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クックパッドが謝罪、不採用情報の漏洩

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
本日のクックパッドの謝罪リリース 2013/12/18
本日のクックパッドの謝罪リリース 2013/12/18

昨日、「以前クックパッドの入社試験を受けて、一次面接で落ちた。しかしその事を共通の知人に言いふらされた」という趣旨の情報がソーシャルメディアを経由して伝わってきた。

真偽のほどが確認できずに、これが真実ならば、東証一部上場企業でもあるクックパッドは情報を開示するはずだと思い静観していた。

すると、本日クックパッドのプレスルームページに情報が開示された。

https://info.cookpad.com/press/2013/1218

当社への応募情報の不当な開示に関して

昨日、過去に当社の面接を受けてくださった方から、当社社員に自身が不採用となった事実を第三者に不当に開示された、とのご指摘をいただきました。

事実確認いたしましたところ、約2年前に当社の面接を受けてくださったこの方と当該社員とが既知であり、ご指摘いただいたような情報を当時知人1名に開示したことを確認いたしました。

当社従業員が秘匿すべき情報を第三者に開示した事態を重く受け止め、当社としてこの方に対して直接謝罪申し上げました。

また、当社におきましては、当該社員を譴責処分にすると共に、二度とこのようなことないよう社員教育を再度徹底いたします。

このリリースには3点の問題点が潜んでいる。

【1】「約2年前に当社の面接を」 2年前に受験していることをさらに漏洩している

【2】「この方と当該社員とが既知であり」

【3】「当該社員を譴責処分にすると共に、二度とこのようなことないよう社員教育を再度徹底いたします」

問題点を解説すると…

【1】本人が「以前」と過去を明らかにしていない情報を2年前に受験していることをさらに情報漏えいさせているプレスリリースになっている点。

【2】しかし、この当該社員は、面接をした当該社員ではなく「面接の時にふらっと現れて「お、面接受けに来たんだ〜^^」みたいな。」と証言されている。また、クックパッドでは、面接の当該社員でなくても、面接結果を知る立場にあったということ。

【3】処分は始末書レベルの一番かるい譴責(けんせき)処分。

受験者の情報漏洩はその程度の処分と「社員教育を再度徹底」程度で良かったのだろうか?再発防止策などは必要ないのだろうか?

また、この2年間の間に同様の問題はなかったのだろうか?

クックパッドの個人情報保護方針の第2項にはこうある。

当社は、個人情報を大切に保護することを企業の重要な社会的使命と認識し、役員はじめ全従業者が個人情報保護に関する法規範を遵守し、次に示す当社基本方針を具現化するために、個人情報保護マネジメントシステムを構築し、常に社会的要請の変化に着目しつつ個人情報保護マネジメントシステムの継続的改善に全社を挙げて取り組むことを宣言いたします。

2.個人情報の利用にあたっては、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えた個人情報の取扱い(目的外利用)を行いません。また、目的外利用を行うことがないよう社内規程を作成し、従業者に社内規程を遵守させるよう監督に努めます。

https://info.cookpad.com/privacy_policy

この宣言は、宣言だけで終わってしまっているのだろうか?

クックパッドを不採用となったご本人に、twitter上でコメントを求めたところ。

「会社(クックパッド側)から正式な謝罪がもらえただけで僕は十分です」

と漏洩事件の終息コメントをいただけた。

さらに、クックパッドの広報部署から、下記の返事をいただいた。

【1】プレスリリースにて「約2年前」と表記していることは、更なる情報漏洩にならないかという点

→ご本人からも2年前とコメントされております。

【2】「当該社員」というのは面接担当者とは異なると思うが、なぜ面接内容を知っていたのかという点

→直接面接を行う社員以外にも、エンジニア選考時に一部エンジニアが関わる場合がございます。

【3】「譴責処分」は処分として最も軽いと言われる。本件のような採用に関する問題は、その程度の処分で良いのか。また、「社員教育を再度徹底」という点についても、もっと具体的な防止策を開示すべきではないかというご指摘

→ご意見として承りました。今後の社内での情報管理を徹底いたします。

【1】本人がすでに2年前と伝えていた事実が確認できたので問題なし。

【2】面接を行う場合に、当該エンジニアが参加していたのであれば問題ない。

【3】ご意見として承っていただいた。情報管理を徹底とのこと。

問題点についての一応の回答はクックパッド側から得られた。

ただ、企業コンプライアンスや、モラル面においても、「応募情報の漏洩」は一番センシティブでセンセーショナルな事項でもある。

今回の件は、ご本人と企業の間で和解が成立しているので、外野がこれ以上騒ぐ必要はないが、この問題に関しては、名指しで告発できる人が、非常に限られている点に留意したい。

今回の問題は、氷山の一角であり、たとえ隠蔽され、情報が共有されていたとしても応募者にはわからない。

各企業の人事担当者は、面接および面接に関わる現場の人に至るまで、応募者の情報の取り扱いに留意するのは当然であり、漏洩に関しては、対岸の火事ではなく、我が社の事と想定してみて再度確認を取られるべきであろう。

たった1人の告発、たった1人への漏洩だけで、ネット上でこれだけ話題になるのだから。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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