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なぜ?銀座のアップルストア前にホームレス風の人が行列するのか?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です。

毎年、秋の風物詩ともいえるような、アップルの新製品発売の行列。

2014年の秋は、各社がネット予約を取り入れ、店頭でさえも、ネット予約を口頭で説明しながら行うという仕組みへと変化した。

そこで変化するのが行列の意味だ。アップル製品を最初に手に入れたくて行列に並ぶというのは、単に商品やモノを購入するのではなく、自分の愛着ある製品へのイニシエーション儀礼でもあるのだ。一緒に並ぶ人たちと感動のゴールへ向かう。いわば、マラソンやアイアンマンレースに共通するストイックささえもある。

その行列を見て、なんで「スマホ」ごときで行列…と思っている人との対比の構造がメディアとして取り上げてきてこられた。

写真提供:ITジャーナリスト三上洋氏
写真提供:ITジャーナリスト三上洋氏

SIMロックフリー端末が生んだ異質・異例な行列

しかし、今年はかなりその「行列」が異質になってきていることはすでにネット上で拡散されている。

Appleストア銀座の行列がホームレスの溜まり場に・・・中国人バイヤーによるiPhone6の買い占めか。

の声があがりだした…。

あくまでも、予測での中国人バイヤー&ホームレスという断定はよくないが、その可能性は低くはない。

今回の世界で発売される2014年9月19日のリストに、中国は入っていない。日本も最初のiPhoneではなく、iPhone3Gという2世代目からの発売だったから世界によって発売時期は調整される。

しかし、SIMロックフリー端末の需要がある中国では、今回、日本ではじめて新製品発売時に通信キャリア端末と同じ解禁日に販売されるシムロックフリー端末は、とても魅力のある端末である。

そして、今回は為替の関係もあり、アメリカで販売される価格や香港で販売される価格と比較しても、SIMフリー端末に関しては、日本が安くなる傾向がでてきた要因もさらになんとしてでも入手したいニーズを生んだ。

今までは、香港のSIMフリー端末を購買し、SIMカードを国内調達するというインバウンド(輸入)が主流だったのが、今年は、世界に向けて日本国内からiPhone6/6Plusをアウトバウンド(輸出)しようとする流れだ。

おそらく、朝になれば、ホームレス風の人たちの列は、計画的に組織化された人たちと引き継ぎが行われ、いなくなることだろう。そして、交代となった組織の人たちが、現金もしくはクレジットカードで無事に購買されていくことだろう。そして、そのまま、中国方面への富裕層にジェット便で運ばれることが安易に想像できる。日本の欲しがるユーザーが日本で手にすることができないというケースとなる。

すでに下取り価格は2.5万円上乗せ!

実際に下取り購買に関する怪文書も配布されているくらいだ。

iPhone6Plus の日本正規価格は、SIMフリー版は、

16GB 79,800円 64GB 89,800円 128GB 99,800円

怪文書の買取価格は、

16GB 105,000円 64GB 115,000円 128GB 125,000円と、日本発売のSIMロックフリー端末には、約2.5万円ほどのプレミアで下取りがなされるということとなる。さらに黒(シルバーグレイ)であれば5,000円増しで、複数台があれば買取額をあげるという。中国はゴールドを欲しがるイメージだったのだが…。

年内に発売されるかどうかわからないアジアの国では、さらに、これが転売市場でおそらく日本よりも、5〜6万円高い端末として、闊歩することになるのであろう。当然、未発売の端末でステイタスとしては、一番のものとなるだろう。

日本のアップルでも、

「iPhoneは、直接的、間接的に日本国外に輸出する目的で購入することはできません」

http://www.apple.com/jp/legal/sales_policies/retail.html

とあるが、それが、法律に触れる行為であることの指摘もなく、購買時点でそれが確認できないので、注意警鐘をならすことには至っていない。

グローバル国際調達競走にまきこまれた日本の姿

今回の行列に関する行列で感じたことがある。

今までSIMロックで守られていたのは、まるで関税障壁のあった日本であり、SIMロックフリー端末の解禁はTPPであり、一気に国際調達競走にアップルストアは、巻き込まれてしまった構図に見えてしかたがない。

内外価格差と販売時期の時差で、中国工場から海を渡って日本に来た、iPhoneが、さらにブラックな付加価値をつけてお里帰りするわけだ。そして、そこのブラックマーケットでは、日本の徹夜して並んで働くという末端価格での労働市場が投入されている。

ハローワークのネットワークよりも、即日ですぐに徴収させ、並ばせるという組織力を、外国人が活用しているのだ。

また、神聖な行列を汚された思いで並ぶアップルマニアの声も多く見られる。転売目的の外国人やホームレス風の人たちと一緒に行列をするとは思っても見なかったからだ。

楽しい期待へのイベント行列が、国際調達競走に、まさに突然まきこまれた構図といえよう。

しかし、これは、現在の日本の近未来の縮図に非常に近いと感じた。隣をみれば、アジア人たちが見知らぬ外国語で話すダイバーシティの日本になるのは目に見えている。少子化がさらに進んだ50年後には、日本語を話している人がマイノリティーになっていてもおかしくない時代だ。

いろんな人種や国籍や宗教、職業、失業者と共存していく国に、労働人口が枯渇している日本はならざるを得ない。そんな日本になるのを指を加えて見ている場合ではないと、この行列の異変でさらに感じた。

「そう、子供を作ろう!」それがすべての日本の解決ソリューションだと思う。

それを阻害する要因を、全力で崩していくべきなんではないだろうか?子供が成人し社会にインパクトを与えるまでに約30年はかかる。来年動いても、インパクトは、2045年という長い長いレースである。

行列は本日で終わる。しかし、この風物詩も今年が最後になるのかもしれない。古き良きニッポンであり続けていてもらいたい。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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