アデミウソンのスーパーゴールに象徴される日本サッカーの”デュエル”の課題
ガンバ大阪と浦和レッズによるルヴァン杯の決勝はPK戦の末に浦和が優勝。120分、さらにPK戦にいたるまで、緊張感あるカップ戦の決勝に相応しい試合だったが、アデミウソンによる60mドリブルからの先制ゴールは、日本代表のハリルホジッチ監督が言うところの”デュエル”に関する日本人選手の課題を露呈したシーンでもあった。
G大阪の先制ゴールが生まれたのは前半17分。浦和のDF槙野智章がガンバ陣内まで持ち上がったところで遠藤保仁が行く手を阻んでタックルを実行し、ボールコントロールを失ったところで今野泰幸が側面からスライディングでボールをカットした。そのボールが遠藤保のもとに来ると、前線から素早く引いてきたアデミウソンに右足アウトで縦パス。
その動きに遠藤航が付いてきたが、アデミウソンはトップスピードから急に止まり、パスコースに体を入れる形で遠藤航のバランスを崩し、勢い余った遠藤は強引にボールを触ろうとするも転倒。そこから反転しながらのファーストタッチで加速するアデミウソンに、攻守を切り替えた槙野が左側から追いすがるも、ショルダーチャージに行ったところで体を前に出され、的を外した矢の様に反対側へ通り過ぎてしまった。
もう1人のDFである森脇良太はアデミウソンがボールを持った時点ではその5、6mほど手前にステイしていたが、アデミウソンのスピードを見誤ったのか、それとも相棒の槙野がそれほどあっさり振り切られると予想していなかったのか、スプリントに移行するタイミングが遅れ、結局アデミウソンに追い付けないままGK西川周作が1対1で破られるシーンを後方から見送るしかなかった。
G大阪がこの試合で狙っていたと見られる、良い守備から精度の高いカウンターがはまった形であり、アデミウソンを称賛するべきだが、守る側から見れば、Jリーグでは”規格外”とも言える選手に対する”デュエル”の課題が表れたシーンでもあった。この試合の中でアデミウソンには何度か危険なシーンを作られているが、全体としては粘り強く対応していたことは確かだ。
ただし、このシーンの様に1つ1つの局面において”デュエル”が問われるシーンで問題が出やすい。”デュエル”と言っても単純にコンタクトプレーの強さで勝負が決まるわけではない。アデミウソンは176cmの身長で、特に体格に優れているわけではないが、遠藤航に対してはボールの出所に体を入れながらスピードを急に落とすことでバランスを崩させた。
槙野に対しては側面からショルダータックルに来きたところを左腕でしっかりガードし、スピードを加速させていなした。本来なら槙野としてはボールを運ぶアデミウソンに対して、もう1歩体を前にして当たれれば良かったが、攻守の切り替わりで後手の対応になったところで、そこまで余裕が持てなかったのかもしれない。
もう1つ、判断で一瞬の遅れをとってしまった森脇も純粋な”デュエル”ではないが、アデミウソンに上回られた1人だ。ある意味で、3人のDFが一連のプレーで敗れてしまったわけだ。アデミウソンはブラジルでアンダー世代の代表にも選ばれていたほどのハイレベルな選手だが、ACLの上位チームとなれば、そうしたクラスを確実に揃えている。
Jリーグは筆者の目から見て、技術的にも戦術的にもレベルは決して低くないし、組織的に洗練されている部分もあるが、こうしたハイレベルな”デュエル”の機会にはあまり恵まれていない。コンタクトプレーの強さはレフェリングの基準などで全体的に多少なり高めることはできても、日本サッカーから見て”規格外”の選手との”デュエル”に耐性を付けるには、そうした選手がJリーグに増えることも1つ求められるファクターだ。
Jリーグは来季に向けて外国人の登録枠を「5」に拡大するという(ただしベンチ入りは従来通り3人+1人)。ACLでの上位躍進や国内組が代表で活躍する土壌を作るために、こうしたシーンを検証して今後のプレーに生かしていくことも大事だが、同時にリーグを活性化する意味でも、個のタレント力に優れた外国人選手がJリーグに増えることも期待したいところだ。