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東京都心の熱公害

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
関東地方の予想最高気温(22日、気象庁)

きょう(22日)、関東甲信地方で梅雨が明けました。平年並みの梅雨明けです。今後は夏の主役である太平洋高気圧が強まり、日本列島を覆うため、しばらくは夏空が続き、暑さが日に日に厳しくなるでしょう。やはり、今年も暑い夏がやってきました。

日本にあって英国にないもの?

英国の天気を調べていたら、あることに気がつきました。日本では当たり前にあることが、英国にはないのです。もちろん、英国は日本よりも高緯度に位置していますから、日本ほどは暑くはなりません。それでも、ケント州フェヴァーシャム(Faversham)では2003年8月10日に、英国歴代の最高気温38.5度を記録しました。

2003年といえば、日本は大冷夏の年ですが、英国に限らず欧州の広い範囲が記録的な熱波に襲われ、亡くなった人も。快適な夏が当たり前だった欧州ですが、この猛暑をきっかけにエアコンを買う人が増えたそうです。温暖化によって、今後も熱波が増えることを心配する声も多く聞かれました。

英国では、日本の幕末にあたる1850年代から気温の記録が残っています。でも、これまでに最低気温が25度を超えたことがなく、英国には熱帯夜がないのです。もしも、英国が日本のように寝苦しい夜だったら、シェークスピアは「夏の夜の夢」を執筆しなかったかもしれませんね。

今年の梅雨はムラがある

今年の梅雨は、雨量が多かった所、少なかった所の差が大きくなりました。関東甲信地方や九州南部地方(鹿児島・宮崎)では寒気や台風8号の影響を受けて、平年の2倍近い雨が降りましたが、近畿や東海地方では平年の半分以下にとどまりました。梅雨の雨は大切な夏の水資源です。今後、晴れて暑い日が続くと水不足の心配があります。

梅雨明けには大きく分けて3つのパターンがあります。ひとつは太平洋高気圧が強まったことで、梅雨前線が押し上げられるパターンです。今年はこのパターンで、梅雨明け後はしばらく、盛夏と厳しい暑さが続きます。「梅雨明け十日の猛暑」とも言われます。

一方、いつになっても太平洋高気圧が強まらず、ずるずると8月まで梅雨前線が残ってしまう年もあります。エルニーニョ現象が発生する可能性があったため、当初はこのパターンになってしまうといわれました。でも、北日本の梅雨明けは予断が許さず、梅雨明けが遅れるかもしれません。

東京都心の熱公害

暑い日に限って、夕方になっても、夜になっても風が弱くて困ります。もともと、太平洋高気圧に覆われると、昼夜問わず風が弱くなりますが、とくに、東京都心では湾岸部にある高層ビルが屏風のように立ち、夕風をさえぎる弊害が指摘されています。

また、オフィスの快適さを求めるあまり、冷房の使い過ぎがエアコンの排熱を生み、内外の温度差が体調不良を引き起こしています。冷房を控えすぎて熱中症になっては本末転倒だけれども、大なり小なり、多くの人が都会の暑さの影響を受けている、まさに熱公害と呼んでもいいのではないでしょうか。

2020年東京オリンピックに向けて、今、東京は大きく変わろうとしています。都心の熱公害をもっと本気になって考えるときだと思います。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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