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ファーストフード時給1500円、生活保護と比較してみた

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

※ 2014/05/16 17時33分 堀江様、サトウ様のご指摘により、ただいま、バックグラウンドで記事修正中です。※2014/05/16 18時33分太文字で修正ヶ所を記載しました。※タイトルを「生活保護と同等レベル」を「生活保護と比較してみた」と修正しました。

ファストフード業界の労働者に公正な賃金を求める取り組みが2014/05/15、世界規模で行われた。日本でも、ファストフード店で働く若者たちが東京・渋谷などで「(時給を)1500円にしてよ」などと書いたプラカードを掲げ、待遇改善を訴えた。

取り組みを呼びかけたのは米国の労組「SEIU」(全米サービス業従業員組合)。世界的な傾向として、業界で働く人の多くが若年者で、低賃金が貧困を生んでいる

http://mainichi.jp/select/news/20140516k0000m040030000c.html

時給1500円は高額バイト?

時給1,500円と聞くと、高額バイトのように聞こえるが、実際にそれで非正規雇用としてフルタイムで働いたとしよう。

1日8時間働いて、日給 1万2,000円

20日間働いて、月給24万円

12ヶ月で、年俸288万円

非正規社員でバイトなのでボーナスなし、税金をひかれると230万円ほど。

家賃5万円でも▲年間60万円

家賃を引くと、実質年間で170万円だ。

すると、やりくりできる生活費は、一ヶ月あたり14万1,600円

30日間で、1日あたり、4,720円となる。

生活保護の受給費と比較してみた

一方、本来、比較すべき対象ではないが、東京都の場合の生活保護給付で調べてみた。

生活扶助の支給額は、20~40歳で、8万3,700円(40,270円+43,430円)

家賃扶助分が、5万3,700円まで

合計すると、13万7,400円となる。

当然、税金や医療費などはかからないから、これがNetでの生活費となる。

30日間で、1日あたり、4,580円となる。

'''※この部分、生活保護費には、家賃が含まれているので、時給1,500円と同様に家賃分を抜くと、

30日間で、1日あたり、2,790円(8万3,700円÷30日)となる。'''

20日間労働だと、1日あたり6,870円で、時給にして考えると858.75円となる。

現在、東京都の最低時給は、869円である(平成25年2013年10月より)のは、このあたりを計算しているのだろう。

しかし、税金・地方税や医療費、NHK、国民年金、そして家賃がかからない生活保護受給者のほうが、実質的には、ネットでの生活費は高くなる。

時給1,500円でも1日あたり 4,720円、生活保護でも1日あたり、4,580円(13万7,400円÷30日)となる。

※この比較(↑)を修正いたします。以下、太字部分を訂正(↓)

'''時給1,500円でも1日あたり 4,720円、生活保護でも1日あたり2,790円(8万3,700円÷30日)となる。

時給1,500円と、生活保護の差は、1930円と変わる。

月間にして、5万7,900円の差となる。'''

これだけの差があれば、セーフティーネットとしての生活保護の世話にならずに生きていくことができる。すると、税金の投入も少なくなる。時給を1,500円にすると、生活保護の傘の下にいる人達も、働ける可能性だってでてくることだろう。

最低時給を1500円で法律で定める法案を考えるのもひとつの方法だ。

もしくは、収入に合わせて、家賃を補助をするかだ。

そうしないと、生活保護が増える方向でしかなくなる。

では、実際に最低時給を1500円で制度化するとどうなるのか?

法律で最低時給を1,500円にしてみる

いい事例がオーストラリアにある。

オーストラリアでは最低時給が、15.51ドルだ(1豪ドル95円で、1,473円)。2011年6月から法律で制度化されたのだ。

どんなバイトでも、最低時給が15.51ドルとなっている。そこが最低だから、少しいい人材が必要な職業となると、レストランなどでは20ドルくらいになる。日本のレストランで時給1,900円はまず見かけることがない。

当然、レストランなどのコストは高くなる。又、それで経営できる店しか残れない。中途半端な経営者では経営できないそれだけシビアな経営が要求される。もちろん、サービスクオリティーも高くなる。

しかし、それはそれで、レストランに行った時には贅沢する。中途半端なレストランにいく位ならば、自宅で食材を買ってパーティーをするなどあらたな消費スタイルを生む。

むしろ、280円で牛丼が食べられるのは、人件費が生活保護以下で回されているから成立している価格だと考えたほうがいい。デフレはさらにデフレを生む。インフレが良いともいえないが、デフレよりはましと考える。

日本ほど外食レストランが豊かな国は他にない。2,000種類もあるのだ。うどんだけでも、讃岐に、カレーに…。肉うどんに…。立ち食いに…。

自炊するよりも、安い外食チェーンにファーストフードや、居酒屋は、本来ありえないのだ。焼肉屋チェーンなんて、原材料よりも安い。むしろ、外食レストランや、ファーストフードが、人材に金をかける事によって、本来の価値を取り戻すのではないだろうか?

サービスの価格を下げてのデフレ勝負よりも、生活者の最低ラインを引き上げることによる経済効果を生むことが必須だ。たった一人の生活保護者が増えると、その人の税収がなくなるばかりか、数十人分の税収が目減りしてしまう。

そのためには、最低時給を制度化するしかないのだ。

生活保護の受給費、家賃扶助、税、医療費免除などと同程度を考えると、時給1500円が実は最低ラインである。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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