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ヤフージャパンの新会社、「Y!mobile (ワイモバイル)」に期待すること! #ymobile

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
新会社ワイモバイルはインターネットのキャリアとなるのか?
新会社ワイモバイルはインターネットのキャリアとなるのか?
2014年6月2日、新会社「ワイモバイル」が誕生する
2014年6月2日、新会社「ワイモバイル」が誕生する

2014/03/27/(木)のヤフージャパンが、イー・アクセスを3240億円でソフトバンクから買収して新会社設立をする話には度肝をぬかれた!

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140328-00000013-zdn_m-sci

記者会見の模様

http://www.ustream.tv/recorded/45414793

ヤフーのワイモバイルサイト

http://recommend.yahoo.co.jp/ymobile/

なんと、ヤフーがイー・アクセスとウィルコムをソフトバンクから買収して新会社という。いわば、ソフトバンクグループ内での、錬金術といってしまえばそれまでなのだが、そこには、日本のインターネットの「オムニチャネル化」の鍵が見えてくる。

社名でいうと、イー・アクセスは、矢沢永吉さんのCMやモバイルルーターで知られる「イーモバイル」の会社で、ウィルコムは佐々木希さんのCMや「誰とでも定額」のPHSの会社の生き残りと考えてもらえればいいだろう。

現在、イー・アクセスもウィルコムも現在は、ソフトバンクの傘下である。もちろん、ヤフーもソフトバンクの傘下グループである。基本的にはソフトバンクグループ内での社内還流に近い状況といえる。

しかし、ソフトバンクが直接キャリアとして、日本の携帯通信キャリア4位、5位を独占するのではなく、キャリア4位の会社がワイモバイルとして誕生するところに重要な意味がある。通信電波の割り当てがそこにからんでくるからだ。子会社から孫会社へと売却によって、縁が遠のいたからだ。

そして、ワイモバイルの出資会社は、ヤフーであり、ソフトバンクはヤフーの株式の実質44%の大株主である。そのヤフーが99.68%出資して合併会社「ワイモバイル」が誕生する(しかし、議決権の33.29%がミソ。 3/1の33.33%がないと拒否権がない)。いわば、ワイモバイルはソフトバンクから見れば孫会社にあたるが、ソフトバンクの議決権が行使できる孫会社であることに変わりはない。

では、なぜ、そんな社内グループ内企業人事異動を行う必要があったのだろうか?そこには、ソフトバンクという「大手通信キャリア」では、できないウルトラCがヤフーならば仕込めるからである。

大きな理由のひとつは、ヤフー傘下の、新たな通信キャリアの選択肢が登場するということ。モバイルルーターとしてのイー・アクセス、誰とでも定額の音声のウィルコム、ポータルサイトとしてのヤフーが融合することにより、新たなサービスが可能となる。

まずは、ソフトバンクがAppleとだけの蜜月は終わったといえども、手をひるがえして、Android端末をメインに売るにはリスクが多すぎる。ソフトバンクのiPhone販売のシェアは、MNPオセロゲームの恐怖に常に晒されているからだ。総務省のキャッシュバック規制などもあり、通信キャリアのスマホARPU課金の黄金のビジネスモデルは、ピーク時を超えてしまった。もはやSIMキャリアなどの低価格スマホ(イオンなどの参入)でビジネスモデルを変更せざるをえない状況にある。

そこに、ヤフーというネット広告の優等生(売上3,429億円2013年、時価総額2.8兆円)が、参入し、スマホという環境をショップと共に広げることにより、さらなるネット広告のシェアを拡大することは容易に創造できる。そう、ヤフーは広告を見てもらえる場を拡張することによって利益がでるからだ。

既存1,000万ユーザーに対して、Android端末を中心に展開することで、スマホにおける爆速経営をさらに加速し、広告の面と量を増やすこと。イー・アクセス2,000店舗、ウィルコム1,000店舗 一気に合計3,000店舗の日本中のリアル店舗のワイモバイルショップが誕生するのだ。※ソフトバンクショップは約8,000店舗。

あと2ヶ月で看板を「ワイモバイル」に取り替えるだけで開業できるのだ。街並みの景色も変わってみえてくることだろう。

脅威の収益力のヤフーがリアル店舗に参入するということ!

新たな携帯電話会社の登場というだけでは、驚くに値しない。しかし、ヤフーというネット専業のサービス会社が、リアル店舗という地上戦に参入することで意味は大きく変わってくることだろう。

ヤフーの収益源は、なんといっても売上3,429億円に占める、営業利益率が54.3%という高収益構造の広告ビジネス。広告セグメント利益(マーケティングソリューション事業)は売上2315億円/利益1,261億円。コマース関連の収入である「コンシューマ事業」売上1060億円/利益782億円。売上のほとんどが利益といっても過言ではない。

http://ir.yahoo.co.jp/jp/archives/present/

これが、ワイモバイルのリアル店舗で展開すると、単なる携帯ショップの誕生ではなく、「ヤフーの窓口」が誕生すると考えたほうが良いだろう。ワイモバイルは携帯を単に売る店ではなく、ワイモバイル携帯を配り、そこからサービスを販売し、広告を見せ続ける。携帯販売をきっかけとして、様々なワンストップショッピングの案内窓口となることだろう。

オークションにヤフーショッピング無料化。スマホを購入するか、「ヤフープレミアム」メンバーになるだけで、ヤフーのリアル店舗のサポートを受けながら、出店したり、落札したりがきっと可能になる。

携帯ショップというのは、常に満員というよりも、時期とノルマによるキャンペーンで繁忙期が大きく変わる。MNPや利益度外視のキャンペーンや、不要なオプションの押し売りと、もはや携帯電話ショップのセールスはハイエナ商売である(笑)。繁忙期以外は、閑古鳥が泣いているのである。人件費や土地代は閑古鳥がないていても、同様にかかる。ワイモバイルショップは、携帯の繁忙期に左右されない。常に顧客が行けば何か、プラスのメリットが提案できる。そして、それはヤフーを今だに駆使していない、ごくごく一般の人たちにネットの福音を伝導するミッションがある。

さらに、ヤフーのネット上で提供されるサービスは広告やコラボだけであったが、リアル店舗があることにより、そこでサービスの販売も定期的に直接販売も可能となってくるのだ。リアルな物流拠点にすることもできる。ネットサービスの超優良児が潤沢な予算と共に、真剣にリアルな店舗で営業活動を行うと、どうなるのか?

無料スマホ配布の時代がやってくる?駅前ヤフーBBモデムプレゼントの再来?

携帯は、恐るべき低価格。いや、もうスマホは無料で配布されてもおかしくないだろう。あのADSLのモデムを店舗もないのに、配布したのはヤフーBBだ。あれこそ、日本のインターネットのあけぼのだった。

その代わり、クレジットカードと紐付けれたヤフープレミアム会員になる。2年のしばりもなにもない。ポータルは、ヤフーに設定されているのだ。ニュースはもちろん、路線地図、外食クーポンに、映画、さらに保険にネット回線、引っ越しに、家探しと、まさに、「保険の窓口」ならぬ、「ヤフーの窓口」が日本国中で展開されるのである。

ヤフーショッピングの出品も商品を持ってくるとスタッフが撮影してくれたり、オークションも商品を持ってきてそれを梱包までやってくれたり…。

コストを回収できる店舗では、いろんな実験が日々くりかえされることだろう。

すべて、ネットでつながる店内では、インターネットに関するすべての「?」にお答えするというコンセプトのもとに、「ワイモバイル」が日本のスマホの中で爆速経営の狼煙をあげてもらいたいものだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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