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台風16号 予報円が大きい理由

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
台風16号の進路予想図(9月17日16時現在)

台風16号は来週前半にも、西日本に接近するおそれがあるが、5日先の予報円は半径850キロもあり、大きすぎるために戸惑う人も多いだろう。

予報円は楕円など円形以外では表示できないため、台風のスピードに誤差が大きいと、進路も定まっていないような誤解を与える欠点がある。

台風16号 与那国島で最大瞬間風速66.8メートル

台風16号は非常に強い勢力で北上、暴風域に入った与那国島では猛烈な風が吹きました。台風は次第に進路を東寄りに変えて、来週前半にも西日本にかなり接近、上陸するおそれもあります。

台風16号の雲(9月17日正午,気象衛星画像)
台風16号の雲(9月17日正午,気象衛星画像)

台風の予報円は先になればなるほど大きくなります。それは予想の誤差が拡大するためで、台風の強さや大きさには関係ありません。予報円が大きくなると、台風も強くなると誤解してしまうけれど、そうではないんです。

とはいっても、台風16号の5日先(22日午後3時)の予報円は半径850キロもあり、本州が覆われてしまうほどの大きさです。これではいくら中心線があっても、どこにいくのかわからない、台風が巨大化するのでは?など誤解を与える大きさです。

実際、日本の南海上で一回転し、予測不可能とさえいわれた台風10号でさえ、予報円の大きさは最大で半径650キロでした。今回の台風16号はさらに200キロも大きく、予報円としては最大級でしょう。

予報円が大きくなる2つの理由

どうしてこれほどまでに予報円が大きいのでしょう。

ひとつは、予報円は予想した時刻に台風の中心が70%の確率で入る範囲を示しているので、台風の進路が定まらない場合は予報円が大きくなります。

二つ目は予報円は円形で表現しなければいけないからです。たとえば、楕円とか、三角とか、四角とか、曲線とか、予報進路を表現する方法はいろいろあります。現在の円形になったのは昭和57年からで、それまでは扇形でした。

台風のスピードが遅くなるか、速くなるか定まらない場合、円形よりも楕円のような形で表現したほうがわかりやすいと思うときがあります。

5日先予報はどうしても不確実性が大きく、予報円が巨大化してしまう可能性があったため、導入する際に新しい表現方法が検討されましたが、従来の3日先までの予報と兼ね合いもあり、今の予報円となりました。

それでも、進路がまったく定まっていない場合と、進路がほぼ定まっているんだけれども、台風の速さが不安定な場合、どちらも同じ大きさの予報円では、受け取り手にその違いが伝わっておらず、改善の余地があると思います。

今回の台風16号の場合はどちらかというと、進路の不確実さよりも、速度の差に原因があるように思います。

台風予報は数ある気象情報のなかで最も注目度が高い情報ですが、すべての人が正しい見方を知っているとは限りません。だからこそ、台風経路図から受けるイメージは重要で、予報円の情報を的確に伝える、誤解を与えないことが大切です。

一方で、受け取り側も、予報円の中心や予報線ばかりに注目せずに、予報円の広がりや変化に着目しましょう。とくに、4日先、5日先の予報円の中心は必ずしも台風が到達する可能性が高い場所ではありませんので、注意が必要です。

【参考資料】

経田正幸,越智健太,2014:台風アンサンブル予報システム,平成26年度数値予報研修テキスト,62-71.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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