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武藤嘉紀、山口蛍、内田篤人。日本代表の“リハビリ組”が現在と未来を語る。

河治良幸スポーツジャーナリスト
内田「リハビリが長い繰り返しの中で日本代表に呼んでくれるのはすごく有難い」(写真:アフロスポーツ)

6月3日と7日に行われるキリンカップに向けた代表合宿を前に、欧州組を中心とした事前合宿が5月24日から29日まで千葉県内のグラウンドで行われた。

その中に、負傷から回復途上にある武藤嘉紀(マインツ)、山口蛍(ハノーファー)、内田篤人(シャルケ)が入っていたことで、世間的に疑問や批判の声も少なからずあがったが、個別のペースでメニューをこなした3人には明るい表情も見られるなど、有意義な6日間を過ごした様に見える。

3人は最終日の練習後にメディアの取材に応じ、それぞれの現在と未来について語っている。なるべく本人たちの心境が正確に伝わる様に、ここでは記者陣との一問一答をまとめた。

【武藤嘉紀】「子供もできて、また頑張んなきゃいけない」

ーー今の状況は?

そうですね。まあ順調にリハビリしていて、来シーズンのドイツの頭からできるように仕上げていきたいと思います。

ーーメンタル的にはどうですか?

もちろん同じところの負傷を繰り返してしまった時には非常に気持ちは下がりましたけど、もうやってしまった以上、さらに強くなってピッチに戻るしかないと思ったので、今は前向きに取り組んでいます。

ーープロ生活の中で厳しい状況だが、自分をどう支えている?

そうですね。プロになってからこういうケガは初めてですけど、家族もいましたし、そういった面で自分が元気にプレーする姿ってのを見せないといけない。支えもしっかりあるので、それを力にしてやっていきたいと思います。

ーー大学時代もケガに苦しんだが、その時とは違う?

大学時代は手術をして、今回は手術をしてないんですけど、大学時代の時の方が背負ってるものが少ないですし、そんなに落ち込むことはなかったですけど、今回は少なからず精神的にも厳しい部分はあって。でもサッカー選手である以上、これをどうやって力に変えていくかというのが選手としての真価が問われるところなんで、この逆境を跳ね返して、さらに選手として成長できるようにやっていきたいです。

ーー怪我をする前のドイツでの成績は素晴らしいものがあったが?

前半戦は周りから見たらいい数字、結果を残せたのかもしれないですけど、ホントまだまだでした。(中断期間を挟んで)自分の調子も上がってきて、後半戦に行こうとした思った時にケガをしてしまったので、そこは非常に残念だったですし、来年は1年間通してプレーして、ゴールやアシストという結果を残せるようにできればいいと思います。

ーー日本はいいですか?

もちろんいいですよ。でもやっぱり自分が戦う地はドイツで。代表の時は日本ですけど、やっぱり結果を残してこそ代表に呼ばれると思うので、まずはしっかりドイツで結果を残せるようにしたいと思います。

ーーケガした状況は?

前半の時に痛めてしまって、後半出来るかなと思って30分やったんですけど、痛みがあったので、途中で出してくれと言いましたね。

ーーその後はまた練習でやったんですか?

そうですね。少し早めに復帰してしまったのかなと後々思えば、そう思いますけど、もっとじっくり焦らず、焦ってやってた面もあったので、完璧な状態に治してから復帰しないといけないと思います。

ーーフォームに変化が見られるが、走り方の指導を受けた?

そうですね。さらによくなる、改善するところもあると言われたので、さらにスピードも上がるということなので、そういった面での練習を意識してますね。背中だったり、足の着き方だったり、そういうところですね。

ーー手術をするかしないかの判断は迷った? 

