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日本はなぜ苦戦しているのか 女子バレー

柄谷雅紀スポーツ記者
波に乗れない試合が続くが、アルゼンチンに勝てば準々決勝に進むことができる。(写真:青木紘二/アフロスポーツ)

バレーボール女子日本代表は、リオデジャネイロ五輪1次リーグ突破をかけてアルゼンチンと戦う。ともに1勝3敗で、勝った方がA組4位となり準々決勝に進むことができる。日本はここまでカメルーンに勝ったものの、ブラジル、ロシアという強豪には0-3で完敗。韓国にも第1セットを取った後は歯が立たなかった。銅メダルだった前回ロンドン五輪以上の成績を目指して臨んだ日本に何が起こっているのだろうか。

機能しない守備

ベンチ入りする12人に、真鍋監督はアタッカーを1人減らして本職はリベロの座安をレシーバーとして入れた。それだけ守備力にこだわり、勝ち上がるためのポイントに挙げていた。しかし、それがなかなか機能していないのが現状だ。

ここまでの4試合を終えての1セット当たりのディグ(スパイクレシーブ)本数は10本。A、B組12チーム中5位であり、決して悪い数字ではない。しかし、このチームは世界に立ち向かうためにサーブ、レセプション(サーブレシーブ)、ディグ、ミスの少なさの四つで世界一になることを目指してきた。それだけに物足りなさを感じざるを得ない。

ロンドン五輪のときの数字と比較すると一目瞭然である。1次リーグの5試合で、ディグは1セット当たり18.06本という高い数字を残した。準々決勝、準決勝、3位決定戦の3試合を加えても17.25本である。この鉄壁の守備から何度も攻撃を繰り返し、得点をもぎ取っていくのが日本のスタイルだった。

またレセプションも今大会は乱れている。成功率は35.52%。12チーム中6位の数字で、1位ブラジルよりも10%近く低い。ちなみに、ロンドン五輪の時は3位決定戦までの8試合で71.03%という驚異的な数字を残している。個々の攻撃力が低い日本は、相手が守りにくい攻撃を繰り出さねばならない。そのためには相手のブロックを分散することが重要で、正確なレセプションは欠かせない。

この2点から見ると、日本がこだわってきた守備力はまだ本領発揮できていないと言えるだろう。

攻撃も踏ん張れず

これが攻撃にも影響している。勝敗との相関関係が高いスパイク効果率は22.90%。12チーム中9位で、日本の下に位置するのは敗退が決まったプエルトリコとカメルーン、そして今回の対戦相手のアルゼンチンだけだ。B組で1勝に終わったイタリアですら25.57%と日本の上にいる。

計4試合で114本のスパイクを打っている木村沙織の効果率は16.67%。ロンドン五輪では339本打って25.66%だったから、それに比べると低調だ。レセプションの乱れから、いい体勢で打てていないということも影響しているだろう。木村の対角に入る石井優希も19.54%、鍋谷友理枝も12.00%にとどまる。オポジットの長岡望悠が33.70%と踏ん張っているだけに、ウイングスパイカー陣の復調を期待したい。

突破口になる可能性があるのが山口舞だ。ここまでは全て途中出場だが荒木絵里香、島村春世の3人のミドルブロッカー陣で最も多い31本のスパイクを打って、長岡に次ぐ32.26%の効果率を残している。強打というより、うまくコースに打ち分けている印象だ。スタメンで起用すれば、攻撃に幅が出るかもしれない。

ブラジル戦、ロシア戦ではディグの数字は徐々に改善されつつある。あとはレセプションの踏ん張りとアタッカー陣の奮起。準々決勝進出を決めるとともに、弾みのつく試合にしてほしい。

スポーツ記者

1985年生まれ、大阪府箕面市出身。中学から始めたバレーボールにのめり込み、大学までバレー一筋。筑波大バレー部でプレーした。2008年に大手新聞社に入社し、新潟、横浜、東京社会部で事件、事故、裁判を担当。新潟時代の2009年、高校野球担当として夏の甲子園で準優勝した日本文理を密着取材した。2013年に大手通信社へ。プロ野球やJリーグの取材を経て、2018年平昌五輪、2019年ジャカルタ・アジア大会、2021年東京五輪、2022年北京五輪を現地で取材。バレーボールの取材は2015年W杯から本格的に開始。冬はスキーを取材する。スポーツのおもしろさをわかりやすく伝えたいと奮闘中。

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