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政党運営の安定なくして政権の安定なし!

加藤秀樹構想日本 代表

3年ぶりの政権交代だ。今回の総選挙は自民党の圧勝、民主党の惨敗だったが、大括りに見ると、今回、前回(2009年)、前々回(2005年)の選挙はよく似ている。

まず、勝った方は約300議席、負けた方は約100議席(今回は民主と維新の合計)。しかし、この200議席の差は得票率でみると10%程度の差でしかない。もう一つの類似点は3回とも有権者は「変化」を求めたということだ。ということは、また次回も有権者の10%程度が「変化」を求めると大差で政権が代わるのだろうか。

今回有権者が求めた変化の中身はなんだろうか。民主党政権の混迷ぶりに愛想をつかして、「決めたことをちゃんと実行してくれ」、「政治を安定させてくれ」ということではないか。

自民党政権には是非安定した政権運営を期待したいが、大丈夫だろうか。3年余り前に国民が民主党を選んだのもやはり、それまでの自民党の政権運営が混迷していたからだ。この3年間で自民党の運営能力、ガバナンスが向上したかどうかは未知数だ。

前回の記事で書いたが、企業が業績をあげようと思ったら、組織運営がしっかりしていないといけないのは常識だ。コーポレート・ガバナンスは企業経営の基盤なのだ。

ましてや国家運営に携わるのだから、政党がガバナンスを確立しないと安定した政権運営はできない。

ここで留意しておかないといけないことは、3回とも100人規模の新人議員が登場していることだ。しかも、その大部分は次の選挙では落選している。

社員の3分の1が新人という会社がまとまって力を発揮するには余程の統率力や明確な指揮命令系統が必要だ。そのために最も重要なことは何か。

ここでは政党のガバナンスの柱である党組織の権限、責任の明確化についてだけふれておこう。

まず、党の役員および機関の権限や責任、任期、構成員の選出方法を明確にする。会社法で、取締役会や代表取締役、取締役について細かく定められていることをイメージしてもらえばよい。意思決定の主体とプロセス、及ぶ範囲が決まっていなければ、代表者が組織を導くことなどできない。これにより、政策の矛盾や変更が避けられ、強力な内閣の基盤ができる。

日本の総理大臣の任期の短さの問題はよく指摘される。直接の原因は総理の任期(=衆議院の任期)と関係なく頻繁に党首選を行うことにある。主要政党の党首は総理候補として選挙で選出された責任があるのに、党内事情が優先されて交代に追い込まれてしまう。

そうなると、内閣と総理はますます内向きの政治に走る。「総理たる与党党首の任期は、就任当時に召集された衆議院の任期と同じとする」と法律で定めておけば、総理が安定的に国家運営に取り組むことに繋がる。

内閣と与党の一体化も重要な課題だ。近年、閣外の与党議員が内閣の意思決定に背くなど、与党内の意見不一致が目立ち、物事が決まらない状態が続く。そもそも、制度上国民に責任を負っていない政党内の政策決定が、政府の方針より優位にあることは、議院内閣制の否定なのだ。過去何十年も続いているこの根本的ねじれを解決するには、幹事長、政調会長といった与党幹部に、何らかの形で入閣を義務付け責任を負わせるのも一案だ。

与党が300議席を超える多数を占めたら政権が安定するというのは幻想にすぎないということは私たちは十分経験した。政権がガタついてきたら政治家を批判するだけではなく、今のうちから政治家、政党に対して政党運営、ガバナンスの確立を求めていこう。

ガバナンスの確立は政党の運営にタガをはめることになる。だから政治家は自ら動こうとはしない。だからこれまで放置されてきたのだ。国民の側から、政党ガバナンスの確立、そのための政党法の制定などを求め、国民運動を盛り上げていきたい。

構想日本 代表

大蔵省で、証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などに勤務した後、1997年4月、日本に真に必要な政策を「民」の立場から立案・提言、そして実現するため、非営利独立のシンクタンク構想日本を設立。事業仕分けによる行革、政党ガバナンスの確立、教育行政や、医療制度改革などを提言。その実現に向けて各分野の変革者やNPOと連携し、縦横無尽の射程から日本の変革をめざす。

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