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ピョンチャンオリンピックにNHLの現役選手が参加するかもしれない !?  最後の会談が今日行われる!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
来年2月9日に開幕するピョンチャンオリンピック開催まで、あと「371日」(写真:ロイター/アフロ)

来年2月9日に開幕する「ピョンチャンオリンピック」開催まで、間もなく「あと一年」になります。

1998年の「長野オリンピック」以来、NHL選手の出場が認められ、アメリカだけがドリームチームと呼ばれるバスケットボールとは違って、カナダ、アメリカ、スウェーデン、チェコ、(出場可能か否かはともかく)ロシアなど、「ドリームチーム vs ドリームチーム」の試合が見られるとあって、世界中のファンが期待を寄せています。

しかしながらNHLは、昨年9月に「ワールドカップ」を12年ぶりに開催したのを皮切りに、新たな国際マッチの新設プランを発表。

さらには、来季のレギュラーシーズンでは、ともにスウェーデン人がキャプテンを務めている オタワ セネターズとコロラドアバランチの試合を、スウェーデンで開催したり、ロサンゼルス キングスとバンクーバー カナックスのプレシーズンゲームを、北京で行うプランも抱いています。

ところが、ここへ来て、

ピョンチャンオリンピックにNHLの現役選手が参加するかもしれない !?

という可能性が浮上してきました!

まずはじめに、これまでの経緯を紹介しましょう。 

(昨年9月29日に掲載したピョンチャン五輪のアイスホッケーで、NHLのスター選手のプレーを見るのは絶望的?より一部転載)

▼注目はワールドカップよりもNHL選手のオリンピック出場

「大いに注目」と言えば、ワールドカップの決勝が始まるのを前に、NHLはプレスカンファレンスを開催しましたが、会見の席上で大いに注目されたのは、ワールドカップにも増して、、、

「NHL選手のオリンピック出場」

に関する話題でした 。

というのも、NHLはワールドカップを再開しただけでなく、今週開催されるゴルフの「ライダーカップ」をベースにした「北米選抜 vs ヨーロッパ選抜」の大会の開催へ向け、NHL選手会と交渉中と伝えられるなど、自ら主催する国際大会を増やして、“一人勝ち” を目ろんでいる模様です。

一方、冬季オリンピックで必ず最後に決勝が行われる男子アイスホッケーは、正真正銘のメインイベントとあって、NHL選手がオリンピックに参加するか否かは、国際アイスホッケー連盟(以下国際連盟)にとって最大の課題。

プロモーション面をはじめ、大きな影響を及ぼすだけに、NHLを筆頭とする北米のプロリーグが導入している独自のルールを、次々と国際連盟でも採用し、「世界標準ルール」にするなど引き留めに必死だったのですが、NHLの意向は揺るがず・・・。

そのため、今春に国際連盟のルネ・ファゼル会長は、「NHL選手がオリンピックに参加する際に負担してきた保険代や移動経費の負担は、今後行わない」と公言。事実上の「NHL引き留め断念宣言」をしたようだと、欧米のメディアが一斉に報じました。

▼NHLからの最後通告

これで「ジ・エンド」だと思われましたが、NHLのビル・デイリー副コミッショナーは、会見の席上で、まだ交渉を続けていると公言。

しかしながら、NHLの強硬な姿勢は変わらず、国際連盟のファゼル会長が「(NHL選手のピョンチャン オリンピック出場の可能性は)五分五分だ」と答えたのに対し、NHL側は「ジャック・ロゲ 前国際オリンピック委員会会長は、ソルトレイクからソチまで、NHLと国際連盟の交渉を自ら買って出ていた」と話し、積極的な引き留めを行っていない模様のトーマス・バッハ現会長を、暗に非難する一幕も。

さらに続いて、「(ピョンチャンオリンピックが開催される)来季のNHLのスケジュール作成にとりかかる11月から12月がタイムリミット」だと、最後通告と言えるコメントを発しました。 (ここまで転載)

▼NHLが態度を軟化させ再び交渉へ

このような経緯の末、「タイムリミット」だとNHL側が定めた昨年の「11月から12月」は過ぎてしまいましたが、一転してNHLが態度を軟化させ、再び交渉の席につくことが明らかになりました。

現地メディアが報じているところによると、国際連盟のファゼル会長、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が、ニューヨークの NHL本部へ赴き、ゲイリー・ベットマン コミッショナーと、NHL選手会の ドナルド・フェア 事務局長と、今日(現地時間)会談を行います。

▼スタープレーヤーの声が背中を押した

NHLが一転して歩み寄りを見せたのは、スタープレーヤーの声でした。

「もしNHLが(オリンピックブレイクを設けず)出場出来る環境が整わなかったとしても、オリンピックに出場したい」と、ロシア出身のアレックス・オベチキン(ワシントン キャピタルズ)が公言。

さらに、カナダの生まれのジョナサン ・テイズ(シカゴ ブラックホークス)も、「オリンピックは、ワールドカップや世界選手権とは、比べ物にならない」と話すなど、ワールドカップに出場し、所属チームでキャプテンを担う選手たちから、オリンピック出場を望む声が聞かれます。

▼最後の会談!

このような経緯から、各チームのオーナーやNHLが歩み寄りを見せ、再交渉の機会が訪れる運びとなりましたが、「開幕まであと一年」という事実を見れば、今日から始まる交渉が「最後の会談」になるのは間違いなさそう。

選手たちの保険代や移動経費の負担割合など、まだまだ課題は山積していますが、「最後の会談」によって、ピョンチャンオリンピックでNHLのスター選手たちの姿を、見られるようになるでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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