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ドライバーが感じる、スバルの強み。【スバルが挑む、9度目のニュル24時間レースVol.3】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

今回スバルのニュル24時間レースへの挑戦において、唯一の日本人ドライバーとなるのが山内英輝選手。山内選手は昨年のニュル24時間レースにおいてチームに初加入し、昨年のクラス優勝に大きく貢献した。そして今年も引き続きドライバーとしてチームの2連覇への期待を寄せられている。また同時に山内選手は、スバルのモータースポーツにおけるもうひとつの取り組みであるスーパーGTにおいて、スバルBRZ GT300のドライバーを昨年から務めている。その意味ではスバルのモータースポーツを牽引するドライバーでもある。

既にこのレポートを書いている時点で、山内選手は3スティントをこなし、現在4スティント目を順調に走行している最中だ。そんな山内選手にレース前、ニュル24時間レースにおける「スバルの強み」を伺ってみた。彼が今回走らせている「WRXSTI」についてだ。

「何と言ってもスバル独自のAWD(4輪駆動)が強みになります。24時間レースはご存知のように長丁場になるので、一定の路面コンディションであり続けるということがありません。時には雨降ったり、晴れたり、またすぐ土砂降りになったりと、刻々と天候が変わりますし特にここニュルは天候が不安定です。そうした中で安定したパフォーマンスを発揮することができるのはAWDのおかげです。また、雨の中でもしっかりとタイムを出すことができるので、耐久では有利ですし我々の強みになっています。もちろんドライバー的には晴れの方が良いですが、ち天候が荒れるほどに強みがでるため、チームにとっては戦略的にも有利になります。その意味でAWDはすごく期待できるのです」

という。スバルは4輪の全てに駆動を伝えるAWDを、商品としての大きな特徴としている。それがモータースポーツにおいて、実際に強みになっている点を見逃すことはできない。またスバルでは同時に、今ではポルシェとスバルでしか市販車に用いていない水平対向エンジンを搭載することによって、通常のクルマよりも低重心を実現しており、これが走りにおいては優れたハンドリングを実現する要素となっている。そして水平対向エンジンを搭載していることもまた、レースにおいてはドライバーに安心を届ける要素にもなる。ハンドリングが優れているからこそ、長丁場を戦う時の強みになるわけだ。

そんな風にしてみていくと、スバルがニュル24時間レースに挑戦し続ける意味や価値が見えてくる。世の中的に見ても非常に個性的な成り立ちそのものを、レースの世界でファンにアピールすることができる。そしてドライバー自身も、その強みを実際に感じている。

ユーザーにとっては自分たちが購入したクルマが持つ固有の機能が、コンペティションの世界で実際に効果を発揮して「強み」となることを目の当たりにする機会になり、それは自分のクルマやブランドへの信頼へと変わる要素だろう。同時にそれは普段の生活の中でも効果を発揮する。AWDによって悪天候や荒れた路面などでも安定して走れることが、ドライバーへの安心を生む。最近のクルマはどれも同じ…と言われるが、他とは明らかに異なるメカニズムが具体的な結果を残す姿や、生活の中で生きて行く様は、まさにスバルを「ブランド」とするための大切な要素といえるだろう。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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