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思わず迷ってしまうfacebookの「新いいね!」

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

KNNポール神田です!

新いいね!アイコンがズラリと登場!
新いいね!アイコンがズラリと登場!

ついに筆者のfacebookにも新いいね!が登場しはじめた…。

筆者のfacebookにはまだ、3つの「いいね!」「すごいね!」「超いいね!」しか登場していないが、他にも「うけるね!」「悲しいね!」「ひどいね!」が登場しているという。これはまさに、facebook上でLINEなどのメッセンジャーと同様の『感情表現機能』をつけた様子だ。

※PCではマウスオーバーで、スマホでは長押しで6つの「新いいね!」が出ることを確認。

最初は、この表現を駆使されることによって、記事を書いた人は、「いいね!」が4人「すごいね!」が3人「超いいね!」が1人というような記事の共感ポイントが数値化されることによっての『承認欲求』が満たされるのだろう。しかし、これが慣れてくると、どんな記事が受けるのかということをマーケティングし始める行動を取りだす。すると、単に「いいね!」という気楽な共感が、より高いポイントである「超いいね!」を狙う記事行動を行うのではないだろうか?プロの記者がより過激なスクープを狙う記事行動と似てくるのだ。しかし、プロの記者は生活がかかっているから継続できるが、ヒマつぶしと社会とのつながりの可視化ツールとしてのfacebookでそんな「超いいね!」狙いの記事なんて、そんな毎日あるわけがない(笑)。

■「新いいね!」はfacebookを失速させるだけ

それにも、まして知人のサイトを「見ましたよ!」的な意義で、「いいね!」してきた人が、いちいち、内容をしっかりと熟読しなければ、どの「新いいね!」を押してよいのかわからないという面倒くさいことが起きる。適当に読めなくなるのだ…。また、自分がそうであるように、同じ「いいね!」を押した人でも、「すごいね!」「超いいね!」を押さない人を意識し始めるのだ。すると、自分がされてうれしい『同調行動』をする人と、自分の評価軸でこの記事は「いいね!」にしか値しないから「いいね!」しか押さないという人などが登場し、単なるポジティブな感情表現の「いいね!」アイコンが、いつしか「得点ポイント」アイコンへと変化してしまうのではないかと危惧している。

その結果、「いいね!」押す時にいちいち悩むの面倒くさいので、どれも押さなくなる。いいね!が押されないから、記事に人気がないと思うと、記事を書くモチベーションが下がる。するとfacebookがとたんに面白く無くなる。そんな感情アイコンを導入してどうするつもりなのか?

■「有料アイコン」にしたほうが良いのでは?

むしろ、こんなネガティブになるようなアイコンを導入するくらいならば、ソーシャルゲームの要素を取り入れて課金してみるのはどうだろうか?たとえば、一ヶ月に友人数だけの「超いいね!」ポイントがもらえる。そしてそれは人に「超いいね!」を押すことによってポイントが、何かと交換できるfacebookポイントとして機能する。キモは人に「超いいね!」をあげないとポイントとして機能しないようにするのだ。自分が持っていても換金できないようにすることがキモだ。またそのポイントがなくなった場合はクレジットカードで「超いいね!」をチャージすることができる。すると有料のポイントが流通するのだ。「超いいね!」がすごく集まった人は、そのポイントで何かを得ることもできるし、人におすそ分けをすることができる。また「悲しいね!」「ひどいね!」などは、事件や事故や不幸に巻き込まれた人にお悔やみを気持ちだけでなく有償ポイントで送ることもできるのだ。電報にお金を投じても、お金は電報業者だけ。お花を献花しても花代は業者だけ。facebookでお通夜に参加できなくても、感情アイコンでせめてもの気持ちを表すことができそうだ。

おそらくfacebookも今回の「新いいね!」を試験的な導入なので、「有償新いいね!」もやってみるべきだと思う。アメリカ発ではなく、日本人の文化性をあわせた「お悔やみ申し上げます」ボタンあたりからできれば、まんざらSNSというのが温かいネットワークで構成されていることを実感できると思うのだが…どうだろう?

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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