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【NHL】今季から採用された「バイウィーク」は禁断の果実だった !?

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
アレックス・オベチキン(右・ワシントン)とシドニー・クロスビー(ピッツバーグ)(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

「あれ? 次の試合まで、こんなに間隔があいているんだ」

ひょっとしたら、アイスホッケーファンの方の中に、今季のNHLのレギュラーシーズンで、お気に入りチームの試合が、しばらく組まれていないスケジュールを見て、首をかしげた方もいるのでは?

それもそのはず! NHLは今季から「バイウィーク(Bye Week)」を導入したからなのです。

▼3on3によるオールスターゲームとの交換条件

今季のスケジュールを決めるのに先立って、NHLはロサンゼルスがホストタウンとなる今年1月のオールスターゲームを、「4つのディビジョンによる 3on3(=プレーヤーの数) で行いたい」という要望を出しました。

対して、NHL選手会は、引き換えにバイウィークの導入を提案。

両者がそれぞれの提案を受け入れたことで、今季からバイウィークが導入されました。

▼バイウィークとは?

既にNFLなどで採用されているバイウィークは、「レギュラーシーズンの合間に中休みを設ける」もの。

NHLでは全30チームが、トレードデッドラインを迎える直前の2月末までの間に、なるべくディビジョン内のチームで大きく時期が異ならないように、5日間(休み明けの初戦の対戦相手スケジュールによっては6日間)の「中休み」に突入。

最後にバイウィークを迎えたアナハイムダックスも「中休み」を終えて、今月3日(現地時間)から試合に臨んでいます。

▼鍛え抜かれたNHL選手も「休みボケ」に !?

バイウィークを終えて、再び “戦闘モード” へ戻った選手たちは、鋭気を養って「やる気満々!」のはずなのですが、全30チームのバイウィーク明け初戦の成績は、、、

「10勝(うちオーバータイム以降での勝利が3試合)20敗」

さらに、もう少し長いスパンで見ると、バイウィーク前の3試合(NHLは3日連戦が禁じられているため、最短でも4日間)と、バイウィーク明けの3試合で手にした勝点(勝ち=2ポイント、オーバータイム以降での負け=1ポイント、レギュレーションタイム内での負け=0)の差を見ると、

★ バイウィーク前より、休み明けの勝点が多かったのは →「10チーム」

★ 同じだったのは →「2チーム」

★ バイウィーク前より、勝点が少なかったのは →「18チーム」

というように、バイウィークによって、多くのチームは勢いがダウン・・・。

▼絶好調だったチームも・・・

一例を挙げると、バイウィーク前に6連勝をマークし、イースタン カンファレンスのトップを走っていた ワシントン キャピタルズの選手たちは、ファミリーを連れてバハマ旅行へ!

リゾート気分が抜け切らなかったのか、バイウィーク明けは連敗スタートとなってしまいました。

他チームが苦戦を強いられているのを知って、現役時代に日本リーグの得点王に輝いた実績を誇る、ロサンゼルス キンクズのダリル・サター ヘッドコーチも、バイウィーク明けの試合前には、「いつも以上に細かいことまで伝えた」と話していましたが、こちらも3連敗のスタートに。

一流の選手たちでも、ネジを巻き直すのに、時間がかかったのかもしれません。

▼バイウィークの代償は?

このような現状を顧みて、フロリダで開催中のGM会議に於いて、バッファロー セイバースのティム・マリーGMが、バイウィークの見直しを進言。

というのも、バイウィークの導入に加え、今季は開幕前に「ワールドカップ」も開催されたため、例年より遅くレギュラーシーズンがスタート。昨季に比べて12日も短い期間の中で、従来と同じ82試合を戦うスケジュールが組まれています。

しかも、その上に5日間の「中休み」が入るとあって、実際には昨季より「17日」も短くなったのに、試合数は変わらないため、疲労の蓄積が心配される終盤戦を迎え、選手たちのコンディションに影響が生じる可能性も!

それだけに、NHLが導入したバイウィークは、選手たちにとって「禁断の果実」だったのかもしれません。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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