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【NHL】チームメイトのハットトリックを阻止(!?)してしまった選手のちょっとイイ話

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
今年のNHLオールスターゲームでMVPに輝いたウェイン・シモンズ(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

トレードのデッドラインを過ぎて、NHLのレギュラーシーズンは終盤に入りましたが、先月末の28日(現地時間)に、ウェルズファーゴセンターで行われた「フィラデルフィア フライヤーズ vs コロラド アバランチ」戦で、ファンからの祝福を受けた選手が現れました。

フィラデルフィアのウェイン ・シモンズ(FW・28歳)です !!

今年のオールスターゲームで MVP に輝いたシモンズは、試合開始直後に味方のペナルティによって人数が少ないピンチにもかかわらず、先制ゴール!(オレンジ #17/動画はこちら

さらに4分後には、ゴール前でシュートの角度を変えて追加点 !! (動画はこちら

わずか8分で2得点して、早々とハットトリックにリーチをかけると、相手選手の反則退場によって人数の多いパワープレーのチャンスを見逃さず、10分35秒に3点目をゲット!

自身が3得点する間に他の選手のゴールを挟まない「ナチュラルハットトリック達成 !!!」かと思いきや、、、

ゴール前にいたシモンズのスティックには、パックが当たっていなかったため、記録はシュートを放ったヤクブ ・ボラチェク(オレンジ#93/27歳・FW)の得点に・・・。

しかし、観戦しているファンには、シモンズのスティックに当たってゴールが決まり「ハットトリックだ!」と見えた様子。(スタンドからであれば、よほど間近に見ている人でなければ、そう見えたはずですよね)

昨年10月に当サイトで紹介したとおり、NHLに限らず、アイスホッケーの試合では、ホームチームの選手がハットトリックを達成した時に、スタンドのファンが「ハット」(ならぬ、ほとんどはキャップですけれど)をリンクへ投げ入れて、3得点の活躍をした選手を称えるのが一般的。

それだけに、ウェルズファーゴセンターに詰め掛けたフィラデルフィアファンは、一斉に帽子を投げ込んでしまいました !!

結局、このあともシモンズのゴールは見られず、自身2度目のハットトリックは、お預けに・・・(苦笑)

対して、シモンズのハットトリックを称えようと、たくさんの帽子がスタンドから投げ入れられた光景を見たボラチェクは、「ファンがボクの車に石を投げないよう願っているよ」と、試合後に笑顔で話していました。

ところで、フィラデルフィアのホームゲームでは、ハットトリックを称えてファンがスタンドから投げ入れた帽子は、ホームアリーナのコンコースに、全て展示されているのですけれど、、、

ウェルズファーゴセンターのコンコース(Rights od Jiro Kato)
ウェルズファーゴセンターのコンコース(Rights od Jiro Kato)

今回の帽子は、どうなるのでしょう???

と、ここまでは筆者のオフィシャルサイトで、試合終了直後に紹介しましたが、地元のメディアによると、投げ入れられた帽子が「396個」だと知らされたボラチェクは、「一つの帽子が20ドルくらいで(およそ)400個だから」と、「8000ドル(およそ90万円)」のポケットマネーを投じて新しい帽子を購入し、フィラデルフィアエリアの子供病院に入院している小児がん患者へプレゼントしてあげたそうです。

今季の年俸が「825万ドル(およそ9億3750万円)」のボラチェクにとっては、大きな出費ではないのでしょうけれど、チェコ代表の一員として、オリンピックやワールドカップに出場したほどのトッププレーヤーの心意気に拍手を送ったファンも、きっと多かったでしょう。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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