Yahoo!ニュース

マイナンバーが必要なのは国民よりも国会議員だ!

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

10月から配布される12桁のマイナンバー知らない人が多すぎる
10月から配布される12桁のマイナンバー知らない人が多すぎる

2015年(平成27年)10月1日からの「マイナンバー制度」まで、約半年となってきた。しかし、マイナンバーの告知がまったく行き届いていないし、話題にならないことが問題なのだ。

マイナンバー制度とは…社会保障・税番号制度という。国民1人1人に、12桁の番号を付与することによって、社会保障、税、災害対策などの行政手続きにその番号を使用する。かつての「国民総背番号制度」と考えればよい。

行政の効率化を考えれば、これほど効率がよいことはない。しかしだ!

マイナンバー制度のデメリットは?

事実上の「資産課税」

現状では『フロー』つまり所得や収入に対する課税だけなのが、『ストック』つまり預金や株式などの資産にも課税されるようになるということです」ひとりひとりに固有で一生変わらない「12ケタの番号」を与え、納税状況、持っている口座や資産などの情報を関連付ける。これらの情報はあなた固有の番号とともに、役所や税務署などの当局によってデータベース化される。

出典:「マイナンバー制度」がスタート この10月からあなたの「収入と資産」は丸見えです 「銀行口座」はもちろん、不動産、株、債券……もう隠すことは一切できません

これは徴税する側からすると願ってもない好都合なものだ。また、10月より、銀行口座を新しく作るにはマイナンバーの12桁が必要となることも閣議決定がなされている。つまり、フローの所得だけでなく、ストックである資産に対して課税する法案が通貨した時点で、税金がアルゴリズム的に算出されることになる。たった12桁の番号ですべての資産はヒモづけられてしまうのだ。マイナンバーのメリットよりも、実は税金を取られる側からするとデメリットのほうが多いだろう。

社会保障費を捻出するためには、増税や資産からの課税も致し方ない…という時の政府の図式はもう完全に見え隠れしている。年金などをもらう為に必要というよりも、税を公平に今まで取り損なってきた分まで取ることができる為に必要だ。特に相続や贈与などだ。個人間の家族間の資金の流れから課税する術をこのマイナンバーで政府は管理できてしまうのだ。

懸念される12桁の数字のひとり歩き

むしろ、それよりも懸念されるのはこの12桁のナンバーと氏名の不正な流出だろう。特定個人情報保護委員会という第三者機関が、マイナンバーが適切に管理されているか監視・監督するそうだが、セキュリテイはそんなに甘いものではない。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/gaiyou.html

個人がマイナンバーで登録する12桁を個人証明として利用する携帯電話会社から家を借りるのに必要な不動産屋まで、果てはレンタルビデオ店までもがマイナンバーを聞いてくる。それにクレジットナンバーがネット上でヒモづけられた時点で、悪用する手法は山のように考えられる。

むしろ、直のマイナンバーを見えないようにするための暗号化やオルタナティブなダミー番号なども用意すべきだろう。さらに、情報公開範囲レベルをユーザーが設定できるパスワードなども必要だろう。それによって、提出する先によって使い分けができるようにすべきだったのだ。

過去の日本の歴史の中で一度もおこなったことのない、一大実証実験を2015年10月からテストもなしに本番で開始しようとしている。それこそ無謀すぎる。郵送で住民票のあるところへ一斉に送付されるというマイナンバーだ。想定されるトラブルは対応しているが、トラブルは想定外から必ず発生する。「消えた年金問題」のようなずさんなデータ管理は、セキュリティの問題ではなく、セクショナリズム制度に問題があった。

このマイナナンバー制度は、制度的には、内閣官房であるが、運用を税務署やら官公庁など複数に別れる。さらに行政機関から地方公共団体にまで同一人物情報を共有するのだ。それこそ、セクショナリズムが積層化され、責任が分断されることが目に見えている。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/pdf/gaiyou_siryou.pdf

国民の前に国会議員でテスト運用すべきなのだ!

1億2,000万人に対してマイナンバーを付与する前に、たかだか800人程度の国会議員で実証実験すべきだと思う。今からでも遅くない。今回の統一地方選挙前にやるべきなのだ。政治とカネの問題で何人もの閣僚が交代したのか?その度ごとに天皇陛下のお時間を割いて任命式だ。

むしろ政治資金報告書をもっと早めて報告する。2013年に2億3000万円の献金を受けた議員の報告は2015年の5 月末日報告書締め切りで公開は11月末日になるという。国民の確定申告のほうが期間が厳しいのがおかしすぎる。国会議員の献金のフローと歳費のストックこそ国会議員マイナンバーで月次報告をすべきなのだ。すると、不正が行われていることが2年も経過してから議論するなんてこともなくなる。

マイナンバー制度は、国会議員で一度テストしてから国民に課せるべきではないだろうか?今からでも遅くないはずだ。少なくとも、バグは一杯でてくるはずだからいいテストになるはずだ。

統一地方選挙

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

神田敏晶の最近の記事