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2年連続日本カーオブザイヤー受賞したマツダの強さ、そしてロードスターの強さ。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

2年連続の日本カーオブザイヤー受賞

日本カーオブザイヤー2015-2016が決定した。今年はマツダ・ロードスターが、ホンダS660を41票差で抑えてイヤーカーを受賞した。マツダは昨年、デミオで日本カーオブザイヤーを受賞しているため、2年連続の受賞であり、2年連続で日本カーオブザイヤーを受賞したメーカーとしては、トヨタ、ホンダに次ぐ3番目のメーカーとなった。しかも、一昨年はVWゴルフが受賞しているが、一昨々年の2012年にもマツダのCX−5が日本カーオブザイヤーを受賞しており、いかに最近のマツダのプロダクトが強いかが結果に表れているといえるだろう。

事実、2012年に日本カーオブザイヤーを受賞したSUVのCX−5から、マツダの現世代のモデル群がスタートを切った。「スカイアクティブ」と呼ばれるテクノロジーを用いて、クルマ作りを基本から徹底的に、そして丁寧にやり直し、既存技術を徹底的に磨き上げることで優れたプロダクトを生み出そうという狙いが功を奏した。同時にこのスカイアクティブでは、ディーゼル・エンジンにも力を入れることで、今や日本の自動車メーカーとしては数多くのディーゼル・エンジンをラインナップするメーカーにもなった。そんな風にして、1モデル1モデルと新しくするたびに、その商品力はどんどん強くなっていった。

また同時に忘れてならないのがデザインの改革が功を奏したことだろう。「魂動デザイン」と呼ばれるテーマを長きにわたって磨き続けてきた。加えてデザイン本部長に日本人の前田育男氏が就任して以降、デザインの領域が存在感を強めた。さらに最近ではテーマカラーを”ソウルレッド”に統一することで、デザインのみならず、プロモーション面でも勢いを感じさせるようになった。そして実際に送り出されたプロダクトを見ても、CX−5以降でデザインは一新されると同時に強い統一感があり、一目見ただけで「マツダ」とわかる表現がなされた。

そうして2015年に登場したのが、ロードスターだった。

様々に磨いてきたスカイアクティブ技術がひと段落し、さらにデザインもマツダのラインナップの総てが現世代へと揃った。そう、その意味ではロードスターの登場というのは、マツダが長きに渡って手掛けてきたこの世代の技術やデザインの集大成的なプロダクトでもあるわけだ。事実、スカイアクティブ技術では新コンセプトのエンジンがLAショーで登場しているし、デザイン的にも次の新型車では新たなフェーズへの移行を見せてくるだろう。そうした背景から見ても、ロードスターは今のマツダを象徴し、体現するプロダクト、といえるわけだ。

先代ロードスターも日本カーオブザイヤーを受賞している

そしてロードスターというプロダクト自体も、相当に強い。実はロードスターは先代モデルが登場した2005年にも、日本カーオブザイヤーを受賞している。それまでは、スポーツカーで日本カーオブザイヤーを取るのは難しい、と言われていたが、先代ロードスターはそうした常識を覆しての受賞だった。

また同時に、既に3代目の時点でも「世界で最も売れた2シータースポーツカー」であり、世界中から新型が待ち焦がれられるような存在でもある。そうしたモデルの新型だけに、今回のモデルも昨年から大きな注目を集めていたほどだった。そして実際に登場すると、やはり大きな話題とともにメディアを席巻したのだった。

実際に、新型に乗ってみると、まさにロードスターらしい妥協のないプロダクトだとすぐにわかる。軽量であることを第一義とするこのクルマは、他車がどんどん大きく重くなる中にあって、先代よりも全長を短くし、車重も1000kg代を実現した。これは並大抵のクルマ作りでは実現できない、ある意味不可能な領域。もっともロードスターはそうした不可能を、可能にしてきた歴史を持っており、3代目でも徹底した独自のルールを厳格に守り抜いて作り上げられたのだった。新型はそれを継承しつつ、さらに攻め込んで現代のスポーツカーとしては圧倒的な軽さを実現した1台となったのだった。

こんな具合で最近のマツダは強く、ロードスターも強い。それが今回の日本カーオブザイヤー受賞の理由であることは間違いない。

マツダの強さ、ロードスターの強さの裏にあるものとは

しかし同時に強く感じるのは、プロダクトそのものを見ても、それを手掛けているエンジニアたちを見ても、さらにその上で指揮をとるボードメンバーを見ても、マツダの人々全員が明確に同じ方向を向いてクルマ作りを行っていることだろう。マツダは生産台数規模でいえば年間約140万台規模の大きくない自動車メーカーであり、ラインナップ数も多くはない。だが、それゆえに自分たちの得意な分野を活かしたモデルを得意な分野に投入して勝負している。そして最近はそれが巧みなプロモーションによって、見事に可視化されている。

いわば、作り手の顔が見え、作り手の温もりが伝わる。そんなプロダクトであり、自動車メーカーに見えるわけだ。

つまりマツダは、クルマ作りに対する情熱、そしてクルマ作りに対する真摯な思い。これを見事にプロダクトに反映し、ブランドとしての魅力へと昇華している。

日本カーオブザイヤーの選考委員を務める筆者は今回、ホンダS660に10点、マツダ・ロードスターに7点を投じたわけだが、今回日本カーオブザイヤーを受賞したマツダというメーカーと、ロードスターというプロダクトをそんな風に見て評価している。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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