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村田透投手が7年ぶりの日本球界復帰を決めた背景

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
日本ハム入団が決まり、7年ぶりに日本球界復帰が決まった村田投手

日本ハムが11月18日、この6年間インディアンス傘下のマイナーリーグに所属していた村田透投手の獲得を発表した。

村田投手といえば、昨年はマイナー最上位の3Aで最多勝のタイトルを獲得するともに、メジャー初昇格も果たしていた。メジャー定着まであと一歩の位置にいながら、なぜ7年ぶりの日本球界復帰を決断したのか。現在米国に滞在中の村田投手とコンタクトを取り、日本復帰の背景を聞いてみた。

まずはなぜ6年間も挑戦を続けてきた米国を離れることになったのだろうか。

「ここ数年日本のチームから(契約打診の)話をもらってはいました。その中で今年は不甲斐ないというか、いいシーズンを過ごすことができなかった。このままインディアンスに残ってもチャンスが少ないかなというのもあり、日本に戻る決断をしました」

実は今年の村田投手は、インディアンスで不遇の扱いを受けていた。昨年最多勝投手に輝きながら、キャンプ開始時に首脳陣から先発候補が余っている状態で、3Aでの先発枠入りの保証ができないとの説明を受けていた。

結局シーズン開幕はリリーフに回り、シーズン途中で先発陣に加わったものの、あくまで基本はメジャーに昇格した先発投手の補充的扱いで、村田投手自身が肝心のメジャー昇格を狙える状況ではなかった。しかもチームは19年ぶりにリーグ優勝を果たし、若手中心の先発陣は来年もほぼ安泰。本人が説明するように、村田投手の付け入る隙はほぼ無さそうだった。

最大の目標だったメジャー定着を果たせぬままでの日本球界への復帰は、本人も多少の未練が残っていることだろう。しかし村田投手が米国で過ごした6年間の日々が賞賛に値するものだった。

通訳もつかない過酷な環境で1Aからのスタートを命じられた。それでも不満を漏らすことなく自分の投球を見つめ直し、徐々にステップアップしていきメジャー昇格を狙える3Aに定着し、安定した成績を残してきた。

「内容の濃い、充実した6年間でした。(巨人時代の)3年間がなければ、ここまで来られなかったと思う。その3年間を基礎にして、そこからプラスアルファして応用しながら自分のスタイルに変えることができました。

(成長という面では)マイナスになっている部分はまったく無く、プラスしかないです。自信がなければ戻らないですし、無理だと思うならアメリカに残っている。やれると判断したからです」

もちろん自信を感じる一方で、7年ぶりの日本球界復帰で再び新たな環境に順応していかなければならない不安もある。だが逆境から這い上がってきた自負はそれ以上だ。

「まだ統一球を使ったことはないですし、また環境が変わります。不安はありますけど、アメリカに来てそんなことを気にしてはダメだと教えられました。(ウィンターリーグで)パナマやベネズエラにも行って、いい環境でできなかったことはたくさんある。敏感になるべきではないし、気にしないようにしたいと思います」

ちなみに今回日本ハムを選んだのは、このオフに最初に声をかけてくれたチームだったからだという。10年ぶりの日本一に輝き、若手中心の戦力はしっかり揃っており、1軍が保証されている状況ではない。

「アメリカのスタイルに似ていて、もの凄くやりやすいチームだと聞いています。優勝しているチームですし(活躍できるか)難しいのは間違いないですが、チャンスはあると言ってもらえました。自分の仕事をしてチームに貢献するだけです。(キャンプでは)僕はアピールする立場なので、若手と同じように始めからバンバンいかないとダメだと思っています」

31歳右腕の新たな挑戦に期待したい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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