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アップル最新OSヨセミテはヨウスミテ

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

ヨセミテへの無料アップグレード開始!
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アップルが、2015 Q1第1四半期(9〜12月)、今世紀最高の売上を叩きだしたいのが目に見えているような発表が行われた。本日、未明に、アップルはiPad Air2 iPad mini3 最新OS X10.10のヨセミテの発表を行った。

ボクはスマホやタブレットはスペックよりもサイズ対重量比率対決の時代に入っていると考えている。持ち歩くからには、持ち安さの重量デザインは重要だ。しかし、すでに成熟した製品カテゴリーとなり、差別化が生みにくくなった製品群でもある。

iPad miniや、iPad Airなどは、ジョブズのiPad哲学では、完全否定されたサイズのものだが、このサイズは、ユーザーの声やAndoroidのマーケティングが生み出した産物といえよう。アップルという会社はアップルストアなどでユーザーの声を聞いて製品に反映するが、ユーザーのいう通りには決して作ってこなかった。ユーザーの声の裏側の心理に真理を見い出す企業であったからだ。

最新OSヨセミテ10.10は、なぜケタあがりできないのか?

デベロッパーのヨセミテへの開発は、順調に進んでいるはずだろう。すでにデベロッパーは、ヨセミテのベータバージョンを駆使して新たな感動あるソフトウェアやiOS8のアプリを開発しているのだから…。

しかし、デベロッパーから狂喜乱舞するような製品のリリースがまったくこないではないか…。なぜだ?

それは今度のOSヨセミテの、アップデートが、アップルにとってのマイナーアップデートでしかないからではないだろうか?

まず、ボクがティム・クックならば、10.10ではなく、[OS XI (11)]のメジャー版まで待ち、OS X9.9を細かいナンバーで区切ってマイナーアップデートしているだろう。マイクロソフトとちがって無料でOSを配布するんだから気にするところではない。どうしてもケタ上がりさせられない理由のひとつに、OS XとiOSとの統合化があるからだとiPhoneが2007年に誕生した日から夢を見続けている。それがアップル最大の狙いだろう。

なので、そのOS XI こそが、アップルにとっての最大の目標だと思う。その頃には、Google並に人間行動データがApple WATCHによって集積されているだろうし…。…と、未来予測話はここまでだ…。

最新OSヨセミテ10.10はアップルのためのアップル化OSなのでは…

WWDCでの、ヨセミテの発表はそれなりに楽しめた。しかし、iOS8と同時リリースできなかったところから、iCloudとの連動が怪しまれてきだした。iOS7からのアップデート組は、iCloudとの連携に悩まされた。なによりも、iPhoneが見当たらなくて、iPhoneを探すを稼働させると…

ヨセミテがないとiPhoneが探せない!
ヨセミテがないとiPhoneが探せない!

のようなアラートが出現したのだ。この時期に盗難にあった人は、ヨセミテが登場してきてホッとしていることだろう。

ヨセミテの新機能を見て素晴らしい!と反応したものの、すでに既視感のあることばかりだ…。

Safariでの検索は、すでにグーグルChromeで数年も前から使っているし、サードパーティーのプラグインでいろんな事が実現できSafariには二度と戻れないほどの経験を得てしまっている。マップもカレンダーもメールもすでに、グーグルでまったく問題がなくなった。逆にアップル純正品に連携させようとするといろんな仲介をさせる必要があるくらいだ。Spotlightにしても、Wikipedia、Bing、iTunesをわざわざSpotlightで検索するのだろうか?Bingを使うくらいならば、普通ググるだろう(笑)。MailDropもiCloud Driveも、すでにEvernoteやDropboxで解決済みである。特に、Messageなどは、LINEやfacebookで間に合っていないか?

