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2017夏は全国的な猛暑予想

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
2017年夏は太平洋高気圧が強く、強い日差しが照りつけそう(ペイレスイメージズ/アフロ)

2017年夏は50%の確率で猛暑となる見通し。その背景にはフィリピン付近の対流活動が日本の夏に影響する「PJパターン」がある。近年は猛暑ばかりが目立ち、「平年」を基準とする表現方法に工夫が必要だ。

2017年夏は猛暑予想

今年初めての夏の天候予想が24日、発表されました。夏の平均気温は北海道から沖縄までの全国で、平年より高くなる確率が50%です。

【全国】2017年夏の平均気温は50%の確率で平年より高くなる見通し
【全国】2017年夏の平均気温は50%の確率で平年より高くなる見通し

暖候期予報は半年先を予想するため、30%や40%といった気候的出現率になることが多く、極端に小さい、大きい確率は出にくいのが特徴です。しかし、今回は50%という珍しく高い確率となっていて、関心を持ちました。確率から自信の程がうかがい知れます。

太平洋高気圧が強い

なぜ、今年の夏は暑くなるのでしょう?

答えは熱帯の海にあります。数か月先の天気を考えるとき、日々の低気圧や高気圧では予想ができません。その代わりに熱帯の海の緩やかな変化を予想の拠り所にするのです。代表的な例がエルニーニョ/ラニーニャ現象です。

でも、この夏はエルニーニョでも、ラニーニャでもありません。それでは何を根拠にしているのでしょう?

フィリピン付近で対流活動が活発となり、日本付近で太平洋高気圧を強める(模式図)
フィリピン付近で対流活動が活発となり、日本付近で太平洋高気圧を強める(模式図)

それは太平洋西部の海面水温です。この夏、太平洋西部の海面水温は平年より高く、インドシナ半島からフィリピン付近では雲が例年以上に多く発生するとみられています。その影響が日本付近に伝わり、太平洋高気圧(夏の高気圧)を強めるという見方です。

これを専門的な言葉で「PJ(Pacific-Japan)パターン」といい、日本の夏の天候に強い影響を及ぼします。

「平年」と言われても

日本で季節予報(長期予報)が始まったのは1942年(昭和17年)、発端は1930年代から1940年初めに多発した冷害です。冷害から農作物を守る取り組みが、75年が経った今ではスーパーコンピュータを使った予測へと進化しました。それでも社会的なニーズに十分答えているとは言い難く、利用は参考程度です。

参考程度にとどまっているのはなぜか、と考えたとき、ひとつに「平年」を基準とした表現方法では天候を具体的にイメージするのが難しいことがあると思います。天気の「平年」と世の中の人が思う「平年」は一緒ではないでしょう。

30年間の気温の平年差を低い順に並び替えて、真ん中の10年が平年並みとなる
30年間の気温の平年差を低い順に並び替えて、真ん中の10年が平年並みとなる

実際、関東甲信地方は2010以降、7年連続で平年より気温が高い夏になりました。平年並みの夏だった2009年を覚えている人はほとんどいないと思います。今や暑い夏が普通に感じられる、そうならば「平年より気温が高くなる確率50%」に「最近の夏と同程度になる確率50%」という表現も付け加えたらどうでしょう。うーん、かえってわかりにくいでしょうか。

【参考資料】

気象庁地球環境・海洋部:暖候期予報の解説,2017年2月24日

気象庁地球環境・海洋部:全般季節予報支援資料 暖候期予報,2017年2月24日

横手嘉二,2013:はじめに,平成24年度季節予報研修テキスト,気象庁地球環境・海洋部

大久保忠之,2013:3か月予報と暖・寒候期予報,平成24年度季節予報研修テキスト,気象庁地球環境・海洋部,243-245.

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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