なぜ相次ぐ?西日本の大雪
松江上空でマイナス39.7度、3度目の寒気は強烈だった。日本海の雪雲、そのなかでも「トランスバース型降雪バンド(赤丸)」は大雪を降らせる雲だ。
ラニーニャ現象は終わったが、西部太平洋熱帯域の海面水温は高く、対流活動が活発なため、寒気が西日本に流れ込みやすくなった可能性がある。
Tモードの雲は大雪を降らせる
表紙の写真は10日正午のひまわり8号からみた雪雲の様子です。日本列島を取り囲むように雪雲が広がっています。日本海に目を向けると、一概に雪雲といってもさまざまな形があることがわかります。
ひとつは北西の季節風に沿う「すじ状の雲」、天気予報でもおなじみです。一方で、赤丸で囲った部分は様子が違います。矢印のように南西から北東方向へ伸びる雲列は「トランスバース型降雪バンド(Tモードの雲)」といって、日本海側の広い範囲に大雪を降らせる雲として知られています。
なぜ、一般的なすじ状の雪雲と雲の走向が違うのでしょう?それは風の流れが上と下で違うからです。
12日(日)にかけて、このトランスバース型降雪バンドが形成されやすい気象状況が続きます。島根県、鳥取県、兵庫県、京都府、滋賀県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県では雪が強まりやすく、周囲の状況が急に悪化するおそれがあります。
6シーズンぶりの強烈寒気
秋から初冬にかけて、西日本では気温の高い状態が続いていました。それが一転、1月15日は広島で、24日は鳥取で、そして今回と3度続けての大雪です。
このグラフは松江の上空約5千メートルの気温の変化をみたものです。寒気の強さは回を重ねるごとに強まり、今回の寒気はマイナス39.7度、6シーズンぶりの強い寒気です。平年と比べて15度以上低い気温です。
この非常に強い寒気は上空の流れから切り離されているために、動きが遅く、影響が長引きます。このような場合、たとえ雪の降り方が強くなくても、降り続くことで大雪になる例は多く、災害を引き起こすひとつの形です。同じような天気が長引くことはとても危険なことなのです。
ラニーニャ現象は終わったが
なぜ、西日本で大雪が相次ぐのでしょう?
ひとつは日本付近で上空の風の流れが大きく蛇行し、寒気が流れ込みやすくなっていること。
一方で、1月のエルニーニョ監視海域の海面水温は基準値となり、ラニーニャ現象の基準を満たさなくなりました。ラニーニャ現象は終わってしまいましたが、太平洋熱帯域の海面水温は西部で平年より高く、雲が活発に発生しています。この影響で寒気がより南まで流れ込みやすくなっていると思います。
【参考資料】
清水健作,坪木和久,2004:トランスバース型降雪バンドの形成過程に関する観測的研究,名古屋大学地球水循環研究センター.
気象衛星センター:気象衛星画像の解析と利用 航空気象編 第6章寒気場内の現象,平成14年3月
気象庁:エルニーニョ監視速報 No.293,2017年2月10日発表