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太平洋横断中の辛坊さんら救助 遭難海域の気象状況は

片平敦気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

報道によれば、小型ヨットで太平洋横断中に遭難したニュースキャスター・辛坊治郎さんらは海上自衛隊に無事救助されたとのこと。救助要請があったと伝えられる今朝(21日朝)の当該海域の気象状況はどうだったのでしょうか。

天候悪化の前の救助に

21日9時の速報天気図。梅雨前線が南岸から東の海上までのびる。(気象庁HPより)
21日9時の速報天気図。梅雨前線が南岸から東の海上までのびる。(気象庁HPより)

きょう21日朝は、本州の南岸に梅雨前線が停滞していました。前線は日本の東では、はるかアリューシャン列島まで続いているようすが天気図から分かります。

詳しい位置は不明ですが、救助要請がされたと伝えられる宮城県金華山の南東・約1,200km付近の太平洋上にも前線がのびており、この近くでは波が高まっていたものと考えられます。

21日9時の波浪解析。前線に沿うように浪の高い海域が続く。(気象庁HPより)
21日9時の波浪解析。前線に沿うように浪の高い海域が続く。(気象庁HPより)

気象庁の波浪解析によれば、周辺海域では波の高さ(有義波高)2~3メートルと推定されています。右図の黄色い表示の部分が波の高さ3メートル以上と推定される海域です。

いわゆるシケ(波高4メートル超)にまで達した状態ではないものの、当該海域では、波の高い状態だったようです。

22日9時の波浪予想。関東の南に波の高い領域が進んでくる予想。(気象庁HPより)
22日9時の波浪予想。関東の南に波の高い領域が進んでくる予想。(気象庁HPより)

また、明日(22日)には、台風第4号から変わった温帯低気圧がやや発達しながら進む見込みで、雨や風がさらに強まってくることも心配されていました。波も、低気圧の周辺では高さ4~5メートルのシケが予想されていて、当該海域でも、時間とともにいっそう波が高まったであろうことは想像に難くありません。

今回は、海上自衛隊により要請から12時間程度での救助となりましたが、天候がさらに荒れてくる前に救助ができたことは、天気・海の状況からは幸いだったと考えられます。

「波の高さ」とは?

さて、海のようすをじっくりと眺めていると分かりますが、海上の波の高さというのは、高いものから低いものまで様々です。人間が目視した時に平均的に感じる波の高さと近くなるよう設定されたものが、上述した「有義波高(ゆうぎはこう)」です。押し寄せる波のうち、高いほう3分の1を平均した波の高さ、と定義されています。

つまり、この有義波高で示された値よりも高いものも個々の波の中には含まれているわけで、一般には、観測される波のうち「1000波に1波」は、有義波高の2倍近い高さのものが出現する、と言われています。

すなわち、有義波高2~3メートルと言っても、突然の瞬間的な大波としては5メートル前後の波が含まれ得るというわけです。

海上・海岸の波の予報なども、気象庁から日々発表されていますが、こうした波の高さの予報も「有義波高」で示されています。

気象解説者/気象予報士/防災士/ウェザーマップ所属

幼少時からの夢は「天気予報のおじさん」。19歳で気象予報士を取得し、2001年に大学生お天気キャスターデビュー。卒業後は日本気象協会に入社し営業・予測・解説など幅広く従事した。2008年ウェザーマップ移籍。平時は楽しく災害時は命を守る解説を心がけ、関西を拠点に地元密着の「天気の町医者」を目指す。いざという時に心に響く解説を模索し被災地にも足を運ぶ。関西テレビ「newsランナー」など出演。(一社)ADI災害研究所理事。趣味は飛行機、日本酒、アメダス巡り、囲碁、マラソンなど。航空通信士、航空無線通信士の資格も持つ。大阪府赤十字血液センター「献血推進大使」(2022年6月~)。1981年埼玉県出身。

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