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静かなる台風

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
台風1号が消滅してから約2週間。台風は沈黙を続けている。

今年1月から7月までの台風発生数は1個(21日現在)と1998年と並んで統計史上最も少ない。今シーズンの台風は異例の状態が続いている。来月も台風が発生しにくい気象状況とみられ、年間の発生数は大幅に少なくなる可能性がある。

記録的に少ない今年の台風

いつもの年ならば、この時期までに7個から8個の台風が発生し、上陸していてもおかしくない。それなのに今年はわずか1個です。

今月このまま台風が発生しなければ、1998年に並んで統計史上(1951年以降)最も少ない記録となるでしょう。

台風の発生海域の海面水温は30度以上あり、台風の発生には十分ですが、なぜが雲が少ない。これほどまでに台風が発生しないとは、首をかしげてしまいます。

北西太平洋で発生する台風は世界の熱帯低気圧のなかで最も発生数が多く、7月から9月までのトップシーズンには平均すると6日に1個の割合で発生します。今シーズンは台風1号の発生が記録的に遅くなり、台風1号が消滅した後、台風が発生する気配がありません。

なぜ台風が発生しない?

2016年7月中旬,旬平均外向き長波放射量平年偏差(西部太平洋域):気象庁
2016年7月中旬,旬平均外向き長波放射量平年偏差(西部太平洋域):気象庁

この図は雲の発生の多い、少ないを表した図です。専門的にいうと「外向き長波放射量平年偏差図」です。

寒色は雲の発生が多い場所、暖色は雲の発生が少ない場所です。7月中旬は南シナ海からフィリピンの東海上にかけての広い範囲(黒線で囲った海域)で、雲が少なかったことがわかります。ちょうどこのあたりは台風が多く発生する海域です。

雲の発生が抑えられている背景には、このあたりで高気圧が強いことがあります。今年は沖縄からフィリピンの東海上にかけて、継続して高気圧が強く、この状況は来月にかけても続く見通しです。

台風の発生が少なくても

1月から7月までの台風発生数 少ない方ランキング<1951年-2015年>   
1月から7月までの台風発生数 少ない方ランキング<1951年-2015年>   

今年のように7月までの台風発生数が少ない年を調べてみると、年間の発生数は平均で19.7個と平年を大幅に下回っています。統計的にみても相関が高く、この時期に台風の発生が少ないと、全体としても少なくなるようです。

しかし、上陸数は違います。上陸数の平均は2.7個で、平年とほとんど変わりません。今年と同じ1998年は9月に台風が3個上陸しました。

今年の台風シーズンは予想外の展開ばかり。7月下旬までに台風が1個とは、だれが予想したでしょう。今年の台風に目が離せません。

【参考資料】

気象庁:過去の台風資料

気象庁:大気の循環・雪氷・海況,旬平均外向き長波放射量平年偏差(西部太平洋域)

気象庁:全般季節予報支援資料1か月予報(予報期間7月23日ー8月22日),2016年7月21日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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