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【アレックス・オベチキンvsシドニー・クロスビー】NHL最大のライバルと呼ばれ続ける二人の因縁とは?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
オベキチン(右)とクロスビー(Photo:Jiro Kato)

アレックス・オベチキン(ワシントン キャピタルズ)と、シドニー・クロスビー(ピッツバーグ ペンギンズ)。

アイスホッケーを良く知らない人でも、きっと耳にしたことのある二人は、10年間にわたって「NHL最大のライバル」と呼ばれ続けてきました。そんな二人が、今夜(現地時間)レギュラーシーズンでは通算40回目の直接対決に臨みます!

2017年になって初めて顔を合わせる二人を、あらためて紹介しましょう。

▼アレックス・オベチキン

アレックス・オベチキン(Photo:Jiro Kato)
アレックス・オベチキン(Photo:Jiro Kato)

★1985年9月17日 ロシアの首都・モスクワ生まれ(31歳)。

★16歳の時に(KHLのベースとなった)スーパーリーグに在籍するディナモ モスクワとプロ契約を結ぶ。

★18歳で「ワールドカップ」と「世界選手権(シニア)」にロシア代表のメンバーとして出場。

★2004年のドラフトで、ワシントンから全体1位指名を受け、NHLデビュー。81試合に出場し、52ゴール106ポイントをマーク。カルダートロフィー(最優秀新人賞)に輝いただけでなく、新人以外も含め全ての選手を対象にしたファーストオールスター(ポジションごとのベストプレーヤー)にも選出。

★ロシア時代に慣れ親しんだ「32」が、既にチームの永久欠番となっていたため、女子バレーボールで、モントリオール、モスクワのオリンピックニ大会連続金メダルを獲得した母親のタチアナと同じ背番号「8」をつけてプレーしている。

▼シドニー・クロスビー

シドニー・クロスビー(Photo:Jiro Kato)
シドニー・クロスビー(Photo:Jiro Kato)

★1987年8月7日 カナダ東部の大西洋に面したノバスコシア州コールハーバー生まれ。

★16歳の時に、多くのNHL選手を輩出しているQMJHL(ケベック メジャージュニアホッケーリーグ)に所属するリムースキ オシアニクで59試合に出場し、54ゴール135ポイントを記録。QMJHL以外も含めたカナダのメジャージュニアリーグの全選手の中から、最優秀選手に選ばれた。

★翌年もリムースキの一員として、62ゴール168ポイントの成績を残し、2年続けて最優秀選手賞に輝く。

★2005年のドラフトで、ピッツバーグから全体1位指名を受けて、NHLデビュー。81試合に出場し、39ゴール102ポイントをマークした。

★生年月日にちなみ背番号「87」をつけてプレー。クロスビーの活躍もあって、ガブリエル・ランデスコッグ(コロラド アバランチ #92)や、コナー・マクデイビッド(エドモントン オイラーズ #97)という10代でキャプテンを担う若手の中心選手へ、生まれた年の下2ケタの背番号を与えるチームが、目立つようになった。

▼ダイナミックなプレーが光るオベチキン !!

LW(レフトウイング=FW3人で組むラインの中で左側に位置し、得点を狙うことが大きな役割となるポジション)でプレーするオベチキンの魅力は、何と言っても群を抜く得点力!

NHLにデビューして今季で12年目を迎えていますが、昨季までの4年連続を含め、モーリスリシャード トロフィー(得点王)に6回輝いています。

屈指のゴールスコアラーと称えられるオベチキンの持ち味は、ダイナミックなプレー!

ルーキーシーズンに披露した、体勢を崩しながらもゴールを決めてみせたアクロバティックなスコアは、今でも現地のメディアが中継の合間などに紹介しています。(白#8)

このようなプレーが随所に見られるとあって、シビアな報道が多いカナダのメディアでさえ、「オベチキンのプレーを見て楽しいと思えないのなら、きっとあなたはホッケーファンではない」と論じているほどです。

▼エクセレントなスキルで魅せるクロスビー !!

対するクロスビーは、CF(センターフォワード=FW3人のラインの中心で、主にプレーメイクが役割となるポジション)とあって、卓越したスキルを武器に、味方のゴールを演出するパスでファンを魅了!

オベチキンとは対照的に、華麗なプレーでチームに得点をもたらせるアシストパスは、思わず「アッ!」と声が出てしまいそう。(白#87)

昨夜の試合を終えた時点で、「通算 544ゴール 455アシスト」のオベチキンと反対に、クロスビーの通算成績は「364ゴール 618アシスト」

この数字が物語るとおり、(今季こそ得点の割合が増えているものの)アシストが多く、プレーメーカーとしての働きが光ります。

▼優等生のクロスビーと、やんちゃ坊主のオベチキン !?

二人はプレーヤーとして比較されることが多いだけでなく、それぞれのキャラクターが醸し出すイメージから、、、

「優等生のクロスビー」vs「やんちゃ坊主のオベチキン」

というメディアの取り上げ方も、少なくありません。

これまでに出演したテレビコマーシャルを見ても、カナダに生まれ、ずっと北米でプレーをし続けているクロスビーは、、、

対して、ロシアからやってきたオベチキンは、、、

このように、同じホッケー用具のCMなのに、キャラクターの設定が全然違いますね(笑)

もっとも、両選手ともに、それは心得ているようで、特にオベチキンは、、、

かつてのロシア人NHLプレーヤーとは正反対に、明るいキャラクターを前面に出して、人気を集めています。

▼NHL最大のライバルと呼ばれ続ける二人の因縁!

2005年の秋に揃ってデビューした二人は、ともにチームのキャプテンとして、11年目のシーズンを戦っています。

紹介してきたとおり、オベチキンとクロスビーは、今も尚「NHL最大のライバル」と呼ばれ続けていますが、それには大きな因縁があることも影響しているのです。

オベチキンがドラフト指名された2004年は、NHLの労使交渉が難航し、年明けの2月26日に、北米4大メジャースポーツで史上初めて「フルシーズン キャンセル」となり、全く試合が行われませんでした。

そのため、クロスビーがドラフト指名を受けて迎えた翌年(2005-2006シーズン)は、、、

「ドラフト全体1位指名の超有望なルーキーが二人揃ってデビュー!」

したという、かつてないシーズンとなったのです。

祖国やプレースタイルに、キャラクターの違いだけでなく、誰もが予想だにしなかった出来事から、同じ年にNHLデビューを飾ったオベチキンとクロスビー。

これまでの10年間は、クロスビーが2度も優勝してスタンレーカップを獲得。さらに、オリンピックやワールドカップでも栄冠を勝ち取ったのに対して、オベチキンはNHLでの優勝経験はなく、プレーオフで敗れたあとに出場した世界選手権で優勝しただけと、明暗がくっきり。

果たして、11季目を迎えた「NHL最大のライバル」には、これからどんなストーリーが待ち受けているのでしょうか?

今夜40回目の直接対決を迎える二人が、ドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領就任式より一足早く、ワシントンD.C.を沸かせます!

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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