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WhatsAppの190億ドル(1兆9000億円)でお買い物をするとしたら…

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

WhatsAppのアプリを使ってはいるが、本当につまらないアプリだと思う。よほどLINEやKakaoやkikのほうがよほど良く出来ている。しかしだ。機能よりもメッセージアプリはユーザーとどれだけつながることができるかの方が重要だ。今回190億ドルの買収劇で一番旨味のあったのは、あのセコイアキャピタルだったようだ。800万ドル(8億円)のAラウンドから、数年に渡ってWhatsAppに計約6000万ドル(60億)を投資した。

SequoiaがWhatsAppの20%を保有していると仮定すると、今やその持ち分は現金および株式で30億ドル(3,000億円)の投資となる。60億円の投資もすごいけれども、50倍の3,000億円になってもどってくるのも凄い投資といえよう。5,000% のリターンだ。

オスプレイ1台は約62億円
オスプレイ1台は約62億円

たとえば、セコイア・キャピタルのWhatsAppへの60億円の投資は、米国のオスプレイ約1台分62億円 6,200万ドルと同額が、それが、facebookが買収したことにより、30億ドル 3,000億円になったそうだ。つまり、ステルス戦闘機であるB2スピリットになったわけだ。

1台3000億円のステルス戦闘機B2スピリット
1台3000億円のステルス戦闘機B2スピリット

しかしだ…。オスプレイがB2スピリットになってもあまり価値があがった感はボクらにはまったくない(笑)。

楽天が2012年に、Pinterestに出資した金額5,000万ドル(50億円)で、YouTube16億5000ドル(1650億円)が2006年であれば、2社分を買えたと表現してもいいかもしれない。YouTubeの2013年の広告収入は25億ドル(約2500億円)に達し初期投資のROIは1.5倍になる。投資をしたベンチャーキャピタルのセコイアでさえもそれだけの価値となった。だから当人たちはもっと凄い買い物ができるはずだ!当のWhatsApp,Inc.のジャン・コウム (Jan Koum) CEOとブライアン・アクトン (Brian Acton) は、5年間で190億ドル(1兆9,000億円)の価値を作ったことになる。

ソニーの時価総額1兆8488億円とほぼ同額だ。他にも、楽天やオリックスや日本電産、花王、クボタ、任天堂、あたりまではお買い物できる金額の買収劇だったのだ。

Brian Acton Jan Koum by Robert Gallagher
Brian Acton Jan Koum by Robert Gallagher

ジャン・コウム (Jan Koum) CEO(37)は、ウクライナのキエフ出身のユダヤ人。ウクライナの平均月収は800ドル。16歳でシリコンバレーへ移民。サンノゼ州立大学の夜間部に通い、ブライアン・アクトンと出会い、意気投合してYahoo!に就職、2007年同時に退社し、南アフリカで休暇をとった後にfacebook社を受けるが二人とも就職することができなかった。そして2009年にWhatsAppで起業。そして2014年190億ドルのイグジット!

http://www.forbes.com/sites/parmyolson/2014/02/19/exclusive-inside-story-how-jan-koum-built-whatsapp-into-facebooks-new-19-billion-baby/

また、新たなネット業界の有名人が誕生した。フェイスブックを受けて入社できなかったにもかかわらず、190億ドルで買われて、執行役員職に就くというまさに現代のおとぎ話のようなストーリーだ。実際に190億ドルあれば、日本の企業に限らず、海外では、映画会社やテレビ局や新聞社でさえも買えるのだ。ここからは、このWhatsAppの価値で何が買えたかの妄想大会だ。

  • ABCテレビならば、190億ドルでディズニーが1995年に買った金額と同等だ。
  • パラマウント映画ならば、99億ドルでバイアコムが1994年に買った額で1.9社分買える!
  • ピクサーならば、74億ドルでディズニーが2006年に買った額で2.5社分買える!
  • ユニバーサル映画ならば、65億9000万ドルで松下がMCAを1991年に買った額で、2.8社分買える!
  • ウォール・ストリート・ジャーナルならば、57億ドルで、ニューズコープが2007年に買った額で、3.3社分買える!
  • ルーカスフィルムならば、40億5000万ドルで、ディズニーが2012年に買った額で4.6社分買える!
  • ドリームワークスならば、16億ドルで、バイアコム傘下が2005年に買った額で11.8社分買える!
  • インスタグラムならば、10億ドルで、フェイスブックが2012年に買った額で19社分買える!
  • バイバーならば、9億ドルで、楽天が2014年に買った額で、21社分買える!
  • マイスペースならば、5億8000万ドルで、ニューズコープが2011年に売った額で、32.7社分買える!
  • ネクストコンピュータならば、4億2900万ドルで、アップルがジョブズから1996年に買った金額で44.2社分買える!
  • ワシントン・ポストならば、 2億5000万ドルで、ジェフ・ベゾスが2013年に買った金額で76社分買える!
  • スペインのバロセロナが契約したサッカー選手のネイマールならば、5700万ユーロ(74億円)なので、ネイマール25.6人分買える!なんと、ネイマールだけのサッカーチームを2チームを作ってまだ、2.3人ネイマールが余る計算だ。

これだけいろんなお買い物ができるけれども、WhatsAppを購入したfacebookの勝算はいかに?

あの会社はいくらで買えたのか比較より。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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