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増税を前に、行政のムダを国民全員でチェック

加藤秀樹構想日本 代表

私たちのまわりには「宝の持ち腐れ」がたくさんある。例えば、気に入って買ったのに滅多に着ない洋服。大企業には製品化されない特許がずいぶんあると言う。これらを中小企業に渡したら一生懸命製品にして、ヒット商品が生まれるかもしれないのに。

とりわけ行政には宝の持ち腐れが山のようにある。あのスパコンもその一例だ。「2位じゃ駄目なんですか」と言われても、「どうしても必要」(何故かという理由はついに聞けなかったが)と言って作られたスパコンだが、これまで最大能力(1秒間に1京=1兆の1万倍回の計算を行う)で使われることはほとんどなかったと聞く。

スパコンの事業仕分けの時は、ほとんどのマスコミがスパコン開発を支持した。しかし、税金を1000億円以上費やしたスパコンの利用状況をフォローするマスコミはいない。行政が宝の持ち腐れを増やし続ける大きい背景はここにもある。欧米のマスコミ、国民は、自分達が払ったお金=税金の使い道にはるかに厳しい。

そこで、だ。行政の宝の持ち腐れを打ち止めにできる宝のような道具をご紹介したい。

実はそれも行政の中にある。事業仕分けのエッセンスは、実は現政権でも継続されている。その最も重要なパーツが「行政事業レビューシート」(以下、レビューシート)だ。これは国が行っている約6000の事業すべての内容をA4数枚のフォーマットにして説明したものだ。事業を請け負った企業名を含めて、お金の流れもわかる。震災復興と関係ない「復興予算」があることも、このレビューシートがあったから分かったのだ。

(レビューシートの詳しい見方はこちら。)

そして、来年度予算のレビューシートが先月各府省から公表された。これをチェックしていけば国の税金の無駄遣いが掘り出せる。いわば国民全員が「仕分け人」になれるのだ。財務省や国会の予算委員会が認めてしまった国の無駄な事業もチェックできる。レビューシートこそは「宝の持ち腐れ」をなくす「宝の道具」なのだ。

ところが、ほとんどの国民になじみがなく、マスコミはそれをチェックしようともしない。宝の道具が、これまた宝の持ち腐れになっている。

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そこで、構想日本は、レビューシートが宝の持ち腐れにならないよう、1つのサイトに集め、チェックのための簡単なアプリを作った。それが「JUDGIT!」(ジャジット)だ。judgit.netにアクセスして是非一度のぞいて見ていただきたい。

ほとんどの人が国の事業のことは詳しく知らないわけだから、6000事業の中から何を選べばいいか分からない。私だってそうだ。しかし、何でもいい。どうかなと思う省を選び、その省の事業を適当に選んでみてほしい。シートの内容自体は面白いわけではないし、読むのは少し面倒くさい。だけど、とりあえず1枚(4~5ページ)眺めてみてほしい。そうすると、事業の目的や、具体的に何をしているか、お金がどこに流れているか、などが書かれていて、知らなかったことが見える。ネットサーフィンと同じで、そうやって2~3枚見ていくと、読み方にも慣れるし、だんだん「ム、ム」と思うことが必ず出てくる。

大勢の人がそうやって「JUDGIT!」にアクセスしてレビューシートを眺め、「JUDGIT!」に付いている<イケテル!><イマイチ!>ボタンを押したり、コメントを書くことこそが、かつての政治家による仕分け以上に効果を持つ「国民総仕分け」につながっていくのだ。書かれているコメントがおかしいと思えば、コメントにコメントを加えることもできる。

日本のマスコミは重要なことについては常に国民の後追いだから、国民が話題にし始めると、彼らも動き出す。マスコミも、こうやって機能し始める。政治や行政に対する牽制効果も働く。

日本の行政も政治も、世界から見ると長年、周回遅れのように言われてきたが、レビューシートのように、国の事業がすべてフォーマット化されて公表されている国は他にない。ましてや「JUDGIT!」のようなサイトはない。

国民総仕分けが始まると、日本の民主主義は一気にトップに立てるのかも知れない。オリンピックより一足早く、日本を世界のトップ民主主義国にしよう。

構想日本 代表

大蔵省で、証券局、主税局、国際金融局、財政金融研究所などに勤務した後、1997年4月、日本に真に必要な政策を「民」の立場から立案・提言、そして実現するため、非営利独立のシンクタンク構想日本を設立。事業仕分けによる行革、政党ガバナンスの確立、教育行政や、医療制度改革などを提言。その実現に向けて各分野の変革者やNPOと連携し、縦横無尽の射程から日本の変革をめざす。

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