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なぜ初心者は運転がヘタなのか? なぜ正しいドラポジが大切なのか? 【動画あり】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

なぜ初心者は運転がヘタなのか? なぜ正しいドライビングポジションが大切なのか? 

昨年末に北海道で開催されたマツダの試乗会で、それを実際に体験するための実験が行なわれた。

この実験はそもそも、マツダのクルマがいかに適切なドライビング・ポジションを重視して設計されているかを体感するためのもの。だが、それを体験する中で、あえて適切ではないドライビング・ポジションを取った場合、いかに運転しづらいかを体感したわけだが、これが思った以上に運転に影響を与えているため、あえて紹介したいと思う。

なぜなら、これまで筆者もドライビング・レッスン等でドライビング・ポジションの重要性を説いてきているが、それはイコールで安全のためという視点だった。しかし今回のドライビング・ポジションは、運転のしやすさという視点なのが興味深い。そして運転のしやすさはイコールで安全につながるといえるわけで、これはなかなかに秀逸なお手本になると思えたのだ。

例えば運転するときに、シートバックを寝かせて運転する。するとこれまでの安全の視点からいえば、腕が伸びきってしまうのでハンドルを切る操作が自在には行えないことから危険だと説いてきた。これはもちろんその通りなのだが、今回の動画を見てもらえばわかるように、合わせて姿勢がずれることで膝や足首の角度が代わり、きめ細やかな運転がしづらくなることが分かった。だから腕が届かずに危険なだけでなく、自ら運転操作をし難い姿勢を取っていることがわかる。そしてさらにそうした姿勢では、クルマの動きを感じづらくなり、やはり操作に影響を及ぼすというわけだ。

そして今回の実験の中でハイライトといえるのが、初心者にありがちなハンドルにしがみつく姿勢をとった時の場合だ。一般的なドライビング・レッスンでは、シートバックを立ててなるべく余裕を持ってハンドルを握ることを推奨しているが、逆にハンドルに近すぎると滑らかなハンドル操作はしづらくなることがわかる。さらに、背もたれに適切に背中が付いていない場合、自らが疲れを誘発する姿勢を取っていることも分かる。さらにこうした状態では、足の操作等も正確性を欠くものとなるため、結果的に上手に運転する環境を作れていない、ということが分かるのだ。

ちなみに今回の体験では、この他にアクセルペダルを通常よりも軽いものに変更したクルマを運転したり、北海道で冬場でメジャーな長靴を履いて運転するなど、様々な状況や環境下での運転をおこなってみた。そうして分かるのは、クルマの側の操作系の操作感や操作量などがいかに重要であるか? いかに操作系の重さや感触などがコーディネイトされているか? が運転の上手下手や疲労の有無等へ関わることが分かった。また同時に運転しにくい靴等を履いていても、クルマの側の操作系がそうしたことを想定して作られているか否かで、運転のしやすさは大幅に変わってくるということも分かった。

マツダは最近のモデルで、強く適切なドライビング・ポジションを設計していることを謳っているが、その理由はなるほどこうした部分に現れてくる、というわけだ。

もっとも勘の良い方ならもうお気づきだと思うが、こうした取り組みは最近になって行なわれたわけで、以前はそうした部分は見ていないものでもあったわけだ。また同時に、ドライビング・ポジションの設計等に関しても、ハンドルとシートが正対しておらず、わずかにオフセットしていたりすることは珍しくなく、そうした部分にまだ手がついていないクルマやメーカーがあるともいえる。さらに操作系の重さや量などのコーディネイトに関しても、いまだバラバラ…という例もある。

そう考えると、クルマはまだまだもっと運転者に優しい環境を作り上げることができる、ともいえるし、進化の余地も大幅に残されているといえるだろう。またここから発展して考えれば、自動運転以前にもっと安全なクルマに近づくこともできるといえる。昨今のアクセルとブレーキの踏み間違い等も含めて、改めてドライビング・ポジションというものを考えてみたいところだ。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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