U-19日本代表、異例の「1泊2日合宿」。実施理由は4大会連続敗退の要因「U-19病」にあり
監督自らの懇請で実現
9月20日、日本サッカー協会は25日から26日にかけて実施されるU-19日本代表候補メンバーを発表した。極めて異例の「1泊2日合宿」最大の狙いは、「U-19病」の確認にある。
10月にU-20ワールドカップアジア最終予選(AFC・U-19選手権)を控えるU-19日本代表にとっては、その最終メンバー発表前最後の合宿である。ただ、1泊2日でのショートキャンプは異例中の異例。たったの2日、しかも初日は夜に集合してミーティングを行うのみなので、「いったい何ができるのか?」と、いぶかしむ声もある。ただ、内山篤監督に言わせれば、こう答えるだろう。「試合ができる」と。
極論すると、2日目に行う日本体育大学との練習試合のためだけに行う合宿とも言える。つまり最終選考試合ということになるのだが、これは監督自らの希望で実現した機会だった。その背景には、「U-19病」と呼ぶべき日本サッカー界の構造的な弱みがある。
90分ゲームから離れた1年間
U-19世代の主力は高卒1、2年目の選手たち。Jリーグ入りして早くもレギュラーとしてプレーしている選手は問題ないが、これはごく少数の例外のようなもの。大多数の選手はベンチに入っているかどうかのライン上におり、出場機会は不定期。あるいはまったくない状態に置かれている。こうなるとフィジカル面でのパフォーマンスが低下したり、試合勘が衰えるのはもちろん、「思うように体が動かない、思ったようなプレーができないと思うことで、自信もなくしてしまう」(内山監督)というメンタル面を含めて負のスパイラルに陥っていく。このU-19年代で日本は4大会連続アジア予選敗退という状態にあるが、この惨憺たる戦績と、U-19年代の選手たちが90分ゲームから離れてしまっていることとは決して無縁ではない。
内山監督は前回のU-19代表チームでアシスタントコーチを務めており、その経験を踏まえて今回のミニ合宿を協会やJクラブに向けて熱望した。「前回のチームでは、いざ最終予選に呼んでみたら、こちらが愕然とするほどに動けなくなっている選手がいた」という反省を踏まえて、メンバー発表前に実戦機会を作り、その判断を下す場が欲しかったのだ。単に試合に出られていない選手だけが問題なのではない。前回大会ではMF関根貴大(浦和)が試合出場を重ねていたが、専らスーパーサブでの出場だったため、「90分を戦うゲーム体力を失ってしまっていた」(内山監督)。こうした事態を避けるために、「月曜日だけでいいから、(U-19代表に)何とか選手を貸してほしい」ということで、今回の異例のミニ合宿に至った。
このため、普段から90分ゲームに出ているような選手は、高校生を含めて基本的に選外となっている。呼ばれたのは普段の環境で90分ゲームから離れてしまっている選手たちと、MF原輝綺(市立船橋高校)、FW中村駿太(柏U-18)などの当落線上の選手たち。監督の懇請で実現したミニ合宿は、ライン上の選手たちにとってはラストのアピールチャンスにもなったわけだ。
何としても5大会連続の敗退を避けて、10年ぶりのU-20ワールドカップ出場を目指す。すべては東京五輪世代でもあるこのチームが万全の準備をするために。特別に組まれたミニ合宿での対戦相手を、微妙なタイミングにもかかわらず快く引き受けたのが、前回のU-19代表の指揮官・鈴木政一監督が率いる日本体育大学だった。2年前に悔恨を残した指揮官のチームに胸を借りることになったトレーニングマッチが、閉ざされて久しいアジアの扉を開くための一助となることを願いたい。
U-19日本代表候補メンバー
GK
小島亨介/早稲田大学
大迫敬介/広島ユース
DF
板倉滉/川崎F
町田浩樹/鹿島
藤谷壮/神戸
小島雅也/仙台
大南拓磨/磐田
古賀太陽/柏U-18
MF
久保田和音/鹿島
坂井大将/大分
鈴木徳真/筑波大学
三好康児/川崎F
長沼洋一/広島
遠藤渓太/横浜FM
原輝綺/市立船橋高校
渡辺皓太/東京Vユース
FW
垣田裕暉/鹿島
小川航基/磐田
中村駿太/柏U-18