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U2の最新アルバムが無料でもいらない人たちへ

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

アップルのiPhone6やApple WATCH発表の際に、アップルのティム・クックCEOが直々に紹介したのが、ベテランロックバンドのU2。そして、最新アルバムの無料ダウンロードというプレゼントであった。

「音楽史上、過去最大規模のアルバムリリース」

2014年09月10日は、世界のiTunesユーザー5億人へ向けての無料大プロモーションとなった。

その6日後には、3,300万人以上がダウンロードしたとアップルが発表

つまり、5億人iTunesユーザーの、6.6%がダウンロードしたということとなる。

3,300万ダウンロードは、驚異的なダウンロード数ではあるが、U2の新アルバムが無料であるにもかかわらず、ユーザー全体のたったの6.6%のシェアとなるとそれほどでもない気がしてくる。

今回、アップルは、U2側に1億ドル(約100億円)のCMも含めて音楽配信に関するマーケティング契約を行った。別途、音楽ロイヤリティをU2の属するユニバーサルミュージックとU2側に支払う。これらの契約は、U2のバンドマネージャー、ガイ・オセアリー(2013年より)が契約をまとめた。オセアリー氏は、マドンナがワーナーからライブ・ネイションへ移籍する際のマナージメントパートナー。また、U2のマネージメント会社「プリンシプル・マネジメント」もバンドネイションによる3,000 万ドル(30億円)超の買収によってライブ・ネイションの管理下となっている。

ライブネイションは、2005年設立のイベント会社だったが、マドンナ(2007年より)の10年を契機に、U2(2008年より12年間)を抱えるようになった。ツアーのマネージメントから関連商品にライセンシーまで包括契約で結び、チケット販売大手のチケットマスターとも統合(2009年より)し、世界の音楽産業を今や牽引している。

つまり、音楽CD(かつてはレコード)を販売するという従来のビジネスモデルから、ダウンロード配信(無料配信もふくめて)や、ライブ・ツアー、さらにアーティストのライセンス商品やファンクラブ運営、そしてチケット販売に至るまで、すべてに関与するというビジネスモデルを築いている。音楽を単に聞かせるというよりもイベントを主体とした興行ビジネスへと変化しているともいえるだろう。

今回、アップルの5億人ユーザーへ向けての無料ダウンロードのプロモーションは、2014年10月14日(火)のU2の公式盤リリースに向けての一大プロモーションの一環とも言える。

さらに、アップルがU2と「新フォーマット」を開発という噂も浮上してきた(2014/09/18)。

「Bono氏はTimeに対し、開発中の新しいデジタル音楽フォーマットは、音楽ファンにとってたまらなく魅力的なものになり、彼らを再び、楽曲単位のみに限らずアルバム全体でも音楽を買おうという気持ちにさせるだろうと語った」

出典:アップルとU2、新たなデジタル楽曲フォーマットを開発中か--TIME

一曲あたりのダウンロードのピン買いや、月額定額聴き放題となった音楽ビジネス。そこに再度、アルバム買いを促進させるというのが「新フォーマット」だとU2のボーカル、ボノ氏が語っている。一番単純に予測しやすいのは、新フォーマットが、2014年10月14日(火)のお披露目が濃厚だろう。

その日以降に、アルバムを聞くと何かの変化がもたらされているのでは?と期待したい。

それを証拠に、アップルは、U2の新譜をダウンロードを選択したユーザーだけでなく、すべてのユーザーにも、U2の最新アルバムをダウンロードさせたからだ。

アップルが、U2のアルバムの削除ボタンを掲載

しかし、このかつてない音楽史上初の全曲公式リリース前の大プロモーションも、iCloudの機能を有効にしていたユーザーには、U2のアルバムは、まるでSPAMのように送りつけられた形となった。

U2を知らないユーザー層にとっては、アルバム全曲が、突然配信されても困惑するという声がでてきた。容量が少なかったり、回線を圧迫することもある。

いくら国民的バンドと言われても、彼らにとっては、ベンチャーズ美空ひばりさんのフルアルバムが突然送られてきても困るという状況だったのかもしれない。U2は、1976年デビューなので、今年ですでに40年目のベテランバンドなのだ。

「U2って誰?」「誰がわたしのアイチューンズにU2を入れたの?」「悪い冗談だろ」「削除してくれよ」「こんなのいらない」

無料配信以降、利用者の一部はネット上にこんな不満をぶつけた。音楽業界に詳しいボブ・レフセッツ氏は「聴きたくもない曲を勝手に端末に入れられて、これほど頭に来ることはない」とブログに書き込んだ。

出典:U2って誰だよ…無料配信に苦情殺到 「削除してくれよ」「こんなのいらない」

さらに、まずかったのが、

ライブラリから削除したいユーザーも多かったが、一旦ダウンロードしてしまうと、iTunes Matchという有料サービス(年間3980円)を利用していないと、iCloudから削除できない仕組みになっていたからだ。

アップルにU2の最新アルバム削除ページが急遽登場
アップルにU2の最新アルバム削除ページが急遽登場

そして、アップルは急遽、「アルバムを削除する」ボタンを掲載し対応せざるをえなかった(2014/09/15)

https://buy.itunes.apple.com/WebObjects/MZFinance.woa/wa/offerOptOut

そして、U2のボノ氏は、この件について、BBCのラジオで気の利いたコメントを寄せている。

「削除したいって人達もいる。でも、この5年間でU2以上にU2の曲を削除した人はいないよ。これだけ多くの人達が曲を聴いてくれた。それには本当にワクワクする。僕が言えるのは、このジャンク・メールの中には血と涙と汗が詰まってるってことだけだ」

出典:賛否両論の無料配信に、U2「騒ぎを起こすのが僕らの役目」

そう、iPodのCMでU2の「Vertigo」が流れていたのも知らない人も多くなったのだろう(2004年であれから10年も経過した)。音楽産業全体が、アーティストも含めて老齢化しているのだ。いまや、日本に来る海外ロックアーティストがすべて60歳を超えているとかの時代だ(笑)

音楽そのものが、70年代、80年代が、今だに聴き継がれている。

MP3の海賊ミュージックを、アップルがiTunes Music Storeで守り、iPodで何千曲も持ち歩けるようになった。

iTunes Matchでは、手持ちの曲をすべてiCloud上に有償(年間3,980円)で管理できるようになり、何万曲もが自分のデバイスで聞けるようになった。

一方、今後は、24ビット/96kのハイレゾ音源配信という方向に行くのか?または、「新フォーマット」であたかも、スタジオ盤と限定ライブ盤を同時に楽しめるような、ライブに参加した人だけの特別フォーマットが登場したりするのだろうか?

ライブ・ネイションの影響が強ければ、そんなライブ・イベント参加者特典は考えているはずだと思う。

U2の最新アルバムを削除するのは、削除ボタンたったワンクリックだけど、2014年10月14日(火)の後からでもいいような気がする。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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