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720万円のクルマは買えなくても520万円なら買えるヒトに国が200万円タダであげるという話

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

12月に発売されるFCV「MIRAI(ミライ)」の価格は消費税込みで700万円を超えるが、国が202万円の補助金を出し、次世代エコカーの普及を後押しする。

出典:トヨタ燃料電池車、実質520万円 国が200万円補助

720万円のクルマは買えなくても520万円なら買えるヒトに、国が200万円もタダであげてしまうという話

経産省主導の次世代エコカーによる経済政策だけれども、儲かるのはユーザーでなく、企業であるトヨタだ。

もちろんトヨタが儲かれば、愛知県の地場産業に、また、サプライチェーンに加盟している雇用者にとっては景気は、改善するかもしれない。

しかし、それが日本のGDPを押し上げたように見えても、国の拠出した金をGDPに組み入れてインパクトをみせても、何の意味もないだろう。

もちろんトヨタの短信をみると国の支援を必要とする企業かどうかは明確にわかる(笑)。

http://www.toyota.co.jp/jpn/investors/financial_results/

720万円のクルマは買えなくても520万円なら買えるという富裕層に、国が200万円もタダであげてしまうという話はないだろう。

次世代エコカーの燃料電池自動車「FCV(FrelCellVehicle)」の初期投入児期は、高くても当然なのだ。

むしろ、高いからこそ好事家やアーリーアダプターの価値があるのだ。エコで資源が節約できるクルマが高いからこそ欲しくなるのだ。

一般に普及するのは、値段が普及帯におちてからだ。だから、数年いや数十年かかる。

むしろ、トヨタには好調な海外での頑張ってもらうべきだろう。自動車間での関税面での優遇で調整できるのかもしれない。

一台のクルマにポンと、200万円を無料であげてしまうという次世代エコカーの予算普及の付け方も問題だろう。

自動車産業の政策も重要だが、賞金ベタ付けのキャンペーンは、キャンペーンが無い時には売れなくなるという経験を、家電エコポイントで経産省は学んでいたのではないだろうか?

あのエコポイント制度導入で、日本のテレビディスプレイ産業は死んだも同然だった。

シャープがソニーが、パイオニアが…。死屍累々となってしまった。

補助金がないと売れない商品は、補助金が終わると売れなくなることをもっと自覚すべきだ。

それと、100万円のクルマで困っている人がたくさんいる。その人たちを補助するほうが国としては最優先課題ではないだろうか?

トヨタ自動車の2014年4~9月期は、本業のもうけを示す連結営業利益(米国会計基準)が1兆3千億円程度に膨らみ、4~9月期として過去最高を更新したようだ。

http://www.nikkei.com/article/DGKDASGD23H22_T21C14A0MM8000/

http://www.asahi.com/articles/ASG516KW8G51OIPE034.html

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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