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朝起きた時には思ってもみなかった! 選手でないのにNHLの試合に出場するなんて!!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
カロライナハリケーンズのゴールを守ったのは誰?(Photo:Jiro Kato)

2016年最後の日となった昨日(現地時間)、NHLのレギュラーシーズンは11試合が行われました。

最も注目されたNHL史上初「14連勝」vs「12連勝」の絶好調チームが激突!した試合は、コロンバス ブルージャケッツが勝利して、NHL歴代2位タイとなる「15連勝」を飾りました。 

その一方で、昨日行われた中には、予想だにしなかったことが起こった試合も!

それは、カロライナ ハリケーンズ vs タンパベイ ライトニング」戦での出来事でした !!

▼用具マネージャーが突然の選手登録

ホームチームのカロライナには、優勝経験もある守護神のキャム・ウォードと、2番手のエディ・ラックという二人のGKがいます。ところが、昨日の試合前、ラックが体調を崩してしまい、ベンチ入りが困難に。

10月23日に掲載した「長野オリンピック日本代表GKダスティ・イモオ(46歳)が現役復帰! 同じ試合で22歳の息子が先発!!」の記事の中で紹介したとおり、NHLの公式戦では「GKを二人登録しなければならない」との規定があるため、カロライナはGKを探しましたが、傘下のアフィリエイトチームからGKを招くだけの時間はなさそう・・・。

そこでカロライナは、用具マネージャーのジョージ・アルベス(37歳)と一日だけの契約を結んで、試合に臨みました。

▼裏方がNHLの試合でベンチ入り

アルベスはマイナープロリーグに在籍し、数試合出場したキャリアこそあるものの、10季前に現役引退。

その後は用具マネージャーに転じて、カロライナと契約。アシスタント役を務めたあと、4季前から用具マネージャーとして、選手を支え続けています。

ところが、前述したチーム事情から、裏方のアルベスが一日限りながら選手契約を結び、昨夜のタンパベイライトニング戦でベンチ入りをすることに!

「NHLの試合でベンチ入り」という、朝起きた時には思ってもみなかった幸運が巡ってきたアルベスは、試合前のウォームアップが始まる際には、先陣を切ってリンクへ駈け出して行きましたが、、、

他の選手が、誰一人リンクへやってこない! というチームメイトからの洗礼を受けてしまいました(笑)

▼ヘッドコーチの粋な計らい

チームメイトからの洗礼はともかく、昨夜のカロライナのように、バックアップGKが不在となって、一日限りの契約を結ぶことは、決してレアケースではなく、今季はバンクーバーカナックスが、近隣の大学からGKを招いて試合に臨んだことも。

ただ、昨夜の試合がレアケースになったのは、カロライナのビル・ピータース ヘッドコーチ(HC)の粋な計らいがあったからです。

2点をリードされて迎えた試合終了7.6秒前。

敗色濃厚となったところで、先発GKのウォードをベンチへ呼び寄せ、アルベスをリンクへ送り出しました!

「(アルベスを出場させたことは)正しい判断だったと思う」

試合後にピータースHCは、こう話していましたが、指揮官の言葉からは、アルベスの仕事ぶりを称える気持ちが伝わってきます。

この日もベンチ入りしたとはいえ、アルベスは試合中であろうとも、ユニフォーム姿でチームメイトのスケートを研磨する姿が見られました。

「思ってもみなかった! 信じられないよ !!」

メディアからの取材に、アルベスは繰り返し答えたそうです。

わずかな時間だったため、シュートを受けることさえありませんでしたが、アルベスのキャリアに「NHLの試合に出場」という記録が刻まれたのは、裏方としてチームを支え続けて来た彼への、ちょっと遅めのクリスマスプレゼントだったのかもしれません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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