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沈黙する台風 1号の発生はいつ?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
フィリピンの東海上では雲の発生しにくい状況が続いている(2016年4月22日)

沈黙する台風

台風シーズンが近づくなか、今年はまだ台風が発生していません。

台風1号は1月に発生することが多く、全体の約4割を占めます。そうならば、ずいぶんと今年は遅いと思われるでしょう。

しかし、1月の台風は「年越し台風」といって、台風シーズンが年をまたいだという意味にしか過ぎず、1号の発生は平均すると3月5日頃です。2月は台風のシーズンオフのため、実際の始まりは3月からです。

なので、今の時点で今年が特別に遅いというわけではありません。過去、最も遅かったのは1998年7月9日です。台風1号の発生は早いことにあまり意味はなく、遅くなればなるほど気象学的に意味があります。

なぜ、発生しない?

過去最大級のエルニーニョ現象は昨年(2015年)12月にピークを迎え、その後、ペルー沖の海面水温は徐々に下がっています。一方、インド洋熱帯域(IOBW)の海面水温はエルニーニョ現象に遅れて、高くなっていて、3月は基準値を0.73度上回りました。これは記録が残る1949年以降で、1998年1月のプラス0.74度に次いで高くなっています。

エルニーニョ現象が終息に向かうなかで、インド洋熱帯域の海面水温が記録的に高くなっているため、インドネシア付近で雲の発生が少なくなっています(対流活動が不活発)。この影響がさらにベンガル湾からフィリピンの東海上で高気圧を強め、台風の雲が発生しにくい状況になっているのです。

キーワードは「1998年」

台風1号はいつ発生するのでしょう。今のところ、すぐに台風が発生する様子はみられません。また、来月半ばにかけても、フィリピンの東海上で高気圧が強い予想で、今の状況が続く可能性が高いです。

とくに、1998年は最強エルニーニョ現象が春に終息し、夏からラニーニャ現象が発生、またインド洋熱帯域の海面水温も非常に高くなった年で、今年との共通点が見受けられます。1998年の台風シーズンは1号の発生が過去最も遅く(7月9日)、発生数は16個と過去2番目に少なくなりました。

もちろん、1998年がすべてではないけれど、気象の世界では類似した年を参考にすることがあります。

昨シーズンは台風の発生頻度が高く、2014年6月から2015年12月まで19か月連続で台風の発生が続きました。その後、状況がガラリと変わり、台風の無発生期間がすでに4か月続いています。この状況の変化はどうして起こったのか、興味はつきません。

【参考資料】

デジタル台風:台風シーズン

気象庁:過去の台風資料

気象庁:エルニーニョ/ラニーニャ現象

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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