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台風17号 マリアナ生まれは発達する?

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
台風17号の雲とサングリント(気象衛星ひまわり,2016年9月23日正午)

23日午前9時、マリアナ諸島で台風17号が発生した。マリアナ諸島生まれの台風は発達することが知られ、スーパー台風となった台風14号もその近海で発生した。なぜ、マリアナ生まれは発達するのか?その答えは世界で最も暖かい海にある。

台風17号 発達しながら沖縄の南へ

台風17号の進路予想図(2016年9月23日15時現在)
台風17号の進路予想図(2016年9月23日15時現在)

台風16号が温帯低気圧に変わって、わずか2日あまりで、台風17号が発生しました。今年は台風シーズン入りが記録的に遅くなりましたが、後れを取り戻すかのように台風の発生ラッシュ、8月以降、台風は2日も待たずに次々と生まれています。

きょう(23日)発生した台風17号は今後、発達しながら北西へ進み、26日(月)には沖縄の南で、強い台風となる見通しです。その後は台湾に進むことが予想され、先日の台風14号と同じようなコースをたどりそうです。

マリアナ生まれは「銀のさじ」?

マリアナ諸島生まれは発達しやすい(説明図)
マリアナ諸島生まれは発達しやすい(説明図)

台風17号はマリアナ諸島で発生しました。マリアナ諸島というよりも、グアム・サイパンといった方がイメージしやすいかもしれません。台風に詳しい人ならば、この場所で発生した台風は発達しやすいと思うでしょう。

1977年から2015年までの39年間に発生した台風(993個)のうち、猛烈な強さ(最大風速54メートル以上)まで発達した台風は82個あり、全体の約8パーセントです。

次に、猛烈な台風の発生した場所を調べてみました。すると、最も多いのが北緯10度から15度、東経140度から145度の海域(オレンジ線で囲った部分)で、全体の約16%(13個)です。この海域はちょうどマリアナ諸島の南西側にあたります。

裕福な家庭に生まれた人のことを「銀のさじを口にくわえて生まれる」といいますが、さながらマリアナ生まれの台風は銀のさじとも言えるかもしれません。古い話ですが、日本の防災対策の原点となった伊勢湾台風は1959年(昭和34年)9月21日、マリアナ諸島の東海上で発生しました。

台風の将来は未知数

マリアナ生まれの台風が発達するのは一年を通して、海面から深さ100メートルまでの水温が27度以上あり、台風の発生、発達に好条件とされているからです。だからといって、マリアナ生まれの台風すべてが最強の台風となるわけではなく、海水温だけでは説明できないことがあります。

最近は温暖化の進行により、スーパー台風が多く発生する、台風が強いまま上陸するなど、台風の脅威がより増しているとの報道が目立ちます。しかし、台風の発生、発達の仕組みは未知の部分が多く、研究は途上です。台風の将来はまだ見えていません。

【参考資料】

デジタル台風

気象庁ホームページ:台風の知識、過去の台風資料

宮本佳明,2014:新用語解説 Maximum Potential Intensity,天気,61,43-45.

日本経済新聞:東アジアの台風 強力に,2016年9月6日

【表紙の雲画像】

台風17号の雲の下に白く輝く部分(←)があります。これはサングリントといって、太陽光が海面に反射した像です。

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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