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「人のいないところを見てサッカーする」44歳のヴェルディ司令塔・永井秀樹が描くビジョンとは?

河治良幸スポーツジャーナリスト

キング・カズの最年長ゴールが大きな注目を集めるJリーグだが、J2にはもうひとりのレジェンドがいる。東京ヴェルディでプレーする永井秀樹だ。

5月24日(日)にJ2の大分トリニータ×東京ヴェルディを取材した。ここまで大分は4引き分け、ヴェルディは3引き分けということもあり、膠着した状態で終盤までもつれ込むことは予想されたが、後半38分に途中出場した1人のベテラン選手によってその流れが変わった。

ヴェルディの黄金時代を支え、再び戻ってきた44歳のプレーメーカーは「かしこくプレーする」動きで中盤にリズムを呼び込み、“ヴェルディらしい”決勝ゴールを演出してみせた。

右サイドで南を追い越した高木がマイナスに出したパス気味のマイナスクロスから「人がいないところ」に進出した永井が通した絶妙なスルーパスを平本が手前に落とし、左から上がってきた安在が鮮やかなミドルで決めるという、黄金期を彷彿とさせる見事なゴールだった。

倍以上も歳の離れた選手たちとの見事な競演。この大分戦に限らず、永井が入ると攻撃のリズムが変わるというのは今季のヴェルディの特徴になっている。そのエッセンスはどこにあるのか。試合後、酸いも甘いも噛み分けたベテランに話を聞いた。

−−決勝ゴールに絡む素晴らしい働きでしたが、出場した時の意識は?

永井時間もそんなに無かったですし、1点ほしい状況だったので何とかチャンスを作りたかったと思っていたんですが、うまくつながったので良かったかなと思います。もうちょっとかしこくサッカーすればチャンスは必ず来ると思って見ていたので、自分が入ったらそうしようと思っていましたけど。

−−永井選手が入って、かなり流れも変わりましたが?

永井自分はそれを託されて入ったので、そこは自分の仕事だと思ってやっています。

−−周りの選手もうまく呼応した?

永井そうですね、若い連中の特徴もほとんど分かっていますし、平本とか杉本とか前の良さも十分に分かっているので、そのへんはチャンスは作りやすいですね。

−−ヴェルディに足りてなかったかしこさとは?

永井自分が思うかしこさというのは相手がいないところを攻めるということで、すごくシンプルなことだと思いますし、相手の人数が多いところに急いで攻めてもやっぱり引っかかるし、相手のいないところをかしこく攻めることかなと思います。ラインが下がったら、そこに入らずに引いてもらうとか。そういうところですかね。

−−システムがボックス型の4−4−2に変わりましたが、そこで右サイドバックの高木選手など選手たちのポジショニングは?

永井そのへんは普段の練習から若い子たちに言っているので、そこはだいぶ分かってきてくれているのかなと思います。

−−得点のシーンは高木選手から永井選手にクロスと言うよりはマイナスのパスが出て、そこから平本選手に付けて落としを安在選手という流れだったが?

永井大輔(高木)も「永井さんしか見てなかった」と試合の後に言っていたので、あそこを一か八かで放り込んでもたぶん点にはならないし、そういうところは少しかしこくサッカーできるようになってきたかなと思います。

−−人がいないところに動くというのは言うのは簡単でも実際にピッチでやるのは難しいと思うが、どうすればあのタイミングであそこに行けるのか?

永井味方を見るのは当然なんですけど、相手を良く見てサッカーするというか、相手と相談しながら攻撃するというのが大事だと思います。自分たちの思いだけで動いても、やっぱり相手ありきなので。相手の陣形だったり、相手の配置とか、相手のいないところを攻めることが大事だと思います。

−−ヴェルディはパスをつなぎながら連動して攻めるという伝統があり、一時期はソリッドなサッカーに移行していましたが、ここに来て再び流動的なスタイルに戻ってきている?

永井やっぱりそれがヴェルディの良さだと思いますし、育成年代から積み上げて来ていると思うので、それがいきなりチームで全く違うサッカーをやっても意味ないので、育成から積み上げてきている延長がトップチームで、より完成度の高いサッカーを追求して行くのがヴェルディにとっていいことだと思います。

−−そういう意味でヴェルディらしさは良かった頃にもどりつつある?

永井まあ、いつをもって良かった時期と言うのか分からないですけど、Jリーグ開幕の頃から比べればそれはまだまだだと思います。でも、そこを目指してやっていけば若い選手は無限の可能性があると思いますし、いい選手はいると思うので、高いところを目標にやっていけば必ずいいチームになるんじゃないかと思います。

−−永井選手が出るとことごとく効果的なプレーでリズムを変えられるが、その中でシーズンで90分をイメージして入ることは?

永井自分としてはもちろん、サッカー選手である限りはスタメンで出て最後までというのを目標にやってますんで、そこは監督さんが決めることですけど、自分はいつもいい準備をしっかりするだけですね。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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