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#27時間テレビ SMAPに頼りきりだった番組仕立て

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

2014/07/26-27 のFNSの27時間テレビを視聴した。…とはいっても、前半と後半と時々の視聴だった。

印象に残ったのは、やはり、なぜFNS(フジ系列ネットワーク)が、このような番組をやるのか?という疑問だった。

NTVの「24時間愛は地球を救う」は、テレビで募金というメッセージ性もあるし、あのロゴがはいった介護自動車を見かけるということもあるので当初の意味があった。しかし、出演者のギャラとかが発生しているお話があがるたびに、なんだかテレビに踊らされている感が増してきた。

そして、このFNSの27時間テレビの場合、すべて生放送(一部、サザエさんバージョンの録画あり)での展開だ。もちろん、労働基準法違反でもあり、いくらタレントといえども人権侵害といえなくもない。過去のMCにもそれは当てはまるだろう。

それでも、24時間テレビよりも3時間分、過酷な27時間テレビ。テレビ局にとっては、通常の番組制作シフトよりも異例のシフトを組むことよっての結束が固められるチャンスでもあろう。分業化が進めば進むほど、年に一度のお祭り騒ぎのような「仕事」で士気をあおる必要性はある。

しかし、もはや国民的タレントであるSMAPのメンバーが、この番組を担当するメリットは、何があったのだろうか?知名度もあるし、個々が活躍する芸能分野も確立されている。トラブルが起きて、怪我でもされたら大変なところだ。

しかし、「テレビが武器」という今回のメッセージは、もはやエンタメ業界が、吉本のお笑いとジャニーズ、AKBとEXILEという寡占状態に席巻されていることを証明するにしか値しなかったようにしかおもえない。

SMAPのメンバーの27年間にわたる芸能活動は、個々のパーソナリティさえもテレビに浮き彫りにされてきた。メンバーの事故や事件も周知のことだ。それらのネタも小出しにしながらも、5人の結束の硬さを27時間テレビは証明してくれた。

25時間過ぎたあたりのSMAPのメンバーの疲弊ぶりは想像を絶した。45分間にわたる27曲メドレーは、単なるコンサートであれば一部のファンのためのものだろう。しかし、25時間、丸一日完徹のあとのフィナーレとしてはあまりにも、過酷だ。

13曲目、リーダー中居さんは、ステージ下手に腰を落としてしまった。カメラはそれをズームインであおった。普通、そこはカメラでは抜かないでスルーところだ。それはまるでハプニングを期待しているかのような視点であった。

SMAPの楽曲をこうやってメドレーで聞いてみると、難しい楽曲が多いことがよくわかる。しかし、5人全員がユニゾンで唱うと、なぜかSMAPにしか出せない強烈な個性あるハーモニーとなる。今や、唄の巧いグループはたくさんいる。SMAPは、アイドルという中で育ってきた、いや日本のメディアを介して国民が育ててきたアイドルだ。しかも40代を超え始めた国民アイドルだ。

リーダーの中居さんは、倒れるまでリーダー役を担うのではなく、リーダーであってもメンバーの信頼を得ているから、自分のペースで休ませてもらわなければならないことを判断した。同時間帯のNHK「軍師官兵衛」では、中国大返しで妻の顔も息子の顔も見ないジャニーズの岡田准一のリーダーとしての苦悩が描かれていたのが対照的だった。

中居氏は、健康管理と自己管理のまずさを謝罪しながらも、実に人間らしいコメントを残す。ズタズタになりながらも、人間SMAPを見事に演じきったと思う。

かつてのメンバーであった森且行さんからのメッセージをイヤモニターで聞きながらの歩かされるシーンが最後のハイライトだ。テレビ局側の「泣かせ」の演出の極みだった。カメラの画角の構成も念入りだ。しかし、SMAPは、そんなテレビ側の期待を理解しながらも、決して大げさな芝居をしなかった。テレビ、お茶の間、そしてメンバー同志との立場を理解した上での、非常に薄いリアクションをそれぞれの個性で取っただけで終わった。

むしろ、その方が当たり前の感動を表現してくれた。テレビはもはや感動を拡張表現するメディアではなく、等身大で伝えることができるメディアであることを実感させてくれた。それはテレビではなく、SMAPのメンバーが見せてくれたのだ。

ラスト15秒のカンペの中で、MC中居さんは、最後の27時間テレビを、時間をあまらせることも、足りなくならせることもなく0.5秒の間で見事に終えた。

たった1秒の重みを知っているまさにテレビの職人だった。いま、必要なのは、タレントにおんぶにだっこになっている、テレビ局側の問題ではないだろうか?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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