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【NHL】トレードデッドラインの前に、とうとう白旗を上げてしまったチームと、安売りをしなかったチーム

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
サンノゼに移籍したヤニック・ハンセン(Photo:Jiro Kato)

NHLは昨日の午後3時(北米東部時間)をもって、トレードデッドライン(移籍可能期限)を過ぎました。

最終日となった昨日だけに限っても、例年に比べると、やや少なめながら「18件」のトレードが成立し、「33選手」「11のドラフト指名権」が、チームの間で取引されました。

その中には、タイトル写真で紹介したヤニック・ハンセン(FW・30歳)のように、ドラフト指名を受けてからバンクーバー カナックス一筋に、14季もプレーしてきた選手がサンノゼシャークスへ。

DFに目を転じると、フィラデルフィア フライヤーズから(タンパベイ ライトニングを経由して)、ピッツバーグ ペンギンズにトレードされた、スイス代表のキャプテンも務めたマーク・ストライト(39歳)など、本来はプレーオフスポットを争う同じディビジョンのライバルなのに、成績によって色分けされた「売り手側のチーム」から「買い手側のチーム」へ移っていった選手も見られました。

しかし、一口に「売り手側」と言っても、その背景は様々。

そこで、今季のトレードデッドラインを前に、「とうとう白旗を上げてしまったチーム」「安売りをしなかったチーム」を紹介しましょう。

▼とうとう白旗を上げてしまったデトロイト レッドウィングス!

先月24日に掲載した、

の記事で紹介したデトロイトは、トレードを志願していたドリュー・ミラーの移籍は行わず、(バンクーバーに在籍中の兄のライアン・ミラーとともに)現在のチームでプレーを続けることになりました。

しかしデトロイトは、チームトップの得点を記録しているトーマス・バネク(33歳)と、相手の主力を厳しくマークする役割に長けているスティーブ ・オット(34歳)という二人のベテランFWを放出。

見返りには、多くのドラフト指名権や若手選手を得て、来季以降へ向けたチームづくりへ舵を切りました。

★足掛け35年にわたってチームを支えたオーナーが亡くなった。

★37季もの間、戦い続けたホームアリーナが今季で最後を迎える。

★北米4大スポーツ(現在継続中では)最長の26季連続プレーオフ進出中。

という “名門チームが背負う宿命” は承知の上で、「順位表を見れば明らかだ」とケン・ホランド GM(61歳)はキッパリ。

レギュラーシーズンが 3/4 を消化しても(残り21試合)、未だにイースタンカンファレンスの最下位にいる現状を直視して、とうとう白旗を上げてしまったようです。

▼バーゲンセールをしなかったコロラドアバランチ

デトロイトとは対照的に、シーズン序盤から「主力選手のトレードも辞さない」と宣言していたのは、コロラド アバランチのジョー・サキック GM(47歳)でした。

今季のコロラドを振り返ると、レギュラーシーズンの開幕が2か月後に迫ったところで、パトリック・ロワ ヘッドコーチが突然辞任!

指揮官の交代が少なからず影響し開幕から低迷。12月には「3勝12敗」と、どん底の状態まで陥り、ウエスタン カンファレンスの最下位が定位置となってしまったまま、終盤戦を迎えています。

このような状況を予見していたのか、サキックGMは、開幕直後から「主力選手のトレードもありえる」と公言。

しかも、史上3人目の19歳でキャプテンに就任したガブリエル ・ランデスコッグ(24歳)をはじめ、ワールドカップ優勝メンバーのマット・ドゥシェーン(26歳)、3季前にベストルーキーに選ばれたネイサン・マッキノン(21歳)ら、 “チームの顔” になっている若手FWへのトレード話にも、「全て耳を傾ける」と言い続けてきました。

ところが、デッドラインを迎えるまで、コロラドから大きなトレードの知らせは聞かれませんでした。

▼コロラドの改革へ着手

現地メディアによれば、レギュラーシーズンの序盤に、得点力を高めたいボストン ブルーインズから、若手FWの獲得を申し出るトレードの打診があると、交換要員にブランドン・カルロを要求。

今季からレギュラーに定着したカルロは、196cm 95kgの大型DF。まだ20歳で今後の成長も見込める上、コロラドスプリングス出身とあって、サキックGMが白羽の矢を立てたのも納得です。

しかし、ボストンにとっても貴重なプロスペクトだけに、他の若手選手を候補に再度アプローチしたところ、サキックGMの答えは「NO」でした。

NHLの歩みを振り返ると、「低迷 → 大改革」というルートを進んだチームは、枚挙にいとまがないほど。

ところがサキックGMは、どんなに低迷していても「ただ単にチームの変化を求めるだけのトレードはしない」という方針を徹底。

前述の3選手へのトレードの申し込みは、その後も届いたと報じられていますが、決して安売りをせず、大きな動きは、元得点王のジャローム・イギンラ(FW・39歳)を、ロサンゼルス キングスへトレードした程度。

チームの方向性を見失わずに、コロラドの改革へ着手していくようです。

▼NHL最大のライバルバトルは再び見られるか !?

デトロイトとコロラドと言えば、1990年代半ばから、2000年代のはじめまで、激しくしのぎを削り合っていたことから、当時は「NHL最大のライバル」と呼ばれた両チーム。

1995年からの7年間で、この両チームが合わせて「5回」もスタンレーカップを獲得したほどの強さを誇り、ファンを熱狂させました!

当時は、デトロイトがウエスタン カンファレンスに在籍していたため、見ることができなかった「デトロイト vs コロラド」のスタンレーカップファイナルで、再びファンを熱狂させる日は、いずれやってくるのでしょうか?

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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