問題なのは、ヨセミテの素晴らしさは、アップルのアプリを引き立てることに全能力を注ぎ込んでいることにないか?。アップル製品のみならず、アプリケーションもすべてアップルネイティブな純正品だけを使用するにはまったく問題がない。しかし、すこしでも、他の非純正サービス・アプリやサービスを使い込んでいる人にとってはあまり福音のように思えないのだ。

アップルはプラットフォーマーなのかメーカーなのか?

アップルの良い所は、たくさんあり、ユーザーに最高の環境を提供しようとしていることもよくわかる。しかし、それらの対応が、常に周回遅れになってしまっている。Androidの後追い機能も目立ってきた。また、それが、GoogleやAmazonに対しての排他的ライバル意識の現れでもあろう。

プラットフォーマーでありながら、抱え込みアプリやサービスを、あまりにもOSレベルで、ご寵愛するにもほどがあると感じる。かつてのマイクロソフトが、Windows95でのブラウザのIEを普及させた時のGUI猿マネOSのようにさえも見えてくるのだ。

ハードウェアメーカーであり、アプリ&コンテンツマーケットのプロットフォーマーならば、フラットデザインを踏襲するだけでなく、レギュレーションも常にフラットであるべきではないだろうか?

今、おそらく、アップルがSurfaceRTをアップルサービスだけで作れば完璧なものができるだろう。

しかしアップルには、LINEもなければ、facebookもtwitterもない。ようやくiOS8とヨセミテの連携で、Skype同様に外界へ、Macから電話(しかも通信キャリア回線)をiPhoneを経由してかけられるようになったのだ。かつてのMacintoshは[テレサーチ104]というソフトで104の番号調べさえNTTのオペレーターを呼び出さずに格安で出来たのに(笑)

そして誰もいなくなった…

そう、デベロッパーの介在が少なくなり、アプリ制作者という個人がアップルのプログラムのプラットフォーマーとなっている。すでにMac開発の大手といえば、iPhoneケースやアクセサリーだけになってしまっている。クラリスがいなくなり、クラリスワークスがなくなった。そしてマイクロソフトのOfficeのみとなった。オフィスから離れたかと思えば蜜月は続く…。しかし、3年前のOffice2011が最新版だ。PagesもNumberもKeynoteも秀逸だが、メールで添付すると開封できないと社会から怒られる。ハイエンドの映像編集だったFinalCutProは、iMovieProとなり(笑)、さまざまなスロットカードで対応していたバカえでかいMacProは、プロ用カードがさせないゴミ箱ボディ化してしまった。

まさに、これからのティム・クックの舵取りが重要だ。デベロッパーがいなくなり、清濁あわせ持つAndroidアプリに対して、ディズニーランド的倫理観でのアップル・プロプライエタリ的発想のプラットフォーム。

それはCPU開発から、ハードウェアとOSとの絶妙なチューニングによって生まれるアップルの環境の心地よさの裏返しだ。しかし、その上に走るアプリ環境が閉じられていけばいくほど、ユーザーは至高のエクスタシーと共に、死ぬまで連れ添う覚悟が必要だ。そう、アップルはマーケティング要素ではなく、技術で魅せる企業でなければならないはずだ。「伽藍とバザール」の伽藍になっては意味がない。

今のボクに、誰よりも先に、ヨセミテを急いでインストールする必要性はどこにもない。当然、新たなOSには不具合の危険性は十分にある。しかし、今までのアップルのMacintosh OSには、そんな危険を冒してでも、インストールしたくなるほどの麻薬のような魔性が宿っていた。そのOSを入れたあとのマシンの快感を一日も早く体感したかったからだ。

ヨセミテにはその魔性を感じることが残念ながらできない。GoogleやSNSで代替する生活を一からアップルのみにする勇気も持ちあわせてもいなくなってしまった。他でできることをアップルでやる必要性を感じていないからだ。他でできないことをやれるアップルでないと…しかし、来年には、AppleWATCHが人間の行動を初めて総合的に、客観的に分析できるようになる。ヨセミテとiOS8が、その出発点になることは間違いはない。

今日は、ヨセミテのインストールはヨウスミテとすることにした。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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