多少なりともはありましたね。ドイツと日本での意見も多少違うところはありましたし、手術をするとその後、馴染んでくるかというのは大学の時に分かっていて、できれば保存の方がいいなと。結果的に手術しなくてよかったなと思います。順調に来てますね。だいぶ。けどここで焦ってあげ過ぎないでまた同じことを繰り返さないように、抑えつつ、やっていきたいなと思います。

ーー後半戦に向けて新しいことをチームでしようとしている様に見えた時の怪我だったが? 

前半戦は(ジョン・)コルドバの調子があんまり良くなくて、僕が1トップをやってた時は全部を自分がやる、裏に動くときもそうだし、ポストプレーも守備も全部やる。全てを任されていたんですが、そこにコルドバが入ってくるとキープもしてくれますし、自分が周りを動けばまたさらにそれが生きると思うんで、2トップでやれたら得点だったり、アシストっていうのもさらに増えるんじゃないかと思っていました。

ーー今回ハリル監督も2トップを加味した構成にしているが? 

そうですね、自分がチームでやってて、どうなるか分からないですけど、いい結果が出ていれば、それを監督が見て自分の起用を考えると思うので、まずはしっかりチームに戻って結果を出して、代表に呼ばれるような結果を出さないといけないと思います。

ーーメンタル面では家族が増えたことが大きい? 

子供もできて、また頑張んなきゃいけないと思いますし、笑顔ももらえるので。また子供の前でいいプレーができるように、奥さんの前でまたいいプレーができるように、まずはしっかりプレーしてるところを見せてあげて、安心させないといけないと思います。

ーー浅野拓磨選手が入ってきて、武藤選手はもともとウイングやっててCFになったが、裏に狙うスペシャリストの選手と競争するのは? 

浅野選手はホントに素晴らしいスピードを持ってますし、裏への抜け出しは素晴らしいので、やっぱり見習っていかないといけないところもあると思うので。自分はどのポジションをやるか分からないですけど、もしポジション争うことになったら、やっぱ負けたくはない。とにかくまずは代表に呼ばれること、ドイツでしっかり結果を出すことに専念して、その先に代表でプレーする権利をいただいてから、結果を残していかないといけないと思います。

【山口蛍】「怪我なくシーズンを通して戦える体でいたい」

ーーケガの具合は?

いや、もう大丈夫です。

ーープレーに関しては支障なくなっている?

まあ、そうですね。

ーーあとはメンタル的なところ?

それはその場面になってみないと分からないですけど・・・。

ーーフルメニューを一週間こなしていたけど?

コンディションはすごく良くなりましたし、その先が無いっていうのは少し残念ですけど。まあ、でもすごくいいコンディションになったと思っています。

ーードイツに移籍してのプレーを振り返って?

半年でいいことも悪いこともすごく色々あった半年だったので、それはすごく自分にとって良かったかなと思っています。

ーー最も成長できた部分とは?

うーん、まあ、それは分からないですね。自分では。

ーー移籍話も出ていますが、その辺は?

それも何もまだ分からないです。

ーー来シーズンに向けて意気込みは?

やっぱり怪我なく過ごしたいなというのはありますし、今回は不運なかたちでしたけど、やっぱり怪我を負ってしまったので。怪我なくシーズンを通して戦える体でいたいなって思います。

ーードイツでのシーズンは難しいこともあったとのことだが、ヨーロッパでやって感じた課題は?

課題というか、そこはどの試合でも自分を出すっていうのがもうちょいできれば良かったなと思います。チーム状況だったりとかもあって、自分のやりたいことよりかは先にチームが求めていることだったりとか、そういうものを優先してやってしまった印象があるので。それはもちろん大事ですけど、もっと自分のやりたいプレーをやればよかったかなと思いますけどね。

ーーハリルホジッチ監督がヨーロッパに残ってプレーしたほうがいいと言っていたが?

いや、まあ僕から話せることはないんですけど。自分でしっかり色々考えて、決断したいなと思います。

【内田篤人】「ここで俺が治らないって言ったら終わっちゃうから」

ーーひざの具合は?

