Yahoo!ニュース

未来を担う「日本の15歳」、世界へのファーストマッチは遠くモンゴルの地で

川端暁彦サッカーライター/編集者
攻撃の柱として期待される川崎FのFW宮代大聖(中央) 写真=佐藤博之

目標は「圧倒して勝つ」

9月16日からモンゴルの首都ウランバートルを舞台に、AFC U-16選手権予選(U-17W杯アジア1次予選)が開幕する。大会に臨むU-15日本代表(AFC U-16選手権本大会は来年開催なので、現時点での年齢制限は「U-15」になる)は15日、試合会場となるモンゴルサッカー協会フットボールセンターにて前日練習を行った。

2000年1月1日生まれ以降の選手で構成されることから「00ジャパン」の愛称を名乗っているこのチームを率いるのは、かつてサンフレッチェ広島ユースの黄金時代を築いたことで知られる森山佳郎監督。「アグレッシブで躍動感のあるサッカー」を掲げて今年3月にチームを立ち上げ、全国のタレントを切磋琢磨させながらチームを作ってきた。今大会はその成果が試される最初の舞台となる。16日に地元モンゴル、20日に香港と対戦。地力の差がある相手との連戦と見られるだけに、森山監督が掲げたテーマは「すべてにおいて圧倒して勝つ」ことである。

前日練習を観る限り、スタメンは以下の通り。前線でストライカーの宮代大聖(川崎F)とトップ下タイプの久保建英(FC東京むさし)がコンビを組み、左MFに右利きの棚橋尭士(横浜FM)、右MFに左利きの鈴木冬一(C大阪)と両翼に得点を期待できる二人を配置し、中盤中央にはポゼッションプレーに秀でる平川怜(FC東京むさし)と福岡慎平(京都)。最終ラインは左から岩井龍翔司(横浜FM)、小林友希(神戸)、瀬古歩夢(C大阪)、菅原由勢(名古屋)、そしてGKに谷晃生(G大阪)という配置になりそうだ。

1000m余りの高地にある環境を意識して事前に菅平高原で合宿を張っていた日本は「気候の変化も小さく、コンディション面では問題ない」(森山監督)状態。当初は「息をするのが少し大変だった」(久保)と言うが、すっかり慣れたようだ。またグラウンドが人工芝というのも、この年代の選手は専ら人工芝で練習・試合をしている選手が大半になっただけに、日本にとって大きなアドバンテージ。森山監督の言葉を借りれば、「良いか悪いかはともかく、人工芝は得意」なのだ。

この道はW杯、五輪へと続く道

チームの軸を担う大型CB瀬古が「チームの雰囲気はめっちゃいいですよ」と笑うように、練習の雰囲気も上々。久保によると「練習への準備が悪くて締められたこともあった」そうなのだが、この前日練習では森山監督は終始にこやかに指導に当たった。こうした硬軟織り交ぜた指導は、長く育成年代を指導してきたコーチならではと言えるだろう。闇雲に規律を課すのではないが、決して「ゆるく」はしない。そうしたバランシングがある。

初戦で当たるモンゴルの練習も観たが、力的には数ランク落ちる印象は否めない。セルビア人のブラルシッチ監督は極めて厳格な指導者のようで、練習中に激昂して「出ていけ!」と叫んで選手を練習から追い出す一幕があったほど。指導では「全力で!!」を何度も強調し、ディフェンスでは足からではなく、肩から激しく当たりに行くプレーを指導していたのが印象的だった。「日本のことは最大限リスペクトしているが、マキシマムのパワーを出して、恐れることなく戦い抜く」と宣言。戦う姿勢をあらわにしている。

もっとも、モンゴルの子どもたちにこうした指導への耐性はあまりないようで、23人の登録選手からすでに5人が監督の厳格指導への不満から「離脱」してしまったそうで、人数は18人になってしまっている。GK練習を観ていてもスキルの低さを感じたので、大量得点を狙うゲームになるだろう。久保と宮代にハードなマークが来るのは確実なので、素早くボールを動かしながら、人の出入りを繰り返してゴールを狙っていく、これまで積み上げてきた攻撃のバリエーションをフルに出し切る試合にしたい。

この代表の道は、2017年のU-17ワールドカップ、2020年の東京五輪、そしてその先にまでずっと続いていくべきもの。その第一歩となるモンゴル戦において、「日本の15歳」から精選されたイレブンが「アグレッシブにやって、相手を圧倒する」(瀬古)、そんな姿が観られることを期待している。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

川端暁彦の最近の記事