10万円リゾートから100万円マンションまで…粗大ゴミ化する負動産
KNNポール神田です!
もしかすると、これからは不動産は資産ではなくリスクのある負動産なのかもしれないと思いはじめてしまった…。
長年、マイホームのローンを払ってきた人間としては、非常にショッキングなニュースだ。都心以外のマンションを不動産として所有するのは、もはやナンセンスどころか土地と建物の呪縛でしかないのかもしれない。日本において住宅が明らかに供給過剰に陥っているからだ。人口が都心部から郊外に流出するドーナツ化現象が逆転するように、都心部の外周から不動産相場が崩壊する“逆ドーナツ化現象”だ。
総務省が5年ごとに行っている住宅・土地調査によれば、2013年の住宅全国総数6,063万戸のうち820万戸が空き家で、空き家率は13.5%と過去最高を更新。空き家率20%を超えるのも時間の問題。野村総合研究所の試算によれば、2003年と同じ住宅着工件数・減失件数が続いた場合、2040年(2015年から25年後)には空き家率が43%にも達する。日本の総人口は2008年から減少に転じ、ここ数年は毎年26万人という中規模都市と同じだけの人口が減少し続けている。2015年からは世帯数の減少も始まるとみられている。団塊の世代が本格的に老人介護施設やサービス付き高齢者向け住宅に入所する頃には街中空き家だらけの状態に陥ることは、もはや誰の目にも明らかだろう。
さらに、今のうちに販売しておきたいという人が増えれば増えるほど、不動産の投げ売り気運が高まり、不動産価格は下がる。最近は、不動産の個人間売買をサポートした販売仲介も増えてきた。かつての仲介は、「両手(売主からも借り主からも手数料収入)」だった業界だが、「片手」でさらに「消費税8%」のうちに…という心理も働く。
また、マンションは所有していても管理費・修繕積立金に固定資産税などのコストは当然かかる。戸建てにしても定期的な修繕費は必要だ。180万円の公団マンションの場合、管理費・修繕積立金だけで毎月約2万円かかることを考えれば、同種の部屋を家賃3~4万円で借りたほうがトクなのは間違いない。空き部屋は年々増える一方だから、更新ごとに安い部屋に越していけば、それも可能だろう。頭金に500万円出し、さらに毎月10万円の住宅ローンを35年間払い続ける生活と比べて、どちらが豊かかイメージしてみてほしい。いくら「素晴らしい家」を手に入れても、可処分所得が低いカツカツの生活では、楽しさも半減するだろう。その分のお金で家族旅行でもしたほうが楽しいではないか。300万円の別荘を買って維持に苦労するより、一泊1万円の旅館に300泊したほうがお得なのではないだろうか。
まさしく、そのとおりだと思う。地方のマイホームをすでに売却し、賃貸生活で、「持つ物の不安から持たざる物の余裕」へと変化した。さらにシェアハウス暮らしとなると、家財や家電、家具、キッチン、リビングに至るまでシェアする感覚となるので所有欲はとことん薄れる。むしろ個人では買えないようなものも利用できる権利が持てる。クルマなどは、タクシーとレンタカーさえあればいい。クルマを所有していても乗車している時間は24時間のうち、3%にも満たないのだ。その間、海外のようにUberで稼げればよいが、日本では白タク扱いとなってしまうのでハイヤー業務となっている。
10万円でも売れない粗大ゴミ化するリゾートマンションの負動産
郊外マンションだけでなく、投資物件としてのリゾートマンションが暴落しているという。新潟の湯沢町にある「苗場スキー場」リゾートマンションなどは、数千万円のものが10万円で販売されているという。
まずは、法的に、固定資産税等の法律改正をおこなわないと、余りある不動産がさらに無意味になってしまうことだろう。またリゾートマンションのような場合、居住者がいないと近隣サービスも連鎖して、停滞してしまう。近隣サービスが郊外で停止してしまうと一気にゴーストタウン化が始まる。その前に、手を打たなければ、時代と共に全国的に、負動産化が加速してしまう。またリゾートマンションは、長期滞在用住宅でもないので、居住者とマンションとのマッチングを真剣に考える必要がある。
負債の押し付けである安価な販売型ではなく、短期間の管理委託による、ロングステイ・ビジネスなども考えられるだろう。オーナーは滞納している共益費などの足しになれば良いので、安価でも管理運営会社に委託するだろう。生活住居に制約のいらないプログラマーや、脱サラを検討するサラリーマン、ニートの社会出発地点、マンガ喫茶生活者、期間限定婚活シェアハウス、シングルマザー受給者など、居住者をつなぐための、いろいろな企画をうちだしていかなければならないと思う。
極端な話、国が地域の整備事業として、考えれば、生活保護受給者をまとめ、就労支援センターや病院などもリゾートで併設すると、サービスと福祉の効率化と集中が考えられる。そして、制度面をリゾート特区化すれば、そのほうが結果として、税負担は安くなるだろう。
まずは、人が居住しないことには、不動産は負動産化することは目に見えている。そして、将来の負動産化を恐れて消費が途絶えることがないように、いまから、不動産産業の底ざさえも必要だろう。