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自民党政権で初の行政事業レビュー(各省版事業仕分け)、6月10日(月)からスタート

加藤秀樹構想日本 代表

6月5日、政府の行政改革推進会議(議長・安倍晋三首相)が、各府省毎に事業の点検をする「行政事業レビュー」の発表をした。

「行政事業レビュー」とは何だろうか。実は本質的に「事業仕分け」と同じものなのだ。

事業仕分けはもともと民主党政権が行ったものを示す固有名詞ではない。構想日本が2002年に始め、地方自治体ではすでに170回以上行われている。

国レベルでの第1号は、2008年に自民党の無駄撲滅が行ったものだ。その後、民主党政権が政府として行い(2009年11月~ 規制仕分けを含め6回実施)、さらに2011年10月には国会の決算行政監視委員会でも行われている。今回発表された「行政事業レビュー」は、基本的に政府の事業仕分けを引き継いだものだ。

本質的に事業仕分けと同じとはどういうことか。

事業仕分けの必須要素は次の3つだ。

(1)事業内容をフォーマット化して公表する。

(2)外部の目を入れてチェックする。

(3)公開の場で議論する。

今回発表された「行政事業レビュー」は、

(1)各府省が行うすべての事業(約5,000)について、税金の流れを具体的に記した「レビューシート」を公表する。

(2)注目すべき事業は、外部の評価者を入れた公開の場で議論(公開プロセス)する。

というもので、上の3点を満たしている。

民主党政権の行政刷新会議が安倍政権になって行革推進会議と名前は変わったが、ムダな事業のチェックやオープンガバメント化など地味だが重要なことは継続されているのだ。

「行政事業レビュー」の取り組みを主要メディアは一切と言っていいくらい報じていない。

さすが日本のマスメディア!!という感じだ。株価が上がっている間はアベノミクスを持ち上げ、株価が下がり始めると「アベノミクス失敗」とこき下ろす。きちんとした分析もないままに派手な動きだけを追いかける。

私は事業仕分けに関する最大の成果は、予算を何兆円削ったということではなく、この「しくみ」が国の行政の流れの中に定着したことだと思っている。

そして大事なことは、政治家や官僚が行なっていることを他人ごとのように眺め、「あいつらダメだな」と批判ばかりするのではなく、彼らが形だけでなく本当にちゃんとやっているかどうかを監視することだ。

一時、マスメディアが大きく取り上げたトンデモ復興予算も上述のレビューシートが公表されていたから分かったことだ。レビューシートの公表によって、国民全員が「仕分け人」になれる時代になっているのだ。

行政事業レビューの公開プロセスをネットで見たり、身近な事業のレビューシートを眺めたり(レビューシートは各府省のホームページで見られる)して、「何かヘン」ということがあればSNSなどネット上で発信していく。こうしう動きが拡がれば、大イベントの事業仕分けをしなくてもトンデモ予算や事業を退治できる!

それこそがオープンガバメントの意味だと思うし、欧米でも拡がっている動きだ。

繰り返すが、国の事業や官僚が行なっていることを私たちがチェックする道具立ては揃っている。

いつまでも他人ごとのマスメディアは放っておいて、一人ひとりが当事者意識を持って動き出そう。「行政事業レビュー」はその格好の入り口だ。

6月10日(月)の内閣府をスタートに各省庁で公開プロセスが実施されます。詳しいスケジュールなどは平成25年度の行政事業レビュー公開プロセス特設ホームページに掲載されています。インターネットでの中継も行われるので、ぜひ一度見てください。

また、7月上旬には国のすべての事業について統一フォーマット化した「レビューシート」が公表されます。以前書いたレビューシートの見方解説を参考に、みなさんにもぜひチェックしていただきたいと思います。

構想日本 代表

大蔵省で、証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などに勤務した後、1997年4月、日本に真に必要な政策を「民」の立場から立案・提言、そして実現するため、非営利独立のシンクタンク構想日本を設立。事業仕分けによる行革、政党ガバナンスの確立、教育行政や、医療制度改革などを提言。その実現に向けて各分野の変革者やNPOと連携し、縦横無尽の射程から日本の変革をめざす。

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