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日米で独走優勝を果たしたカープとカブスの意外な“共通点”

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
オリジナルTシャツを使いチームをまとめ上げたカブスのマドン監督(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

佳境を迎え注目が集まるカープとカブス

MLB、NPBともにポストジーズンに突入し、野球ファンのボルテージはいよいよ最高潮を迎えようとしている。

なかでも日米両国で圧倒的な強さを誇ったカープとカブスの動向に注目を寄せている人々も多いことだろう。偶然にもこの2チームはカープが1984年以来の日本シリーズ制覇、カブスに至っては1908年以来のワールドシリーズ制覇と、現存チームの中で最も頂点から遠ざかっている存在で、独走態勢でリーグ優勝、地区優勝を飾った両チームのファンならずともその期待は膨らむばかりだ。

独走優勝した両チームの強さの秘密とは?

そんな2チームの今シーズンの成功の秘密を解き明かそうとする上で、ある“共通点”が浮かび上がってくる。それはチームTシャツの存在だ。実は両チームともにチームTシャツを通して、見事にチームを一つにまとめ上げることに成功しているのだ。

MLBではシーズン中に選手がオリジナルTシャツを作成してチームメイトに配布するのは珍しいことではないが、だが今シーズンのカブスはそれをさらに進化させている。すべては人心掌握術に定評のあるマドン監督のアイディアによるものだ。

マドン監督の語録がプリントされたTシャツ

マドン監督は自身のチャリティ基金の一貫としてTシャツメーカーと協力して、監督のシンボルと知られる眼鏡と彼の語録などをあしらったオリジナルTシャツを作成。一般販売するだけでなく、監督、コーチにも配布しキャンプ中はお揃いの練習着として使用したりもした。

さらに監督の語録はユニークに富んでおり、“Try Not To Suck(入れ込みすぎるな)”“Embrace The Target(目標をしっかり確認しよう)”“The Process Is Fearless(目標を達成する過程に恐れはない)”“大胆不敵”などなど、そのまま選手に向けたメッセージにもなっており、それを皆で着用することでチームに素晴らしい一体感をもたらした。ベテラン左腕のレスター投手も「選手皆が毎日球場に来るのが楽しくて仕方なかった。こんな経験は初めてだ」と言わしめたほどだ。

個人記録をお祝いしたカープのチームTシャツ

また広島の場合もうまくチームTシャツを利用している。新井選手の2000本安打や黒田投手の日米通算200勝、または廣瀬選手、倉選手の引退セレモニーに合わせてオリジナルTシャツを作成し、選手全員で着用し皆で盛り上がっていた。さすがにMLBでも各選手の個人記録のためにチームTシャツを作成するのはかなり珍しいことだ。

またカープのTシャツも“まさかあのアライさんが…”や“あの黒田さんがまさか…1ニング10失点”と選手たちが盛り上がれるメッセージを使用しているのも、まさにカブスに類似している。そしてカープの場合も新井選手が今シーズンの強さの理由として「チームの和」を真っ先に挙げている通りだ。

ポストシーズンでもチームの和が最大の武器に

こんな現象を通して垣間見られるのは、両チームの中にシーズンを通して選手全員が心の底から盛り上がれる素晴らしい環境が整っているということだ。ポストシーズンもチーム一丸となって戦い続けるはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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