録選手数は、1試合「20」人までですが、その中には2名のGKが含まれるため、プレーヤーの数は「18人」

この18人が、全てシュートアウトに挑んだあとでないと、二度目のシューターに起用できないことから、前述したソチオリンピックの「まずオシー! 次もオシー !! もう一度オシー !!!」というような、エースプレーヤーだけの起用は認められていないのです。

逆に言えば、なかなか決着がつかず、シュートアウトが長引いてしまうと、普段なら「攻撃はお任せしま~す」という、ディフェンシブな働きをウリにしているDFの選手まで、シュートアウトに登場します。

それだけに、ラウンド13、ラウンド14、ラウンド15・・・くらいまで進むと、ゴールが決まりそうな匂いが、全くしなくなってしまう試合も(苦笑)

その象徴と言える試合となったのが、一昨季に行われた「フロリダ パンサーズ vs ワシントン キャピタルズ」戦。

従来の「ラウンド15」という最長記録を大きく上回り、「ラウンド20」までシュートアウトが続いていきました。

★お時間のある方は、こちらも(18分3秒)全ラウンドの模様をお楽しみください。

夜7時半を過ぎて始まった試合に決着がついたのは10時41分。

この試合に勝利したフロリダのジェラルド・ギャラントHCは、ご褒美として翌朝の練習を「お休み」にしてあげたそうです(笑)

▼PK戦より決まらないシュートアウト

動画をご覧になられた方の中には、「PK戦と違って、なかなかシュートアウトは決まらないんだなぁ」と思った人も、少なくないかもしれません。

もっとも、それもそのはず! 下の写真を見ていただければ一目瞭然ですが、、、

サッカーよりもGKがカバーできるエリアが広い(Rights of Jiro Kato)
サッカーよりもGKがカバーできるエリアが広い(Rights of Jiro Kato)

「サッカーのPK戦よりも、NHLのシュートアウトのほうが、

ゴールポストの大きさに対して、GKがカバーできるエリアが広い」

ことが影響しているのは明白だと言えるでしょう。

ちなみに、昨季のNHLでシュートアウトに臨んだ選手は「のべ742人」

そのうち、ゴールを決めた選手は「のべ238人」で、得点率は「32%」

「シュートアウトに3人挑めばゴールが決まる」

というのがNHLのアベレージなのです。

ちなみにNHLは、2005年からシュートアウトを採用していますが、シュートアウトを行うのは、レギュラーシーズンの試合だけ。

プレーオフでは、どちらかのチームが得点するまで、インターミッションを挟みながら、オーバータイムを続けて決着をつけます。

つまり個人技によって決まるシュートアウトは、あくまでもエンターテイメント。

王座を争うプレーオフは、ガチの勝負でいきましょう! と色分けをしているのです。

それだけに、レギュラーシーズンの試合がシュートアウトまで及んだ時は、楽しまないと損!

もし皆さんがシュートアウトを目の当たりにする機会があったら、トッププレーヤーの個人技を、たっぷり堪能してください !!

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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