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ハロウィン仮装で「ウォーリーを探せ」が人気になる理由

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

自撮りでソーシャルで拡散されるウォーリー集団
自撮りでソーシャルで拡散されるウォーリー集団

さきほどまで、渋谷にいたけれども、なんとも「ウォーリーを探せの集団」の多さに驚いた!

まさに「金太郎飴状態」なのである。なぜにこんなにもウォーリーが大量発生しているのだろうか?

小集団×小集団=大集団の法則

5名程度のウォーリーを探せの仮装がいるとそれだけで、インパクトがあるが、その小集団が、同様のウォーリーを探せの小集団と出会って、そこで、写真を撮る…。さらに他の小集団が加わり、ウォーリーを探せだらけになっていく。

ウォーリーの仮装の手軽さ

何と言っても、ウォーリーの仮装は手軽なのだ。ドン・キホーテで手軽に買える。ネットでも買える。毎年使える。まさに、ROI率の高いウォーリー仮装だ。

下半身は自由。赤白ボーダーのロングTシャツ、帽子、丸メガネをかぶるだけで、ウォーリーに変身できる。それがすべてキットで販売されているからハロウィン気分に気軽に参加でき、大集団化した時の分身のカタルシスの一部になれ、しかも個人は特定されにくい。

これは、普通の日本人にとって非常に好都合なのだ。ハロウィンは楽しみたいけど、クリエイティブ力はそんなにない。どんな仮装にするのかも迷う。呼びかけリーダーの1人が「ウォーリーで集まろう!」と声がけされても、ネットでクリックするだけで対応できる。

ゾンビ仮装はホント大変

リーダーの1人が「ゾンビで集まろう!」と言わればそれはそれで大さわぎだ。ネットで普段はまったく使わないメイク道具を買っては、集合場所で、メイク。血ノリを衣服につけて、周りを汚してしまってさぁ大変。電車に乗っても、座席に座るわけにもいかず、血ノリが他人の衣服につかないように気を使う…。しかも集合場所で集まって、一時には人気だけど、パフォーマンスは「う〜う〜」とウスノロ化して歩くだけ。マイケル・ジャクソンのスリラーを全員踊れればそれは楽しいがそうも上手くはいかない。解散しても終電間際だと、メイクをおとせず、1人になって電車でゾンビでいるのはかなりの屈辱プレイに近い…。みんなリーダーに文句を言う「ウォーリーならどれだけ楽だったんだ?」と…。

ソーシャルでウォーリーを探せ

ソーシャルメディアのネタとしても、ウォーリー仮装は二度おいしい。

ウォーリーの仮装は手軽と共に、写真をとった時に、誰もがウォーリーに『同化』できる。小集団化した時の常套句は「どこにいるの?」というコメントが続く…。さらに大集団化すると「どこにいるのかわからん」のコメントが続く。

ウォーリーという集団で擬人化することによってのリアルなパフォーマンスと共に、ソーシャルではそれを自分のものにできるのだ。

facebook twitter instagram LINE pinterest さまざまなソーシャルメディアでゆるやかな『同調勢力』化したウォーリーが総活躍するのだ。

埋没する個性とクリエイティブ

しかし、問題は『ウォーリー化』することによる埋没する個性だ。「どこに私はいるでしょう?」だけで決して、ハロウィンで特別に目立つことなく、楽しめるのだ。きわめて日本人的なメンタリティーだ。普段は他人に興味すら抱かないが、ワールドカップの時のサムライブルーのユニフォームと同じく、『同調勢力』というひとつの集団になった時には、他人さえも愛おしく思える国民性を持っている。個性は埋没し、集団としての思想の個性に同調されやすい。国民にとってウォーリーでいることが一番心地よい場所なのかもしれない。それはそれで危険な没個性集団になりそうな気がする。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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