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大谷選手がMLBでも二刀流ができると確信する理由

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今季の大谷選手の投打に渡る活躍がMLBの常識を覆そうとしている(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

米国でも大谷投手が注目の的に

ここ最近になって、米国においても大谷投手の二刀流がにわかに注目を集めている。

すでに日本でも報じられているように、ニューヨーク・ポスト紙、MLB公式サイトで立て続けに特集記事が組まれるなど、MLB球界内では着実に関心が高まっている。

変化し始めた二刀流への考え方

これらの記事は、先日まで行われていたGMミーティングの取材に回っていた記者が現地で関係者の証言を元に作成されたものだが、ただ単に関心が強まっているということ以上に注目すべきことは、MLB関係者の大谷選手に対する考え方に変化が出てきているという点だ。それは過去には絶対にあり得なかった、二刀流を容認する考え方だ。

2つの記事によると、あるスカウトは現在の大谷選手が投打においてMLBでも一流になれる才能を備えていると評価を下していると証言し、またあるGMは二刀流で使ってみたいと公言しているのだ。

MLBの予想を超えた打者としての覚醒

大谷投手が直接のMLB入りを止め、日本ハムと契約した2013年のスプリングトレーニングの最中、個人的に何人かのGM、育成担当責任者らと大谷選手について意見交換したのだが、その時は誰1人として二刀流に賛成するものはいなかった。育成面を考えれば二刀流は不可能だと考えており、自分もその意見に納得させられたものだった。

しかし今シーズンの大谷投手の打撃面での覚醒は、そんな考え方を覆すのに十分だった。それは打者に専念している侍ジャパンの強化試合で、日本を代表する打者の中でも突出した活躍をみせていることからも明らかだろう。

大谷選手だから可能な先発6人制

それではMLBでも二刀流を受け入れる環境が整い始める中、本当にMLBで二刀流は可能なのだろうか?いや、むしろ大谷選手だからこそ二刀流が可能なのだと確信している。

それは先発投手6人制の導入だ。ローテーションを6人で回せば、シーズンを通して各投手が中5日、もしくは6日で投げることになる。つまりは現在の日本ハムに近い環境で投げることができ、もちろん打者としての出場も可能になるわけだ。

先発6人制はこれまでもヤンキースなどが不定期に採用しているケースはあったが、出場枠25人のMLBではシーズンを通して採用するのは難しく、やはり5人制が理想的だと考えられてきた。

大谷選手が2人いる?

しかし大谷選手ならそんな問題も解消できるのだ。まさに発想の転換だ。大谷選手が投手と野手の2人いると考えればいい。つまり25人枠に26人入っているということになるのだ。その余剰人員を先発枠に加え6人制を採用し、登板日以外の投手としての調整が少ない時に、野手として先発出場もしくは代打待機すればいいわけだ。これなら野手の枠を1人減らしても大きな影響は出てこない。

MLBの環境の変化も追い風に

現在は大谷投手が二刀流をするのならDHのないナ・リーグがいいという意見が大半だが、実はこの6人制を採用すれば、現在の日本ハムと同じように、守備の負担が軽減できるDH採用のア・リーグの方が理想的だともいえるのだ。ただ現在のMLBは両リーグ15チーム制をとりシーズンを通して交流戦が行われているので、大谷選手が二刀流をするのにどちらのリーグに行こうとも何の問題もない状況だ。

さらに108年ぶりに世界一に輝いたカブスが、複数ポジションを守れるユーティリティ選手を多数揃え、野手もローテーションを組みながらシーズンを戦い成功したように、選手起用の潮流も大きく変わろうとしており、さらに大谷選手の二刀流起用に追い風になっていると言える。

大谷選手がMLBの常識を覆す

近い将来MLBの舞台で大谷選手が二刀流で活躍する日が来たならば、選手起用や育成などこれまで長年踏襲されてきたMLBの常識を完全に覆すことになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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