ちょっとずつ良くなっていますけど、W杯である程度負担がかかるのを覚悟してやりましたし。ちょっと長引いていますけど、本当にむずかしい怪我だったのでしょうがないかなって思っています。

ーー久しぶりに日本代表の活動に参加したが?

リハビリが長い繰り返しの中で環境を変えて、しかも日本代表のトレーニングに呼んでくれるっていうのはすごく有難いですし、一人でリハビリをやるよりも外でみんながサッカーをやっている中で、同じグラウンドでやらせてもらえるっていうのはすごく有難いですね。

ーー合宿の中で結構笑顔が見られたが、やっぱり和む?

うーん、リハビリを暗い顔してやったらもう死んじゃうので。少しでも明るくやんないとって感じです(笑)。

ーー昨シーズン、復帰できるかできないかでできなかった。その時のメンタル状況は?

どうですかね。まあ、何カ月か単位で伸びていくケガなので。無理だったら無理でしょうがないかなっていう思いもありましたし。早く復帰するにこしたことはないんですけど、サッカー人生かかっちゃっているケガなんで、しっかりやりたいです。

ーーその時、支えになったものは?

何ですかね。日本帰って来てリハビリやりましたけど、そういう時期に出会う友達だったりっていうのがいたので。何だろう、タイミング良く出会う友達っていうのがいて。誰とは言わないですけど。今その仲間にすごく助けられていて。

――ご家族(奥さん)も増えたけど、それも支えになった?

ああ、今は多分実家にいて元気にしていると思います(笑)。

ーー難しいとは思いますが、いつ頃の復帰を?

もちろん、シーズン頭を目指していますけど、みなさんに見てもらった通り、まだ走れていないので。まずはちゃんと歩けるようになって、走れるようになって、痛みなしで筋力も戻って来ないと、また繰り返しのケガになるんで。そこは上手くやります。というか、ちゃんとやんないとって感じです。

ーーこの合宿中は監督とも話したと思うが、差し支えない範囲で。

監督からは「本当にむずかしい怪我をしたので、しっかり治して」だけでした。

ーーケガしている時も代表の試合は見ていると思う。今の代表のサッカーをどう見ている?

試合が出ていない選手がゴタゴタ言わないほうがいいと思うので。次また2試合あるので、今シーズンはみんな。海外組の選手はそれでオフなんで、ぜひ勝って終わってほしいと思います。

ーーサッカー人生をかけてという話があった。27歳の1年間、試合に出られなかったという意味でメンタル的には?

サッカー選手自体、何て言うんですか。年齢っていうんですか。やれる年齢が少ない中で、1年、2年を無駄にするっていうのは普通の社会の人で考えたらもう10年くらい何もしていないっていうくらいなので。もっとかな。これを取り返すのは結構大変ですけど、やんなきゃけないんで。治る治らないはありますけど、ここで俺が治らないって言ったら終わっちゃうから。しっかり復活したいと思っています。

ーー今は1からバランスから修正している感じ? 

そうですね、まあずっと試合をやってきたのが蓄積されて姿勢とかね、試合の負荷とかっていうのもあってここに全部来たので。W杯の負荷もありましたし、チャンピオンズリーグもありましたし、自分の中では休むつもりもなかったですし、こうなるっていうのはある程度、自分の中で覚悟してやってきたんで、ヘンな話、あの時休んでおけばって気持ちは全くないし、なんだろう…そんな感じです。

ーー全部ひざに来た? 

そうですね、僕の場合はひざでしたけど。もうこういう怪我でなんだろう、苦労してるスポーツ選手ってすごく多くて、バレーの選手もだし、お相撲さんとかで断裂しちゃう人もいるし。その中で特化するっていうのはなかなかいなくて、普通ここまで行く選手もいないし、僕が怪我していろんな先生とか、ドクターとか、トレーナーとかがね、日本全国の人が診せろって言って、いろんな人の話も聞きましたけど、そういう中でいろいろ見えてくるものがあるっていうか、そんな感じですね、今は。

ーー2月にシャルケで結構やっていて、もうちょっとで実戦出れそうみたいな状況だったが、そこから状態がすごく悪化した? 

