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なぜメルセデス・ベンツは売れるのか?

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

2015年の第一四半期でフォルクスワーゲンを抜き去る。

先日、2014年度の車名別新車販売ランキングが発表され話題を呼んだ。販売ランキング1位にハイブリッド車のトヨタ・アクアが輝いたが、トップ10のうち7台を軽自動車が占めており、残り3台が先のアクアを含むハイブリッド車となった。

この結果からわかるのは、国産車では「燃費」や「価格」が重視されており、7台の軽自動車のうちのほとんどが背高タイプが占めることから「広さ」が求められると分析することができる。トップ10にハイブリッド車と軽自動車しかランクインしていないあたりに世相が反映されているといえるだろう。

しかし、そうした傾向の一方で輸入車では今、メルセデス・ベンツが売れている。

先日もメルセデス・ベンツ日本が、2015年の第一四半期で前年比5.6%増の1万8824台(2014年は1万7831台)となり過去最高を記録したと発表した。しかもこの数字は、輸入車新規登録台数ランキングにおけるトップで、あのフォルクスワーゲンを抜き去る結果となった。2位のフォルクスワーゲンは1万8024台と、その差は実に800台となる。

しかし、この差は決して僅差ともいえない。というのもフォルクスワーゲンは小型車(※)と普通車の合計の台数であるのに対して、メルセデス・ベンツの場合は普通車のみでこの数字を積み上げているからだ。メルセデス・ベンツ日本は、2014年4月~2015年3月の新規登録台数でも6万1827台と2年連続で過去最高記録を更新しており、ここ数年かなり好調だ。

※小型車>>>大きさが長さ 4.7m以下、幅 1.7m以下、高さ 2.0m以下。総排気量・その他が2000cc以下

販売の主力は新型Cクラス。そして最上級のSクラスがクラス・シェアNo.1

メルセデス・ベンツ日本では、第一四半期の好調の理由として、昨年発売した新型Cクラスが車種別で前年比120.8%増となったことや最高級モデルSクラス、そしてAクラスやBクラスといったコンパクトモデル、SUVモデルの好調を挙げている。

しかし興味深いのは新型Cクラスで、車種別で見ても、フォルクスワーゲン・ゴルフに次ぐ総合2位を獲得している。車両価格で見てもゴルフの264.0万円〜に対して、Cクラスは419.0万円~。それにも関わらず、直近の6ヶ月で見ても車名別で常に2位につけている。その理由としてはメルセデス・ベンツ日本の広報部いわく、従来からの代替え客だけでなく、「新規顧客が増えている」感覚があるという。この辺りには、ここ数年で展開している、従来のメルセデス・ベンツのイメージを覆すような新たなプロモーション活動も効果しているのだろう。

また車名別ランキング(3月)では、2位のCクラス以外にもトップ10内に、8位に中型セダン/ワゴンのEクラス、9位に最上級セダンのSクラスがラインクインしている。

Eクラスに関しては、2013年のビッグマイナーチェンジで、安全装備のレーダーセーフティパッケージを積極的に展開したことが功を奏しているという。

また興味深いのは、最上級モデルのSクラス。これは意外に知られていないことだが、実は輸入車だけでなくレクサスLS等、国産車を含めた大型セダンの昨年の登録台数は約1万3000台で、その半数以上である約6500台がSクラスであり、このクラスのシェアNo.1を獲得している。

輸入車は高いモデルほど売れる?

第一四半期の新規登録数の数字の大きさから、AクラスやBクラスといったコンパクトモデルが多く売れて台数を積み上げたのかと思いきや、実際にはCクラスが販売を牽引するほか、Eクラスが相変わらずの好調であり、Sクラスは日本で最も売れている大型セダンに輝いているという事実がある。そう考えると輸入車の場合、冒頭に記した国産新車販売の傾向である「燃費」や「価格」とは対極にある要素で選ばれていることがわかる。C、E、Sクラスはどのモデルも、ライバルに比べると最新の安全装備が充実している他、Cクラス、Sクラスは新世代のデザインや最新のアメニティを装備しており、かつての質実剛健とは異なる魅力も訴求している。事実、一世代前までのメルセデス・ベンツといえば、本国では”年配のクルマ”というイメージが強かった。現世代ではそうしたイメージを払拭するために、若々しいイメージを全面に押し出しており、そうしたことも効果しているのだろう。

メルセデス・ベンツ日本は今年の前半、さらにCクラスのハイパフォーマンス・モデルであるメルセデスAMG C63(動画を添付)やプラグイン・ハイブリッドおよびクリーンディーゼルを発表予定。またコンパクトモデルの新規車種であるCLAシューティングブレイク(動画を添付)を発表する予定となっている。そして2015年も昨年に引き続き、新規登録台数で6万台レベルを維持し継続してていくことを目指すという。

今年前半に導入予定となっているメルセデスAMG C63/C63S動画

今年前半に導入予定となっているメルセデス・ベンツCLAシューティング・ブレイク動画

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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