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世界最速のFFスポーツ、ホンダ新型シビックタイプRを試す【動画アリ】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

ホンダが東京モーターショーのプレスデイ(10月28日)に発表し、12月7日から発売される新型シビックタイプRを一足先に試すことができたのでレポートしたい。

欧州で生産されて逆輸入のカタチを取る新型シビックタイプRは、日本では750代の台数限定での販売となる。

このため購入希望者は事前にホンダのホームページで商談申し込みをする方式が採用された(申し込み期間は10月29日〜11月23日で既に終了している)。

この商談申し込みには、限定台数750台に対して約10倍の申し込みがあったという。この結果、あらかじめ告知されていた通り抽選となり、その抽選が終了した段階が現在だ。

2.0LのVTECターボエンジンは、最高出力310ps、最大トルク400Nmを発生。これによって最高速は270km/hを達成し、ドイツのニュルブルクリンク北コースを7分50秒で周回する。結果フロント・エンジン、フロント駆動(いわゆるFF)のモデルとして「ニュルブルクリンク世界最速」を達成したハイパフォーマンス・モデルというのが新型シビックタイプRのトピックとなる。

それほどのハイパフォーマン・スモデルであるため、欧州での車両価格は約3万ポンド。現在の為替(2015年11月25日)で換算すると、約550万円という高額なモデルとなる。しかしホンダはこのモデルに、428万円という国内販売価格を設定した。

実際に試乗した様子は動画を参考にしていただくとして、まずは見た目からかなりいかつい印象を与えるスポーツモデルとなっている。これはニュルブルクリンクでのタイムを稼ぐことはもちろん、ハイパフォーマンス・モデルゆえに実現する超高速域での走行のために、空力性能を徹底して磨いたからこそのカタチといえるだろう。

人によっては子供っぽいと感じるようなエアロパーツが多数付加されているが、これによって超高速域での高い安定性や操縦性が実現されている。

2.0LのVTECターボは始動時から既に勇ましいサウンドを響かせる。そして6速MTでこれを駆ると、低速からパワフルで刺激的な走りを伝えてくる。

さらにガソリンメーターの横にある「+R」の表示がなされるスイッチを押すと、メーターが赤くなると同時に、サスペンションがよりスポーツ向きの設定へと変化する他、エンジンや車両制御安定装置の制御がさらにスポーツ志向へと可変して、よりダイナミックなスポーツドライビングが楽しめるようになり、サーキット走行時に楽しさ気持ち良さが増幅される仕組みだ。

またブレーキは強力なブレンボ社製となる他、装着タイヤは19インチという大径のコンチネンタル社製が組み合わせられている。

走らせると、路面の段差や荒れた部分からの衝撃はダイレクトに伝わるものの、サスペンションの動き自体はしなやかに推移する。ペースが上がれば体が揺すられる感覚が強くあるものの、超高速域でしっかりと踏ん張るためにはこれくらいの硬さが必要なのだろう。

速いクルマがカッコいい、という時代は過ぎて、今や効率の良いクルマやスマートなクルマこそが素敵、と言われる時代になった。そうした時代からすると、シビックタイプRのようなホットハッチは前時代的な存在であることは間違いない。

しかし、実際に走らせると、そうした前時代的な存在だからこその走りの楽しさ気持ち良さが感じられるのもまた事実。6速MTというトランスミッションとあわせて、かつてからのクルマの楽しさ気持ち良さを求めている方には注目すべき存在だろう。

もっとも、そうした“かつての価値”は、最新のテクノロジーで実現されているのがポイント。ホットハッチという80年代に流行したコンセプトの究極形ともいえる新型シビックタイプRは、実は電子制御でそれを実現しているのである。

とはいえ実際に走らせると、前時代にスポーツモデルに興奮したあの感覚はキッチリと実現されており、そうした感覚に対して対価を払う方は少なくない、ということも理解できるのだ。

いまや“速さ”は昔ほど価値を持たない。ましてやクルマにおいて“走って楽しく気持ち良い”という部分でも昔ほどの価値はないだろう。しかし、そうした昔を知る身にとって、シビックタイプRのようなモデルは正直グッと来る部分があることも間違いない。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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