僕、今、ひざ手術したところが痛いんじゃないんで。その周りなんで。だから、たぶん復活できると思います。はい。そんなに厳しくは捉えてないです、僕自身は。

ーー2月に帰ってきて3カ月くらい経つが、その間、いろんな人の話を聞いたり、JISSでトレーニングしたりしていた? 

勝手に向こうから寄ってくるんで(苦笑)。僕からは頼んでないですけど。あとは香取先生と前田さんに今日は見てもらったんですけど、それで十分だと思ってますから、別に他の先生に診てもらうつもりはないけど、勝手に寄ってくるから。はい。

ーー混乱しちゃうね? 

そうそう。だからちょっとボッタくりじゃないかって(笑)。そんな気もしましたけど、内田を診たって言いたいんでしょうね。そういう人はいましたけど。でもそういう中でもいろいろ聞いてくと、ホントに結構難しい怪我なんだなっていう。あとは時間がかかるけど、時間をかければちゃんと治るっていう。そう思わなきゃもうやってけないですからね。

ーー日常生活の痛みはない? 

まあ、まだしっかり足を踏み込んだりっていうのが。あとは筋力をつけるのも、刺激が入ってないとまあ難しいかなと。

ーークラブとの連絡は? 

しています。オフで代表のキャンプに行くってのはちょっと異例なんで、怪我しててね、だから協会を中心に、僕自身も1回ドイツに帰って話もしましたし、向こうもしっかり治して、やれる身体を作るのが一番大切なことだと言ってくれてるので。そんな感じです。

ーーシャルケは内田君の意志をすごく尊重してくれている? 

その監督とGMはもういなくなっちゃいましたけど。だからまあ、変な話、今は何でもできちゃうからね、こっちで。

ーー予定としては何月くらいまで日本で調整? 

僕は今、JISSじゃないですけど、治るまでって話です。でも(プレシーズンの)キャンプとかあるので。中国行くのかな。あとはいつも毎年ならオーストリア。別にそれに間に合わなくてもぶっちゃけいいかなと。自分のペースでやってかないと、また半年とかかかるんで。

ーーシーズンは来季は8月の25日頃からスタート? 

遅いんですよ、ユーロがあってね。だからヘンな話、ちょっとチャンスがあるかなと。

ーーシャルケの戦いぶりはどんなふうに見てた? 

最後ヨーロッパリーグを取ってくれたので、また試合数が増えるなっていう。

ーーでも復帰を目指す人としては試合が多い方がチャンス? 

そうですけど、やっぱり試合数が多いとね。その連続でここまで来ましたから。

ーーこういうリハビリ期間中に仲間に会えたのは大きい? 

それもありますし、こういう違った環境で呼んでくれるっていうのは俺も武藤も蛍もすごい有難いですし、日本に帰ってきてこういうつらいタイミングで出会える仲間っていうのが新しく増えたので、僕的には助かってるんです。そいつらのおかげで。

ーー改めてみんなと話して元気が出たところは? 

まあ、特にないです。

ーー(吉田)麻也君とか? 

あいつらは別に(笑)。ここの連中はもうね。やってくんないと思いますから、普通の友達が、関係ない友達がすごい助けてくれる。

ーー上半身は結構ガッチリしている? 

でも、あんまり付けすぎたらってのはあるんですけど。

ーー足の筋肉はつけちゃだめ? 

そうですね。まあ。ここでだって俺が「ムリだ」って言ったらムリになっちゃうので。サッカー選手の1年半とか2年っていうのはすごい長いからね。だから、絶対もう1回、帰ってくるっていうのは思いながら。他の人とは違うからね、怪我が。でもいいの。そうやってW杯もチャンピオンズリーグもある程度、負担がかかるなって分かってて、自分がやったんで、悔いはないです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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